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行動経済学とは、経済学の数学モデルに、心理学的に観察された事実を取り入れていく研究手法です。経済学では「人間は合理的な意思決定によって行動する」と考えますが、行動経済学では合理的ではない心理的理由による選択にフォーカスをあてています。簡単に言ってしまえば、人々が陥りやすい非合理な心理に特化した経済学です。成熟社会では、人々の経済的な意思決定と行動を理解し、その社会に合った政策やサービスを設計する必要があるので行動経済学を理解しておくと良いでしょう。今回は、行動経済学について事例を交えて分かりやすくお伝えしていきたいと思います。
ビジネスに使える行動経済学
1. 三択にして真ん中を選ばせる
人間は極端なものを回避する傾向にある(極端の回避効果という)ので、松竹梅だと竹を選びがちです。選んでほしい選択肢が魅力的に見えることをおとり効果といいます。
例えば、家電量販店に、1万円、2万円、4万円の炊飯器の3つが並んでいたとします。各商品の見た目は同じで性能が異なる場合、一番売れるのはどれでしょう。この場合、1番売れるのは2万円の炊飯器です。人が商品の購入を検討する場合「安い商品は壊れやすくて、高い商品は品質が良いだろう」と考えます。一方で1番高い炊飯器に関しては、2万円の商品に比べて大きく値段が異なるので「なんでこの商品だけこんなに高いのだろう」と感じてしまい、結果2万円の炊飯器が売れます。
売り出したい商品やサービスがあるのであれば、あえて3択にしてみると効果が発揮されるかも知れません。
2. 安くないのに安いと感じさせる
人々が判断や意思決定を行う際に、最初に提示された情報や数値(アンカー)に影響を受け、その情報を基準として判断することをアンカリング効果といいます。
例えば、家電量販店で、最初に高額なテレビが100万円で販売されているとします。そして、同じ店で別のテレビが20万円で販売されているとします。この場合、最初の高額なテレビの価格(100万円)がアンカーとして機能し、20万円のテレビがリーズナブルに感じられ、購買意欲が高まります。同じテレビが最初から20万円で提示された場合と比べて、アンカリング効果により顧客の判断が変わる可能性が高くなります。
さらに、貴社の商品やサービスを高く売りたいときは、顧客が比較するものをすり替えることで意識が変わります。顧客が「高いな」と渋っている場合は、「何と比べていますか」と聞いてみると良いでしょう。
3. 感じのいい人だと記憶させる
第一印象はもちろん重要で、第一印象が与える効果を初頭効果と言います。さらに、人間は過去の出来事を思い出すとき、もっとも盛り上がった時点(ピーク)の感情と最後(エンド)の印象でその出来事を評価します。それをピークエンドの法則といいます。つまり商談の最後に最も盛り上がる話をすれば、相手はその商談を思い出すときに、「とても盛り上がった」と評価し、いい印象を残すことができます。
例えば、はじめてお会いする社長に気に入られたい場合にどうしますか?多くの場合は、手土産を渡すと思います。そこで重要になるのが、手土産を使ってアイスブレイクすることです。最初から仕事の話をするのではなく、仕事に全く関係のない話で盛り上がることで第一印象が良くなります。これで掴みはOKです。次に、商談では相手にとってのメリットが高いことを伝え、そのメリットが自社のこだわり部分であること協調すると、より一層相手が興味を持ちます。そして忘れてはいけないのが、最後です。最後には、社長の趣味や家族などの社長のテリトリーの会話で膨らませると、安心して喋ってくれるので社長の記憶に「いい人」として残ります。これがピークエンドの法則です。
4. 実量より見た目にとらわれがち
情報や選択肢の表現方法が人々の意思決定に与える影響をフレーミング効果といいます。ビジネス、広告、政治、医療、戦略計画など幅広い分野で利用され、特定のメッセージや選択肢を効果的に伝えるためのツールとして重要です。
例えば、2つのカップを同時に出されたら、②の方が大きいと分かります。しかし、別々に出されると、大きなカップに半分入っている②よりも小さなカップに山盛りになっている①の方が値段を高く見積りがちです。アイスクリームが溢れそうな①を買うと嬉しくなり、半分空だと感じる②はそれほど嬉しく感じなく、値段を安く見積もりがちです。つまり少量でも見た目を大盛に感じさせると良いです。
最近の値上げラッシュにもフレーミング効果が現れています。いつもと同じ値段で購入した商品の中身が実は少なかったり、上げ底して量を多く見せたりしているのをみなさんも実際にご覧になっていると思います。その時は気が付かなくても後から気付く方も多いのではないでしょうか。私達の周りには、そういった様々な方法で意志決定は操られている可能性が大いにあります。
人間のあらゆる行動の根本は「効用」
これまで紹介したように、人は購入の意志決定をするときに「満足感」という主観的なもので選んでいます。経済学ではこれを「効用」と呼んでいます。人間のあらゆる行動の根本にあるのが効用です。効用をできるだけ大きくするにはどうしたらいいかで動いています。
効用が多様化した成熟社会
成熟社会では情報が過多となり、多様化して同じ家で育っても価値観・信念がかけ離れていることも多くなりました。そのような成熟社会では、何に満足感を抱くかも一人ひとり異なるので効用もバラバラになります。成熟社会では、消費者は答えを持っていません。「自分が何を欲しているのかわらかない」「自分の中に答えを持っていない」という消費者が多いのです。そのようなとき、人間のちょっとした癖である効用に目を付けることが有効です。
そして、その効用が行動経済学とつながっているのです。前途のとおり、どのような手法(行動経済学を用いて)で、いかに顧客に効用を持たせることができるかが成熟社会では肝となります。そのため、自社の商品がなぜ売れているのか、どのような効用を顧客に与えられているのかを常に把握しておく必要があります。そして、他社や他のサービスについてもリサーチが必要です。
成熟社会では、効用を見誤るとふとした瞬間に他社にスイッチングされる可能性があります。ですから、物を売っただけで満足してはいけません。販売後のフォローやリレーションがさらに顧客の効用を大きくし、顧客の満足度が大きくアップします。次第に顧客は貴社のファンとなり、顧客のマインドシェアを獲得することができます。さらに、顧客ロイヤリティが上がれば営業をしなくても良くなります。コラム「ビッグモーターの保険金不正請求がおきた本当の理由」でもお伝えしましたが、成熟社会では共創し合えるエコシステムが稼働すれば営業は要りません。これが、成熟社会では営業が不要だと言われる由縁のひとつです。
まとめ
今回、紹介してきたのは行動経済学の一部ですが、様々なテクニックで私たちの意志決定は操られている可能性が大いにあります。反対に企業であれば、行動経済学を用いて消費者の心理をくすぐれるようにしていくと良いです。今日、ご紹介したもので自社に展開できるものがないかチェックしてみてください。