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日常会話の中に現れるグレートマザーを見抜く ― 「みんな○○だから」「私とあなたの仲でしょう」への違和感 グレートマザーシリーズ⑤

一瀬英史

一瀬英史

テーマ:心理カウンセリング メンタルヘルス対策

グレートマザー(太母)とは、私たちの心を包み、守る力と、縛り、呑み込んでしまう力の両面をあわせ持った無意識のはたらきです。

私がこれまで心理臨床の現場で出会ってきた方々の中には、グレートマザーのはたらきによる生きづらさを抱えているケースが少なくありません。

ひきこもり  / 適応障害 / ハラスメント / いじめ / 暴力 / 共依存 / しがらみ ・・・

こうした問題の背景にグレートマザーのはたらきが潜んでいます。
そして時には、自己の本来の成長力が奪われ、生命にかかわる事態を引き起こすことさえある。

グレートマザーの問題は、いきなり現れるわけではありません。

日常生活の人間関係の中で、互いの無意識に潜むグレートマザーのはたらきが、目立つことなく、時に巧妙に、じわりじわりと影響を与え合いながら進行するものだと実感しています。


身内語・関係拘束語に潜むグレートマザーを見抜く

今回は、以下のようなタイプの人同士の会話を例に、日常会話の中に現れるグレートマザーを分析してみたいと思います。

Aさん : 積極的、リーダータイプ、陽キャ、肉食系、オラオラ系、イケイケ系などがイメージされるタイプの人

Bさん : 受け身的、ひかえめ、陰キャ、草食系、オタク系、インドア系などがイメージされるタイプの人

AさんとBさんの間柄は、同級生や同僚、先輩後輩、上司部下であり、日常的に接している人間関係です。

ある日、Bさんは、Aさんから「今度、みんなで打ち上げをするのでBさんも来てね」と言われました。Bさんは、面倒だし、そんなことに時間を費やすならゲームをしていた方がましだ、と正直行きたくはありません。

A  「みんなで集まるのだから、Bさんも来た方がいいよ」
B  「あー、ちょっと・・・」
A  「何か都合が悪い理由があるの? あったら遠慮なく言ってね」
B  「いやー・・・」
A  「みずくさいなあ、 私とあなたの仲でしょう」
B  「じゃあ、時間があったら行こうかな(前日に具合が悪いって言おう・・・)」
A  「そうだよ、きっと楽しいよ」

いかがですか?
仲間を大切にしているやさしい言葉かけのように感じますか?
それとも、なんとなく違和感を抱きますか?

もし、あなたが違和感を抱いたならば、その感性こそ、グレートマザーのはたらきを見抜くための大切な力です。

Aさんの無意識的で巧妙な負のグレートマザーのはたらきを分析してみましょう。

◆「みんな○○だから」という言葉は、「仲間に入れてあげよう」という善意がある場合だけでなく、自分の言う通りにしないと孤立するぞという脅しが潜んでいることもあります。

◆「みずくさい」、「私とあなたの仲でしょう」という親しげな言葉の背景には、自分の知らないことへの不安や、場合によっては、自分に知らせないことを許せないという非難の気持ちが潜んでいることも考えられます。

◆「きっと楽しいよ」という言葉によって、自分との関係を縛ろうとしている面も考えられます。本来、人が何を感じるかは自由です。

こうした言葉を、ここでは「身内語」、または「関係拘束語」と呼びましょう。
日常的に使われる身内語・関係拘束語によってBさんはAさんとの関係に呑み込まれていくわけです。

しかし、こうしたコミュニケーションは、家族や仲間同士、会社や地域コミュニティの中で日常的に行われていることではないでしょうか?


Aさんが守っているものは、Bさんではなく自分の不安感

人間関係において様々な場面で不安は生じるものですが、他者との違い、異質さは特に不安を生じさせるものです。

なぜ私たちは他者との違いに不安を感じるのでしょう?

臨床心理学では、その理由の一つとして、自分と他者との境界があいまいだから、と考えます。
自分と他者が違う存在であるという心が確立されておらず、自分との違いを尊重できず、違いは否定であると感じてしまうのかもしれません。

否定されれば誰だって不安になります。

さらに自分は他者との違いに不安を感じやすい、という自覚があれば健康的ですが、もし心が未成熟なままであれば、こうした不安を感じとることすらできません。
すると、グレートマザーの負の側面が強く働き「不安そのものを呑み込もう」としてしまうのでしょう。

身内語や関係拘束語は、未成熟な心に生じる不安を覆い隠すための、ポジティブに装われた言葉だとすれば、そこから湧きおこる違和感は、負のグレートマザーのはたらきへの処方箋となるでしょう。

違和感を大切にしてください。


不安を呑み込み、本当の気持ちが言えないBさんの心

さて、もちろんBさんもグレートマザーの影響を受けた未成熟な心の持ち主です。

「断れない」、「本音を言わない」、「前日に仮病を使う」といった行動は、関係が悪くなってしまわないようにするための工夫とも言えます。
しかし、本当の気持ちを言うと不安になっているという意味では、すでにグレートマザーの影響を受けている状態とも考えられるでしょう。

病気の原因を知れば病気の予防になるように、グレートマザーのはたらきを理解することは、本来の自分らしい心を成長させるためにとても有益です。
引き続き、書いていきたいと思います。

負のグレートマザーからの解放への取り組みは、心理カウンセリングの真骨頂です。ぜひご活用ください。


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過去のグレートマザーシリーズはこちらから

第1回 仲良し家族・空気を読む職場・みんなで頑張る学校に潜む心理的病理 ーグレートマザーとメンタル不調の関係 こちらから

第2回 仲良し家族なのに苦しいのはなぜ? 愛という名のもとに潜むグレートマザー こちらから

第3回 職場が息苦しい理由とは? 空気を読む文化とメンタル不調の心理構造 ― 組織に潜むグレートマザー心理 こちらから

第4回 やさしいのに苦しい」のはなぜ? 母性と父性、グレートマザー心理を考える こちらから

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一瀬英史
専門家

一瀬英史(心理カウンセラー)

Eustress株式会社

かけがえのない人生を豊かに生きる上でストレスは必ずしも悪ではありません。心理カウンセリングや各地でのストレスマネジメント支援の豊富な経験を生かし、個人や家族,会社や組織の心の健康をサポートいたします。

一瀬英史プロは山梨日日新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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