ラドン温泉の効果・効能

ラジウム温泉（放射能泉）も、ラドン温泉も、天然ラドン温泉も放射性元素が含まれた、何やら体に良さそうなイメージの温泉です。

ラジウム温泉（放射能泉）は天然温泉で、ラドン温泉は設備名ですが、天然ラドン温泉は天然温泉とのいいところを併せ持っています。
天然だから優れている、人工設備だから劣っているとは一概にいえません。ここでは、ラドン温泉の効果・効能についてご紹介します。

ラドン温泉とは

ラジウム温泉（放射能泉）は、ラジウム鉱石や地下の花崗岩から溶け出したラジウムやトロンを含む天然の温泉です。

その点、ラドン温泉は、人工的に発生させた安全なラドンをラドン吸入室に送り込んだサウナ室と同様な人工設備名です。
必ずしも天然の温泉でなくとも、水道水でもラドンを送り込めばラドン温泉で間違いはありません。

「天然の温泉でなければ価値はないのか」というと、それは違います。逆に、自然のものであるがゆえ、ラジウム温泉の中に含まれるラドンの量は一定することがありません。
療養目的で利用するのであれば、ラドン発生装置で常に適切な量を一定に浴槽に送り込むことができるラドン温泉の方が効果的です。

また、ラジウム鉱石から溶け出したラドンを含む温泉は、ラドン以外の放射性元素も含まれます。

ラドンは放射線の中のα線だけを出しますが、α線は紙でさえぎっても遮断されるくらい浸透性の低い放射線です。人体の細胞の奥深く入り込んでDNAを破壊するという他の放射線とは違って安全です。

ラドンは、浴槽に絶えず送り込むことで、浴槽の中に溶け込んで皮膚から吸収されたり、送り込むときに湧き上がった気泡から浴室内に漂う気体となって呼吸から吸収されたりします。

皮膚から10％、呼吸で肺から90％の割合で体内に入って血液とともに全身に運ばれて細胞の新陳代謝を高める効果があります。

ラドン温泉開発の歴史

ラドンが健康にいいと、いち早く気づいたのはロシアです。α線療法として1926年にモスクワ中央研究所を設立してラドンの実用化を推進しました。
1946年にはオーストリアで、坑道に発生したラドンを呼吸から吸収するトンネル療法が発見され、これが日本のラドン温泉に影響を与えました。

ロシアでラドン泉療法が確立した1960年、兵庫県淡路島の今津三郎医学博士が日本で最初のラドン発生装置システムを完成させ、患者の治療に使用しています。同年3月には今津博士と小泉元胤氏によって日本ラジウム医療研究所が設立されました。

1972年、ラドン温泉の普及を目的としたラドン開発事業団が発足し、日本で初めての大規模ラドン温泉センター「大船ラドン温泉」ができました。以後、ラドンセンターやラドン温泉が全国に30カ所以上つくられ、1977年にはラドン温泉の利用者が200万人を超えていました。

1978年に「ラドン温泉」の商標・特許登録がされ、1980年代はラドン温泉ブームが起こり、医療施設を始め、ホテル・旅館、ヘルスセンターから銭湯までラドン温泉が導入されました。最盛期の利用者は1,000万人を超えたといいます。

ラドン療法のメカニズムと効果・効能

一般的な温泉療法は、浴槽につかると温水によって水圧、浮力、温熱などが体に作用したり、副交感神経に作用したりしてリラックス効果があることを利用したものです。温泉の泉質によって、さまざまな病気への効果が期待できます。

このほか、温泉の熱で体温が上がって免疫力が上がったり、発汗作用で新陳代謝が促されたりすることは、一般の温泉でも体験できますが、ラドン温泉は、ラドン吸入室に送られたラドンが体内に吸収されることで体の中から温まることができます。

ラドン療法は、一般的な温泉療法での効果・効能に加えて、化学的作用が期待できます。ラドン温泉のラドンはもともと気体なので、浴槽の温水の中だけでなく、浴室内にも漂っています。
浴室内で呼吸するだけでラドンを体内に取り込むことができます。ラドン温泉は「吸う温泉」ともいえます。

ラドンは自然界に存在する物質の中で、最も強力なイオン化作用があります。皮膚や肺から吸収されたラドンは血液の中に入って、まず、その強力なイオン化作用で血中や体の組織内の老廃物を代謝する作用を促進します。

血液の流れを悪くしたり、血管を老化させたりする中性脂肪、コレステロール、過剰な糖分などの老廃物が減少した血液はサラサラと流れ、筋肉などにたまっていたコリや痛みの原因物質も減少し症状が改善されます。

また、ラドンによって体内に熱エネルギーが発生するので、温水につかるより早く体温が上昇してすぐに汗が出てきます。
そのほか、自律神経が調整されたり、血管が広がったり、アレルギー反応や炎症が抑えられたりといった反応が起こります。

よく、温泉の「効能」という言葉を見聞きしますが、ラドン温泉のように明らかにイオン化作用という化学的作用によって効果が得られることは、確かに「効能」と表現するにふさわしく、ラドン療法はより効果的な温泉療法といえます。