ラジウム温泉とラドン温泉の違い
ラドン温泉は放射性物質なので被ばくが心配される一方で、がん治療に放射線が使われることからがんに対する放射線の有効性も考えられます。
発がん性との関連もいわれながら、使いようによってはがんの治療にも役立つ放射線について、その安全性やがん治療の現状をご紹介しながら、微量ながら放射線を発するラドン温泉にはどのような効能があるのかをご説明します。
放射線による発がん性とラドン温泉の安全性
さまざまな化学物質や紫外線などが、細胞内にあるDNAを傷つけることがあります。放射線もそのひとつで、被ばく量が100mSv以上で発がんリスクが、200mSv以上でがんによる死亡リスクが高まります。
本来細胞には、傷ついたDNAを修復する能力があるので、普通であれば傷ついたDNAは修復されてもと通りになります。修復しそこなったとしても、その細胞を排除する機能も体の中には備わっています。
ただし、ごくまれに、DNAの修復に失敗した細胞が変異細胞として体内に残ることがあります。これが「がんの芽」です。それでも、がんの芽は特別なものではなく、体内で生まれては消えるということを繰り返していきます。その中の、たまたま生き残ったものに遺伝子の突然変異が蓄積すると、がん細胞へと変化してしまいます。
がんの芽からがん細胞へと変化するには数年~数十年の長い時間がかかります。その間、放射線以外の要因、食事や生活習慣、化学物質、紫外線などの影響もあるので、被ばくが原因であると一概には言えませんが、発がんのリスクは被ばく量に比例するという調査結果があります。
それでは、「微量でも放射線を受けることは体に悪いのではないか」と思われるかもしれませんが、100mSv以下の被ばく量であれば、発がんとの因果関係を証明することは難しいとされています。
なお、ラドン温泉で受ける放射線量は毎日温浴しても1年間で400μSvほどの微量です。健康に悪い影響を与えるような線量には至りません。このような微量の放射線はむしろ、人体によい影響を与えるのではないか、という研究もなされています。
がん治療に有効な放射線について
放射線は人体の細胞のDNAを傷つけてがんをつくることもありますが、がん細胞を攻撃してがん治療に役立つこともあります。
放射線ががんの治療に役立つことは昔から知られており、治療は100年前から行われています。放射線治療は急速に進歩して、近年では、がん細胞に多くの放射線を浴びせながら、周囲の正常な細胞への被ばくは少なくして、できるだけ副作用のない方法がとられています。
治療用の放射線は、電子線、陽子線、重粒子線、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線などが用いられています。
正常な細胞にも多少の影響は与えますが、がん細胞ほどは受けないように、がんの部位や程度によって使われる放射線の種類や照射の量・方法が慎重に決められます。
医療で行うがん治療では、できるだけ他の正常細胞に影響を与えないようにがんになった部分に絞って、強い放射線を多めの線量で照射します。
一方で、微量な放射線を全身に浴びせることで細胞の機能を活性化させ、がん治療に役立てる方法もあります。それが、放射能泉やラドン温泉での温泉療法です。
ラドン温泉ががんに効くと言われる理由
微量の放射能を含む温泉、放射能泉には、昔からがんの治療のために通ったり、宿泊したりする湯治客がいます。
特に、放射性物質であるラドンが豊富に含まれている放射能泉には、その効果が高いといわれています。実際に、温泉地周辺で毎日のように温浴したり、温泉から発生した気体のラドンを吸っていた住民の血液を調べたところ、がん抑制遺伝子が多かったという例があります。
ラドンが豊富に含まれている温泉といえば、発生装置で浴室にラドンを送り込んでいるラドン温泉です。ラドンががんに効果的であるとすれば、放射性物質を含む温泉療法としては、ラドン温泉による療法がもっとも効果的といえます。
ラドンを呼吸で取り込むことによって体の中から温まり、約5~10分で発汗作用が起こるほど全身の体温が上がります。この温熱作用もがんに効果的だといわれていますが、やはり、ラドンが放射する放射線、α線が全身の細胞に刺激を与えていることが注目されます。
放射線による全身への刺激は、線量が多ければ健康に害を及ぼすものですが、ラドン温泉のように微量であれば放射線ホルミシス効果という、有益な効果をもたらしてくれます。がん細胞を除去する免疫系の働きを高めるなど、がん治療に有効であるほか、DNAの修復や変異細胞の除去などのがんの予防にも効果がみられます。
さらに、ラドンの強力なイオン化作用は、血液を浄化して血管を健康に保ったり、組織内の老廃物を除去するなど、体の老化の抑制や生活習慣病の防止などに効果を発揮します。
がんも生活習慣病の一種で、老化がその要因であると考えられることから、がんに対して効果的な作用がラドン温泉にはたくさんあることがわかります。