セルフケアを「本人任せ」から「職場で育てる力」へ ーストレスチェック義務化拡大を「活かす」へ②―

近藤ひろえ

近藤ひろえ

テーマ:メンタルヘルス



今週は、
セルフケアを“自己責任”で
終わらせない視点を
取り上げてみたいと思います。

メンタルヘルス対策というと、
「一人ひとりが、
もっと自分でストレスを
管理すべきだ」

そんなふうに
語られることがあります。

もちろん、自分の状態に気づき、
早めに整える力は大切です。

けれども、セルフケアは
「本人任せにすること」とは
少し違います。



心の健康づくりの考え方では、
セルフケアは、
職場全体で支える大切な柱の一つです。

本人が学び、気づき、
必要なときに助けを求められるようにする


そのための機会や環境を
組織が整えていくことも、
大事なメンタルヘルス対策です。

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では、セルフケアでは、
具体的に何が求められるのでしょうか。

まず大切なのは、
自分のストレスサインに
気づくことです。

眠れない。
疲れが抜けない。
集中しにくい。
人とのやりとりがつらく感じる。

こうした小さな変化は、
心や体からの
大切なサインかもしれません。

次に、何が負担になっているのかを
把握することも必要です。

仕事量なのか。
人間関係なのか。
役割のあいまいさなのか。
将来への不安なのか。

要因が見えてくると、
対処の選択肢も
少しずつ見えやすくなります。

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そして、気づいたあとには
対処行動が必要です。

休息を取る。
誰かに相談する。
仕事の進め方を見直す。
抱えていることを言葉にする。

どれも特別なことではありません。

ただ、忙しい職場では、
この「早めに対処する」

後回しになりがちです。

「まだ大丈夫」
「自分だけがつらいわけではない」
「迷惑をかけたくない」

そう思っているうちに、
疲れが慢性化してしまうこともあります。

だからこそ、必要に応じて
専門職や相談窓口につながることも、
セルフケアの一部として
考えておきたいところです。

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職場全体では何に気をつければ
よいでしょうか?

従業員に
「自分で気をつけてください」
と伝えるだけでは、

セルフケアはなかなか
根づきにくいものです。

職場でできることの一つは、
学ぶ機会をつくることです。

メンタルヘルスの基礎研修、
レジリエンス研修、
睡眠や運動に関するセミナー。

こうした場があることで、
「自分の状態を見てもいい」
という空気が生まれます。

社内ポータルやメルマガで、
短く読みやすい情報を
定期的に届けることも有効です。

大事なのは、
困ったときだけではなく、
日常の中で触れられる形にする

ことです。

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面談や1on1の中でも、
セルフケアを支える関わりはできます。

たとえば、
「最近、仕事量はどうですか」
「疲れがたまっていませんか」
「一人で抱えていることはありますか」

こうした問いかけがあるだけで、
本人が自分の状態を振り返る
きっかけになります。

ただし、注意したいのは、
無理に聞き出そうとしないことです。

セルフケアを支える関わりは、
管理することではなく、
気づきや相談の入口を
つくること

だと思います。

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また、セルフケアの課題は、
年代や役割によっても違います。

若手社員の場合は、
自分の限界がまだ分からなかったり、
誰に相談してよいか迷ったりします。

「こんなことで相談していいのか」
と考えてしまう人もいるかもしれません。

そのため若手には、
早めに相談することは
弱さではなく、仕事を続けるための
大切な行動だと伝えたいところです。

一方、中堅社員は、
責任感から抱え込みやすくなります。

周囲から頼られ、
自分も応えようとする中で、
疲労が少しずつ積み重なることがあります。

中堅には、
「抱え込むことが責任感」ではなく、
「必要な調整をすることも責任」
というメッセージが必要かもしれません。

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ここで大切になるのが、
「しなやかに受け止め、立て直す力」
(レジリエンス)という視点です。

レジリエンスというと、
「ストレスに折れない強い心」
と受け止められることがあります。

けれども本来は、
つらい状況から回復し、
しなやかに適応していく力

として
考える方が自然です。

つまり、我慢し続ける力ではありません。

自分の状態に気づき、
必要なときに立ち止まり、
周囲の力も借りながら回復する力。

その意味で、レジリエンスは
セルフケアととても相性のよい
テーマだと感じます。
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セルフケアは、
「自分のことは自分で何とかする」
という話ではありません。

自分の状態に気づく力を育て、
早めに整える行動を支え、
必要なときに助けを求められる
環境をつくること。

それが、職場における
セルフケアの本質ではないでしょうか。
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今のあなたの組織では、
従業員が自分の心のコンディションに気づき、
早めにリカバリーする力を高めるための
仕組みや学びの機会は、
どれだけ用意されているでしょうか。

もし、セルフケアを支える
一つの仕掛けを
今すぐ導入するとしたら、
何から始めますか。

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次回は、
管理職に求められる
「ラインによるケア」について
考えていきます。

セルフケアとラインケアは、
どちらか一方ではなく、
つながって初めて力を発揮します。

「本人に任せすぎていないか」

この問いを持つことが、
職場のメンタルヘルス対策を
一歩進めるきっかけになるように思います。

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近藤ひろえ
専門家

近藤ひろえ(人材教育・メンタルヘルス講師)

人材育成研修「リベル」

わかりやすく納得感が高まる体験型の研修で職場の課題解決をサポート。現場ですぐに生かせる具体的な方法を伝え、新入社員から管理職まで、すべての人が働きやすく生産性の高い職場づくりを提案。

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