温泉の湯疲れ・湯あたり・のぼせの対処法
古くから湯治という言葉がある通り、温泉はいろいろな病気や疾患に効くと言われています。実際に、温泉に入ると気持ちの面はもちろん、肉体面でも多くのプラス効果を感じるでしょう。
けれど、いったいなぜ温泉に入ることで、さまざまな効果や効能を得ることができるのでしょうか。
温泉が私たちにもたらす効果・効能をわかりやすくご説明します。
温泉の物理効果と効能
温泉に入り温かいお湯につかると、血管が広がって血行が促進され、体内の不要物が排出されやすくなります。これを温泉の「温熱効果」と呼びます。例えば、温泉に入ると疲れが癒えるのは、疲労物質である乳酸が排出されるためです。また、二酸化炭素泉や硫黄泉は血管を拡張する作用が強く、体が芯からぽかぽかと温まります。
さらに、温泉につかることで全身に水圧がかかります。水圧によるマッサージ効果で内臓が刺激され内臓運動が起こります。これが温泉の「水圧効果」です。さらに水圧で足の静脈にたまった血液が流れやすくなります。
それだけでなく、温泉につかることで浮力が働くため、温泉につかっていないときよりも体が動かしやすくなります。これが温泉の「浮力効果」です。浮力によって体が軽くなることで筋肉が緩み、α波を発するようになります。
また、温泉のお湯にはさまざまな成分が溶け込んでいます。温泉につかることでその成分が皮膚を通して体内に吸収されます。温泉によっては温泉水を飲むことができるため、「飲んで温泉の成分を体内に取り入れ、体の内側から健康になる」といったことも期待できます。
温泉の効能は「どんな成分がどのくらいの割合で溶け込んでいるか」によって決まるため、一定ではありません。例えば殺菌効果のある酸性泉や硫黄泉はアトピー性皮膚炎への効果を期待できるなど、温泉の性質によって得られる効能が変わります。
温泉の心理効果
温泉につかかると、それだけでのびのびした気持ちになりリラックスできます。みなさんも「温泉につかって気持ちもリフレッシュできた」と感じた経験があるでしょう。
温泉に行くのは、多くの人にとって非日常の特別な時間です。普段の生活から離れ、違う環境で五感が刺激されると「転地効果」が働きで気持ちが元気になります。日常の生活圏から100㎞以上離れ、普段生活している環境とは違う環境に身を置くと転地効果が得られやすくなりますが、「絶対100㎞以上離れなくてはいけない」というわけではなく、距離はあくまで目安です。
それよりも環境のほうが大事で、「海に近い温泉地の温暖な気候の中で、潮風を含んだきれいな空気を吸いながら温泉につかる」と気持ちが穏やかになりますし、「森林に囲まれた温泉で鳥のさえずりを聞きながら温泉で体を休める」と深いリラックスが味わえるでしょう。
ただ、転地効果はずっと続かない点に注意が必要。環境が変わってから5~6日で活発になり、1カ月すぎると次第に効果が薄れます。
短い時間でも転地効果を得ることができますが、少し長めに滞在できると、より「転地効果による効能」を実感できるのではないでしょうか。
鉱泉に関わらず共通する効果と効能
温泉はお湯に含まれる成分とその量により10種類に分類されています。そして、その分類ごとにそれぞれ違った効能があります。
例えば、炭酸水のような二酸化炭素線は毛細血管を広げて心臓に負担をかけずに血流を促進させるため、体がしっかり温まり抹消循環障害に効果があると言われています。
そして、炭酸水素塩泉は皮脂を乳化して毛穴の汚れを落としやすくするため、肌がきれいになると言われています。
このように、適応症と呼ばれる鉱泉ごとに違う効能があるほか、鉱泉を問わずどの温泉でも得られる共通する効果もあります。
まず、温かいお湯につかることで毛細血管が広がり新陳代謝が高まるため、疲労回復の効果が得られます。また、温泉に入ると一酸化窒素が増えて血流が良くなり、高血圧を予防し、ひいては動脈硬化の予防にもつながると考えられています。
実際に、週1回以上温泉に入っている人は善玉コレステロールが高く悪玉コレステロールが低いという結果もわかっています。悪玉コレステロールは、動脈硬化を引き起こすリスクを高める物質。温泉に入るとコレステロール値が改善されていると考えられているのです。
さらに、温泉に入ると血圧やホルモンの値が高い人は低く、低い人は高くなるという、自然治癒力が働き、体を正常に近づける作用もあると考えられています。
また、日本人の多くが好む42℃以上のお湯につかると交感神経が優位なり、内臓の動きが活発になります。反対に37℃~40℃くらいのぬるめのお湯につかると副交感神経が優位になり、のんびりした気持ちでリラックスできます。
泉質を問わずにさまざまな効能・効果が得られるのが温泉。「最近疲れが取れない、たまっている」「ストレスが多く気持ちが晴れない」と思ったら、温泉に出かけてみてはいかがでしょうか。