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職場が息苦しい理由とは? 空気を読む文化とメンタル不調の心理構造 組織に潜むグレートマザー心理③

一瀬英史

一瀬英史

テーマ:心理カウンセリング メンタルヘルス対策

「グレートマザー」とは、特定の母親を指す言葉ではありません。

性別を問わず、私たちの心に備わっている
「生命を守り、包み込み、育もうとする力」。
無意識の奥底にある、根源的な心のはたらきです。

この力は、私たち個人の内面だけでなく、会社や組織といった集団のあり方にも深く影響を与えています。
この力は、以下のような強烈な二面性(両価性)を持っています。

◇ 正の側面: 慈しみ、保護し、育てる力
◆ 負の側面: 呑み込み、離さず、成長を止める力

これまで、家族の問題を生じさせるグレートマザーについて書いてきました。
しかし、グレートマザーは家族だけでなく、会社や組織、学校など、集団の中で生じる問題にも影響しています。

正しさよりも空気を読むことが大切にされる集団

あなたの職場では、「正しいことを言うこと」と「場の空気を守ること」どちらが優先されているでしょうか?

会議での一コマです。

入社3年目の若い社員。
仕事にも慣れ、少しずつ自分の強みを発揮して、お客様に喜ばれるサービスを提供しようと頑張っている営業マンです。

会議の時、彼はベテラン社員が提案する従来の方針に対してどうしても納得ができず、「前から感じていたのですが、その方針は現場サイドからは無理があります」と発言しました。

その社員の意見は、論理的であり、周囲のだれも否定することができなかったため、方針は撤回されました。
彼は、「少しは会社に貢献できた」と自分が成長したような気持ちになりました。

会議終了後、彼は上司に呼ばれこう言われました。
「あの場でいうことじゃないだろう。君は少し協調性がないな。もう少し、空気を読みなさい。組織は和を大切にするもんだよ」と。

グレートマザー組織が守っているもの

若い社員は、本当に空気を読めず、場を乱すようなコミュニケーション能力の欠けた社員なのでしょうか?
入社が浅く、未だ会社の風土に馴染めず、社会人としてのお作法が身についていない社員なのでしょうか?
この後、彼は会社の風土に染まり、空気を読む社員になっていくのでしょうか?
それとも、風土に合わず離職していくのでしょうか?

気になるところですね。

結論がすでに決まっている「確認の場」のような会議は、決して珍しくありません。
また、そのこと自体が必ずしも負の側面ばかりとは限りません。
しかし、負のグレートマザーの課題を抱えている集団においては、組織に異物を生じさせないことが最優先されます。

場の空気を読み、慣習に従い、周囲に気づかい、上司に忖度するという偏ったコミュニケーション能力によって、組織を守ろうとするのです。
会議で異論を唱えることは、たとえ会社のためであっても、暗黙の禁忌となっていきます。

「根回し」が日常になるとき

負のグレートマザー組織で最優先されるのは、集団組織を守ること。
現状を乱す違和感は排除されます。

先の会議の例に戻りますが、若い社員はこうすべきなのです。

会議が開始される前に、彼は上司に「従来の方針のままでは不都合を生じる可能性があるのではないかと、僭越ながら感じているのですが上司はどのようにお感じになっているか」と丁寧に相談し、上司がベテラン社員に声をかけ、ベテラン社員のプライドが傷つかないように方針転換を進め、会議で質問や意見がないように準備してもらうべきなのです。

いわゆる「根回し」と呼ばれるものです。

もともと根回しとは、樹木を移植するに先立ち準備する一連の作業のことです。
成長した樹木を移植する場合、根を傷つけて枯らしてしまったり、生育不良に陥る場合が多いので、移植する前から太い根を切断するなど事前準備をし、根の周りの土が離れないようにわら縄で包み込んで移植し、活発な新しい根の生育を促すものです。
移植の時に根回しは不可欠な作業ですが、日々の刈り込みや、枝を剪定するようなときに根回しは必要ありません。

これと同じように、会社や組織で根回しが必要なのは、集団に危機が生じるような場面であり、全く異なった別の組織同士で連携したり、協働するような場面においてです。
日々、顔を合わせているメンバーとの定例の会議において根回しが必要な組織には、間違いなく負のグレートマザーのテーマが潜んでいます。

なぜ、その職場は息苦しくなるのか

あなたの職場は、日常的に根回しが必要な人間関係になっていませんか?
場の空気を読むことが優先される職場で息苦しさを感じていませんか?
言ってはいけない雰囲気が強かったり、正しいことを言うと浮くような感じがあったりしませんか?

負のグレートマザー組織ではメンタル不調を生じやすくなります。
さらに、グレートマザーが力を蓄え、権威をもつようになった集団には、守りの力が暴力性に転嫁することさえあります

(権威ある組織に潜む暴力性と「自由からの逃走」 〜広陵高校野

他にも

□ 会議で意見を言う前に「誰にどう見られるか」を考えてしまう
□ 正論よりも「波風を立てないこと」が優先される
□ 上司の機嫌によって意思決定が変わる
□ 問題があっても「なかったこと」にされる
□ 挑戦するよりも前例を守ることが評価される
□ 異動や退職でしか環境を変えられない
□ 「言っても無駄」という諦めが蔓延している
□ 声の大きい人が組織を動かしている
□ 社員は家族だ、という経営者の言葉で縛られている
□ 「みんな仲良く」が強要され、本音がいえない
□ 「みんなの総意が必要」という理由でなかなか決断されない

これらは、グレートマザー組織の特徴として考えられるものです。
その違和感は、個人の問題ではなく、組織の構造に由来している可能性があります。

メンタルヘルス対策と心理カウンセリングで気づけること

会社組織で見落とされがちなグレートマザーのテーマ。
しかし、守られた中にいると自分がグレートマザーに呑み込まれていることすらわからなくなってしまうものです。

組織の中にあるこのような力は、内部にいるだけでは気づきにくいものです。
外部の視点を取り入れることで、はじめてその構造が見えてくることも少なくありません。

私たちは、心理カウンセリングや、総合的なメンタルヘルス対策でこうした課題についても支援しています。
「なんとなく息苦しい職場」の背景を整理したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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一瀬英史
専門家

一瀬英史(心理カウンセラー)

Eustress株式会社

かけがえのない人生を豊かに生きる上でストレスは必ずしも悪ではありません。心理カウンセリングや各地でのストレスマネジメント支援の豊富な経験を生かし、個人や家族,会社や組織の心の健康をサポートいたします。

一瀬英史プロは山梨日日新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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