企業のSNS運用と社員のメンタルヘルスについて

並木将央

並木将央

テーマ:成熟社会のメンタルヘルス

こんにちは。ライターのまりんです。早いもので、今月も残すところ2カ月半となりました。秋になると、日照時間が短くなることにより体内のセロトニン分泌が減少し、自律神経系の乱れ・秋うつ傾向の方が増える時期です。個人が食事・運動・睡眠といった生活リズムを整えること、業務量やストレスの「自己管理」はもちろんのこと、企業は社員のメンタルケア体制ができているかも大切になってきます。
昨今、保健師である私が相談を受けることが多い課題に「会社のSNS運用」に関するものがあります。人口が減少の一途を辿り、認知や集客の在り方も変化してきたこの成熟社会において、SNSを活用する企業は少なくありません。ついには、社員のメンタル不調や離職理由にSNS運用の話が出るほどです。会社の魅力を伝え、採用活動をするためにSNS運用をしたはずが、それを理由に現職社員が離職してしまっては本末転倒ではないでしょうか?
この記事では、SNS運用をするうえで企業や社員が抑えておいてほしい点を、メンタルヘルスの視点からご紹介します。

社員の悩み

相談をいただく中で、社員がSNS運用について悩む課題には、主に下記のようなものがあります。

①顔と実名を出すように言われる
②既存の個人アカウントを会社用アカウントとして使用するよう言われる
③心が休まらない



具体的に1つ1つご紹介しましょう。
①顔と実名を出すように言われる
社員の顔や実名を出して運用をする際は、もちろんメリットも多くあります。
例えば
・信頼、共感ができる
・社員の顔が見えることで親しみやすくなる
・「この人だから」と選ぶ理由になる

テキストや音声、動画など発信方法は媒体によりますが、やはりどのSNSでも「人」が見えることで得られるメリットは大きいです。通常であれば知り合えない企業同士や人同士が交流でき、新たな事業創出や採用に繋がる、という事例もあります。

では、社員はどのようなことに悩むことが多いのでしょうか。一例をご紹介します。
・炎上リスクの懸念
・プライバシーを守る点で、名前や会社は知られたくない

SNSについては、どの媒体を使用したとしても、顔や実名を出すことがリスクになることもあります。少し調べると個人の情報が漏れてしまうリスクや、炎上問題などもメディアで目・耳にすることが多い分、不安に感じる社員は多いです。

②既存の個人アカウントを会社用アカウントとして使用するよう言われる
会社でSNS運用を始める際、KPI(重要業績評価指標)は主に下記でしょう。
・アカウント閲覧数(投稿からのアカウントクリック数)
・フォロワー数
・いいね数
・コメント数
・投稿の保存数

目標の達成時期によっては、短期間でフォロワー数を増やす、反応率を高めることを求められるため、新規でアカウントを作成するより、既存の個人アカウントがある社員は、そのフォロワー数も評価に含む、という企業もあります。

では、個人アカウントを会社用アカウントとして使用した場合、社員はどのようなことに悩むのでしょうか?ここは、さまざまな課題があるように感じています。
・発信内容が急に変わり、これまで関わっていた人が離れていく
・勤務時間以外でも、常に会社の人に見られていて休まらない
・落ち込んでいても明るい発信をする、悩んでいても出せない、など会社のイメージに合わせて発信することが苦痛になる

また、人によっては都合により転職をする予定だが、自身のアカウントを会社用として運用したため、体裁上、転職時期を検討した、アカウント自体を手離すことにした、信頼を失った…などの話もあります。

③心が休まらない
個人のアカウントと異なり、会社用のアカウントを運用する際は「会社の名前を背負っている」という意識を常に持つことになります。その状況下で、勤務時間外や会社が休みの日でも運用をすることにより、SNS自体がストレスになる、常に仕事をしているようで休まらない、という状況に陥る方が多いです。
また、会社名を背負ってSNSをする場合は、発信内容を会社のイメージを守るためにするため、自身の精神面や環境とズレが生じている際に大きなストレスを感じるという相談を伺います。

運用前におさえるべき点

「会社用アカウントにしたくないなら断ればいい」と思う方もいるでしょう。確かに、自身の意見を言うことは自己管理の一環でもあり、社員一人一人が改善を要する点もあります。ただ、それを言えない社員・環境が多いからこそ、SNS運用に関する相談は増えているとも言えます。社員一人一人の課題、会社側の課題、どちらもありますが、社員の個人アカウントを使用する場合はメリット・デメリットを本人と会社が十分に理解し、KPI以外の方針も踏まえて協議しておくことをおすすめします。



また「アカウントを運用する」という言い方をしてきましたが、SNS運用で繋がるものは「人と人」です。目的が集客や採用、認知拡大など、それぞれ異なっていたとしても、その先に繋がっている人は人間同士である、ということを忘れてはいけない。相談を聞くたび、私はそう考えています。

まとめ

SNSで採用活動をする企業や、集客、交流を求める企業が増え、X(旧:Twitter)やInstagram、TikTok、YouTubeなど、媒体もさまざまなものがあります。SNSになると、互いの顔が見えないことで忘れがちになるかもしれませんが、交流しているのは人間同士です。メンタル不調の原因の多くは「人間関係の悩み」であり、会社のSNS運用は、SNSの中で交流する人同士の悩み、運用するうえでの社内の人同士の悩み、といった課題があります。
この記事では、SNS運用をするうえでのメリットと、同時に発生する社員のメンタルヘルス課題についてご紹介をしました。
社員がどのようなことに悩み、どういったフォローを必要としているか、その点が伝わり、今後のSNS運用に役立てていただければ幸いです。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

並木将央
専門家

並木将央(経営コンサルタント)

株式会社ロードフロンティア

人口減少に伴う「成長社会」から「成熟社会」という社会の大きな変化に対応した経営変革を支援。人材獲得、人材育成、業務効率化、資金繰り、売上UPなどの課題を同時解決するコンサルティングサービスを提供。

並木将央プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

成熟社会へのビジネスシフトをサポートするコンサルタント

並木将央プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼