全国アフタースクール担当者会 ハラスメント防止研修
5月には母の日、6月には父の日があります。
母の日や父の日の季節になると、「母親らしさ」「父親らしさ」について考える方も多いのではないでしょうか。
今回は、この季節に合わせて「母性」と「父性」をテーマにしたコラムをお届けします。
母性と父性を理解することがグレートマザーからの解放につながる
みなさんは、「母性」や「父性」という言葉を使うことがあるでしょうか。
心理カウンセリングでは、「母性が強すぎる」「この家族には父性が弱い」といった表現を耳にすることがあります。
また、こうした性質は家族だけでなく、組織にも見ることができます。
たとえば、「母性的な上司」「父性機能の弱い会社」などと言われることがあります。
これまで3回に渡り、『グレートマザー』をテーマに以下のコラムを書いてきました。
仲良し家族・空気を読む職場
みんなで頑張る学校に潜む心理的病理 ― グレートマザーとメンタル不調の関係①
仲良し家族なのに苦しいのはなぜ?
愛という名のもとに潜むグレートマザー②
職場が息苦しい理由とは?
空気を読む文化とメンタル不調の心理構造 ― 組織に潜むグレートマザー心理③
グレートマザーの問題から解放されていくためには、母性と父性を理解することが重要になります。
今回は、その理解の入り口として、まず「女性性」と「男性性」という考え方から紹介していきたいと思います。
母性・父性は「男女の役割」の話ではない
まず、大切な前提があります。
心理学でいう「女性性」と「男性性」は、実際の性別とは一致しません。
女性の中にも男性性があり、男性の中にも女性性があります。
母性と父性についても同じです。
多くの方は、「母性は女性のもの」「父性は男性のもの」というイメージを持っているかもしれません。
しかし、実際には、女性が強い父性を発揮することもあれば、男性が深い母性を担うこともあります。
深層心理学では、一人の人間の中に、女性性と男性性、母性と父性の両方が存在していると考えます。
これはとても大切な視点です。
ここを混同してしまうと、家族や個人、さらには会社や学校におけるグレートマザーの問題を、適切に理解できなくなってしまうからです。
心理学でいう「女性性」と「男性性」とは何か?
あなたは、どのような人に「女らしさ」や「男らしさ」を感じるでしょうか。
あるいは、「女らしさ」「男らしさ」という言葉そのものに、違和感や嫌悪感を抱く方もいるかもしれません。
心理カウンセリングの中でも、「女性性」「男性性」という言葉を使うことがあります。
ただし、それは一般的にイメージされる性別役割とは少し異なります。
心理学において女性性とは、「つなぐ力」を持つ性質です。
人と人をつなぎ、包み込み、共に感じ合い、その関係を保とうとする力です。
一方、男性性とは、「切る力」を持つ性質です。
境界を引き、分け、離し、対象を客観的に見る力です。
私たちは、生まれるまで母親とつながった一体の状態にあります。
そこから“切れる”ことで、この世界の中に「わたし」という存在として生まれてきます。
そして、養育者とのつながりの中で育ちながら、少しずつ自分を客観視し、他者と適切な距離を取り、自立へ向かっていきます。
つまり、人が成長していく過程には、「つながる力」と「切る力」の両方が必要なのです。
母性は育てる力、父性は方向性をつくる力
母性とは、女性性の「つなぐ力」に、
・育てる
・与える
・満たす
・守る
・維持する
といった働きが加わったものです。
安心感を与え、安全基地となり、生命を支える働きとも言えるでしょう。
赤ちゃんに母乳を与える母親の姿を思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。
一方、父性とは、男性性の「切る力」に、
・方向性を示す
・秩序を与える
・境界を引く
・現実を見つめる
・禁止や許可を与える
といった働きが加わったものです。
たとえば、「それはしてはいけない」「ここまでにしよう」と制限を与えることも、父性の大切な働きです。
なぜ「優しいのに苦しい」が起きるのか? グレートマザーの問題
グレートマザーとは、私たちの無意識の深層に存在する、母性的な元型的働きのことです。
それは本来…
○ 包み込む
○ 守る
○ 育てる
という、生命を支える重要な力です。
しかし同時に…
●呑み込む
●離さない
●成長を止める
という側面も持っています。
たとえば…
・「みんな仲良く」
・「空気を読んで」
・「波風を立てないように」
という雰囲気が強すぎると、安心感が生まれる一方で、自分の本音を言えなくなることがあります。
これは、“つながり”を重視する母性が強く働く一方で、
・「違っていても良い」
・「境界を持って良い」
という父性が弱くなっている状態とも考えられます。
過干渉、共依存、ひきこもり、過剰適応、いじめ、パワハラなど、現代のさまざまな心理的問題の背景には、このグレートマザーの負の側面が関係していることがあります。
問題になるのは、母性そのものではありません。
母性が過剰に強まり、そこに父性が働かなくなった時、私たちはグレートマザーの負の側面に巻き込まれてしまうのです。
グレートマザーの問題から解放されるためには、母性と父性のバランスを見つめ直すことが、大切な道しるべになるのではないかと思います。
引き続き、このテーマについて書いていきたいと思います。
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