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大森孝成プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

破産 思い付くままに!

大森孝成

大森孝成

平成4年に転身した現在の私の本業は不動産業です。 しかし不動産と言いましても過剰な抵当権の付いた不動産の任意売却を債務者の立場で手掛けています。つまり債務者のご心情を内々に汲んだ立場で抵当権者らと抹消交渉をはかり買人を付けて売却する仲介業です。

一方、事業再生や倒産破産前のお手伝い(コンサル)も半ばボランティアに近い形で行っています。つまり再生では再生スキーム(事業譲渡・企業分割・M&A・・・等)の組立て、倒産破産では弁護士さんに移行する前にやっておくべきことなどのコンサルです。いずれの場合も希望があれば内容に応じ適任と思われる弁護士さん(再生では税理士さんも必要)をご紹介しています。

私は、父が製紙業で倒産した直後に私が再興させ9年間経営した会社(印刷紙器製造業)を25年前に倒産させ、その連帯保証のために私自身も「破産」を決断しました。(つまり二次破綻)

当時の仕事内容は凸版印刷や大日本印刷等の下請けの製箱業でした。身近な箱ではケンタッキーフライドチキンの箱、森永等の製菓会社の箱やディズニーランドのポップコーンの箱などの箱です。平らな板紙を加工しますと膨大な嵩(カサ)量に変わり、狭い工場内では常に物量との戦いでした。原材料である板紙を搬入するためには製品を搬出しなければならず早朝来る4㌧トラックに如何に多くの製品を搬出させるか微妙な舵取りをしたものです。

しかし経営状況は夜遅くまでの残業でやっと利益が上がる。得意先からは「生かさず殺さず」程度の加工賃しかもらえませんでした。そのため正に毎日毎日が資金繰りとの睨めっこで精神的に疲れる心境の連続でした。

給料日になれば集金した手形をその日に銀行で即割引き賄うという綱渡りを何年も続けました。正にその日暮しの自転車操業でした。「働けど働けど 我が暮し楽にならず じっと手を見る」、本当に自分の手をしみじみと見詰めたものです。年2度のボーナス月は経営者にとって苦痛の月(7月&12月)でした。更に借入金返済の為にまた借入をする。何の為に、誰の為に早朝から夜遅くまで働くのか? 自問自答の日々でした。

昭和60年グリコ森永事件で菓子や食品業界が痛手を被ったとき、得意先は仕事を自社工場に引上げ、その結果、下請けの受注は半減、更に追い討ちをかけられたのが前年に行った設備投資の割賦弁済でした。

私は倒産を覚悟し過去の一切を投げ打って即座に破産を決意しました。見方を変えるとこの事件のお陰で紙業界と区切りが付き、新たな道を歩めたと思っています。



◆破産は嫌なこと、絶対に破産者にはなりたくない、誰しもそのように考えるのは当り前のことです。しかし人生はままならないものです。

紆余曲折のある長い人生のなかで何が起こるかわからない。本人は懸命に努力しているつもりであっても自分だけではどうすることもできない局面にぶち当たることが多々あります。そして「破産という法的逃げ場」(他に民事再生法&同個人版もあるが)に駆け込むことは誰しもあり得ることなのです。

法人では、経済環境の急変、取引先破綻での貸倒、個人では景気急落で勤め先の倒産や減給、他人にために迂闊に押印した保証の後始末、良かれと思い投資した株価等の急落、ましてそのお金を借入金で運用していれば惨めなものです。今迄資産家と崇められた人が突然借金王に成り代わることもあり得るのです。正に「明日は分からない」という言葉をかみ締めています。言い方を変えれば誰も「明日は我が身!」かも知れません。

そのような視点に立てば、相手の痛みや苦しみが分かるはず、思いやりや労わりの気持ちも生まれるのではないでしょうか!

◆しかし世間は意外に冷たいものです。内実は苦しみや悩みを抱えている人でも、他人の失敗には厳しい目で見たがるものです。落伍者という烙印を押したがる世間の風潮には憤りを禁じ得ません。

破産者は立派な「ゼロスタートの再挑戦者(チャレンジャー)」です。破産者のなかには過度に卑屈になる方もおりますが、卑屈になることでは決してない。堂々と処し次の生活設計、次の仕事に前向きにチャレンジしてもらいたいです。

私は「破産は決して悪いことではない!」という持論を持っています。

自分ではどうすることもできない局面で、現状に「一旦区切りをつけ出直す」という決断こそ本当に勇気ある行動であり、悶々とした断腸な想いのなかでのすごい決断だと思っています。

◆破産しますと金融機関(銀行系・信販系・消費者金融系のセンター)のブラックリストに登録されます。つまり5年間、一切の融資(借入・リース・クレジットカード等)が受けられなくなります。言い方を変えれば「自分に貸したくとも貸せないのだ」と言うお墨付きをもらったようなものです。

本当は、破産者は全ての債務を明らかにし法的に免責された方ですので、隠れた債務のある方よりもずっとリスクの少ない貸し手でもある筈だと思いますが?

このブラックリスト登録を良しと見るか、困ったと見るかは人それぞれですが、私は「チャンス」だと思いました。ブラックリスト5年間のお陰で借入・リース・割賦・カード等々・・・借金に頼る経営や生活習慣から脱皮できたのです。

晴れて6年後、仮に借入を要する場面があったとしても「借入はご計画的に!」 

このフレーズは最初、某消費者金融会社がコマーシャルで流したミエミエ言葉ですが、真に計画的に全うな金融機関から融資を受けるならばよいかも知れません。但し相手が高利な金融機関ではまた来た道に戻ってしまいます。ご用心を!

私は、この教訓から今はリースも割賦も使わないことにしてます。リースと言えども借入金(しかも高利な債務)です。実質元利均等払いの返済金まがいのリース料が月々掛るだけですから安易な利用は禁物です。私は事務機器も車も、お金に余裕ができた時々の範囲内で現金購入するように心掛けています。現金ならば物によっては定価を半値近くまで叩いて購入することも可能なのです。

考え方は地味で消極的で少しツマラナイような気もしますが、借金ゼロ円の気楽さは本当にありがたいものです。これもブラックリスト5年間の習性のお陰です。

今日はここで打ち止めとします。

                                記:大森孝成 

HPアドレス 
http://www.taisei-kikaku.com/index.html

 

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専門家

大森孝成(宅地建物取引士)

合資会社大誠企画

自ら経営者として多額の不良債権を抱えながら、それを乗り越えてきた経験を生かし、債務者を救うために事業再生アドバイザー、任意売却のコンサルタントとして活躍。

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