10月1日より501人以上の会社で社会保険の適用拡大が行われました
老後資金2000万円足りない??の衝撃
巷では炎上しています。金融庁が案として出したものについて、当初は粛々とその内容について新聞でとりあげられていましたが、だんだんと記事の一部分が抜き取られ独り歩きし話の主旨とかけはなれ、「年金が悪者」になっていました。どうして年金は信用できないとすぐ言われてしまうのでしょうか。そして年金はやっぱり信用できない、だから年金に頼らないという考え方になるでしょうか。それはとても危険な考え方と思っています。
この記事が出たすぐ後に私は年金セミナーの講師として登壇する機会がありました。もちろんこの件について正しい解釈をしたつもりです。その内容の一部をご紹介します。
老後は公的年金抜きでは考えられないこと。
例えば顧客が一人でも多く年金制度に加入したところで、社労士が何か国から奨励金をもらえるとか、そういったものは当たり前ですがありません。でも、私は常々、公的年金のメリットはいつもお客様に対して声を大にしてお伝えしています。法律で強制適用となっているから最低限取り組むべきことでありますが、会社から従業員への最高の福利厚生と思っています。優秀な社員を長く定着させるための最高のツールでもあるのです。とくに今どきの若者はたくさん稼ぐより安定性を求める傾向にあります。
この記事を読んでいただければ、まずは公的年金ありきということに気付いていただけるでしょう。
公的年金のメリット1
日本の公的年金、老齢年金は終身年金
日本の公的年金、国民年金、厚生年金は、社会保険制度です。原則、保険料を納めた人がその保険の恩恵を受けられるのです。
支給事由は3つあり(老齢、障害、遺族)、とくに老齢年金は65歳以降終身もらえる年金です。「年を取った」という誰もが有り得る保険事故で、終身年金をもらえるのです。どんな優良な民間の保険会社でもこんな商品を扱えるところはありません。
公的年金のメリット2
スライドがある
さて、民間の保険商品と比べてみましょう。(保険会社の商品を批判しているわけではありませんので念のため)
たとえば、60歳から10年間、80万円もらえるという商品だったとします。
60歳から70歳になるまでの間、定額の80万円を毎年受け取れる、有期年金です。
では、仮に私がこの保険に加入していたとして、超インフレで物価が高騰し、現在の80万円の価値が私が60歳になったときに40万円程度になったとします。その場合、それを加味して受け取り年金額が増えるかというと、当たり前ですが増えません。80万円という額を保障しているからです。
一方、公的年金はスライドがあります。数年前、年金額が少し下がり騒がれたことがありました。これは冷静に考えれば、年金はスライドするからなのです。デフレで物価が下がれば、それに連動して年金が下がるという考えは、当たり前といえば当たり前です。逆に下げなければ、「もらいすぎ」ということになります。
つまり、世の中に大きな変動があったとしても、公的年金はそれについて行ける力があるということです。
公的年金のメリット3
何といっても国の保険。信頼度は抜群。
皆さんは義務教育の間に一度は日本国憲法を習っていると思います。とくにこの25条については必ず取り上げられるところです。
日本国憲法第25条
第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
この「社会保障」の中身、約9割を占めるのが社会保険です。そしてその社会保険の約半分が年金です。
それを踏まえたうえで第2項をもう一度読み返してみてください。
「国は、年金の向上と増進を頑張らなきゃいけない」と読めませんか?
そのとおりなのです。つまり、憲法が(国が)年金制度を保障しているのです。年金が先細り、年金制度崩壊なんていうことは、あってはならないことなのです。
・・・いかがでしたでしょうか。
冷静になってみると、たしか年金はそんな制度だったと思い出せたのではないでしょうか。
まだ公的年金のメリット、とても大きなメリットがあと2つあります。それも日本人が大好きな節税メリットです。これはまたの機会に書きます。
とりあえず、今、社労士は一年で一番忙しい時期(7月10日締め切りの労働保険年度更新、社会保険料算定基礎届)なので。。
社会保険労務士 森田涼子
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