
正しいことを言っているのに、
なぜか受け取れない。
そんな経験はありませんか。
部下にフィードバックをしたとき、
あるいは、自分が指摘を受けたとき。
内容はもっともで、
間違っているわけではない。
それなのに、なぜか心が閉じてしまう。
その結果、
行動につながらない。
むしろ、やる気が下がってしまう。
人に関わる仕事をしていると、
こうした場面に出会うことが
少なくないように感じます。
私自身も、ある場面で
強くそれを感じたことがありました。
「言っていることは正しい」
そう頭では理解できる。
でも、
その言葉の届き方があまりにも鋭く、
心がついていかない。
そして、こんなふうに
自分を責めてしまうのです。
「受け取れない自分が弱いのではないか」
「これに耐えられなければ成長できないのではないか」
同じような感覚を、
持ったことがある方も
いらっしゃるかもしれません。
このとき、私は一つの違いに気づきました。
それは、
「言葉の役割の違い」です。
ひとつは、
人に“伝える”言葉
人に“伝える”言葉。
もうひとつは、
人と“関わる”言葉。
人に“伝える”言葉は、
正確さや論理性が求められます。
誤解がないこと。
誰が聞いても同じように理解できること。
研修のテキストやマニュアルなど、
品質が求められる場面では、
とても大切な視点です。
一方で、人と“関わる”言葉は、
少し違います。
相手がどう受け取るか。
安心して聞けるか。
次の一歩を踏み出せるか。
つまり、
相手の感情や状態を含めて届く言葉です。
ここで難しいのは、
どちらが正しいか、ではないということです。
どちらも大切です。
ただ、
人を育てる場面においては、
順番があるのかもしれません。
まずは、
関係性や安心感という土台があり、
その上に、正確な情報や指摘が乗る。
この順番が逆になると、
どんなに正しい内容でも、
相手の中に入っていかないことがあります。
現場でよくあるのは、
「正しさ」に意識が向きすぎてしまうことです。
・間違っていることは指摘しなければならない
・きちんと伝えることが大事
・曖昧にしてはいけない
どれも、とても大切な考え方です。
ただ、そのときに一度だけ、
立ち止まってみてもよいかもしれません。
「この言葉は、相手に届くだろうか」
たとえば、同じ内容でも
「ここ、違います」
と伝えるのか、
「ここを少し一緒に見直してみましょうか」
と伝えるのか。
伝えている中身は変わらなくても、
受け取る側の感じ方は大きく変わります。
そしてその違いが、
次の行動につながるかどうかを
左右することもあります。
人は、正しいから動くとは限りません。
納得したとき、
そして「やってみよう」と思えたときに、動き出します。
だからこそ、
私たちが日々使っている言葉も、
「正しいかどうか」だけでなく、
「関われているかどうか」
という視点で見直してみることに、
意味があるのかもしれません。
すべてをやわらかくする必要は
ないのだと思います。
ただ、ほんの少しだけ、
相手の受け取り方に目を向ける。
それだけで、
同じ言葉でも届き方が変わることがあります。
そしてその積み重ねが、
「この人と話すと前に進める」
そんな関係性をつくっていくのかもしれません。
明日、誰かに言葉をかけるとき。
ほんの少しだけ、
「伝える言葉」になっているか、
それとも「関わる言葉」になっているか。
そんな視点を、
思い出していただけたら嬉しいです。
正しいのに届かない言葉 ―「伝える」と「関わる」の違い―
テーマ:コミュニケーション
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近藤ひろえ(人材教育・メンタルヘルス講師)
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