光と風を共有する二世帯住宅
大好き!と思って買った思い出もあるモノたち。断捨離といわれてもそうそう捨てられるものではありません。とはいえ、だんだん増えてくるモノの管理も置場も大変...
前回ご紹介した光と風を共有する家の子世帯のご夫婦は、そんな悩みをお持ちでした。
たくさんのモノと、スッキリとした住まい。二つの相反するご要望をどのように解決したのかをご紹介します。
スタジオのようなリビング
ほぼワンルームのようなリビング。天井高は3.3mと一般的なお宅より90cm高い大空間です。6年たっても変わらずすっきりと住まわれているご夫妻ですが、ご趣味はファッションとお買い物。特にご主人は、靴や洋服のレアアイテムをたくさんお持ちで、絶対に捨てられない性格です。 では、どうやってこのがらんとして密度の低いリビングを維持できるのでしょうか?
モノの密度にメリハリをつける
ソファの裏の白い壁。ギャラリーのように素敵に飾り付けられた大きな壁が印象的ですが、実は、この裏に寝室と200足入るシューズクローゼット、納戸と ウォークインクローゼットが二段に積まれている、機能的な壁です。 床面積で言えばリビングの2/3に近い広さの、高密度の収納空間が、このスタジオのようながら んとした空間を補完しています。
寝室は、ベッドの巾だけに圧縮した極小空間。マットレスの高さから90cmほど立ち上がった壁の上には間接照明が仕込まれ、その上は開放されているので、さほど圧迫感はありません。
ベッドの先はベッドから55cmほど上がって納戸空間。ここには季節モノやフォーマルなど、頻度の低い洋服類が収納されています。
スキマの書斎
とはいえ、楽しみや日常の動作に使うモノ達をしまい込んでしまうと、暮らしの効率が下がってしまいます。そこで考えたのがスキマの書斎です。
リビングからウォークインクローゼットに入る通路ですが、突き当たりの90cm×50cmの極小空間がご主人の書斎です。ご趣味の本や書類を縦に積み上げることで、パソコンなどの作業スペースを確保しながら、十分な収納量を確保しています。
下からは取り出しにくい、高い位置の段は、上部の納戸からアクセスできる、簡易的なブリッジのような床から出し入れできます。
また,写真右側の開口内に一畳強程度のスペースがあり、そこが奥様の書斎です。持ち帰り仕事やお化粧など、ともするとリビングや洗面などの共有スペースに散らかりがちな作業をまとめることで、忙しいときには出したままにできる、バッファー収納を作りました。
通り抜けできるクローゼット空間
リビングギャラリー壁裏の一階部分は、玄関から書斎まで通り抜けられるクローゼットです。
手前に見えるシューズクローゼット。ここは寝室の下にあたるため、天井高1.4mの、法的には面積に入らない床下収納ですが、高さや段数も靴に合わせて細かく設定できるようにしているので、最大限の200足の靴が収納可能です。
そしてクローゼットは、棚柱を使い、高さや段数を好きなように調整できるシステムとした上、汎用品のクローゼットケースと寸法を合わせて、無駄なスキマなくぎっしりきれいに整理できるようになっています。
流行によって服の丈が変わったり、引出を入れ替えたいときもすぐに対応できる、シンプルなシステムクローゼットです。
見せる収納
とはいえ、せっかく買った大好きなモノ達ですから、全部しまい込んでしまうのではもったいない。
この家ではショーケースを壁に造り付けまし た。ここに入る分は眺めて楽しむモノたち。 時々「展示替え」するのも楽しいですよね。
その他にも、階段を利用した飾り棚や、部屋干しもできる細長いランドリー、水回りの天井高を抑えて作ったロフト収納など、収納のアイデアがたくさん詰まった家です。
ここで重要なのは、密度感の緩急のつけかた。
今回ご紹介した事例のように、「モノが捨てられない」タイプの方でも、空間にまんべんなく物がある状態ではなく、密度感に緩急をつけることで、大好きなモノに囲まれながらも圧迫感のない住まいができました。 家づくりの最初から、じっくりと相談しながら暮らしをデザインすることで、必ず理想の暮らし が実現できます。
次回のコラムでは、収納について、もう少し技術的なお話をしたいと思います。
この家の詳細は津野建築設計室HPでもご紹介していますので、ご覧下さい。
光と風を共有する家/津野建築設計室
また、最後にご紹介した見せる収納の家具の詳細などもご覧頂けます。
ショーケースのような小物入れ