地域をつなぐ新サービス!熊谷市の「クマポプレイス」に当社アプリ「Lincrew」が導入されました
DXを実施する予定もない企業が6割
日本におけるDXの取組を尋ねたところ、約6割の企業が「実施していない、今後も予定なし」と回答するくらい、DXに後ろ向きです。経済産業省が「2025年から2030年までの間に、年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性が高く、反対にDXを推進することができれば、2030年の実質GDPにおいて130兆円の押上げを期待できる」と伝えているのに、なぜ進まないのでしょうか?
総務省 情報通信白書「令和3年版 我が国におけるデジタル化の取組状況」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112420.html
独立行政法人情報処理推進機構社会基盤センター「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、DX推進人材の不足感では、プロデューサー、データサイエンティスト/AIエンジニア、ビジネスデザイナー、アーキテクトが半数前後で「大いに不足」と回答しています。
IPA情報処理推進機構
「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」
https://www.ipa.go.jp/files/000073017.pdf
しかし、DXが進まないのは、DX推進人材の不足だけではありません。
日本でDXが進まない理由
拘束時間、仕事をしている(フリでも構わない)ならば給与は固定で支払われる正社員制度が主の日本では、頑張るだけ損だという認識が残念ながらあります。たとえば、同じ仕事を「10分で片づける部下」と「1時間かかる部下」、どちらが優秀だと思いますか?もちろん前者ですよね。では、「10分で片付けて50分遊んでいる部下」と「1時間かけて終わらせる部下」どちらががんばっていると思いますか?後者でしょうか?
時間で測るのは効率であり、効果ではありません。労働の対価は効果で測られるべきであり、時間ではありません。頑張っても大して評価されず、責任だけ与えられる企業が多いため、社員はDXを行おうとはしません。成熟社会では、会社が社員の価値観や考え方を理解し、最大限のパフォーマンスを引き出せるよう仕事に見合った報酬が必要です。
そもそも、DX人材とはITスキルが高いだけでは不十分なのです。現在の延長線上で、ITリテラシーが高い新入社員にDXを任せるというのは無茶ぶりです。ITをはじめとする様々なツールは手段でしかないので、それらを使ってどう変わっていきたいのか?ゴールを示さなければなりません。ゴール設定できなければDX人材にはなれません。DXは顧客が楽しくなることが重要です。顧客を楽しませるためには、まずは社員が楽しくなければなりません。
最も重要なのはビジョン
DXを実行するにあたっては、新たなデジタル技術を活用して、どのようにビジネスを変革していくかを考えた経営戦略が不可欠です。ITを使ってどう変わっていきたいのか?達成したいビジョンを示さなければなりません。ビジョンとは「最終的にどうありたいか」という状態を指します。社員に会社のビジョンが浸透していないと、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革が行えません。内部が整わなければ、DXを進めることは不可能です。
成長社会では主従関係があったので、社員が会社のビジョンに染まっていたので、理解も深かったと思います。しかし、成熟社会では会社と社員はフラットな関係となり、それぞれが異なるビジョンを描いているため、企業のビジョンは意識しないと見えません。企業がどうありたいと願っているのかを社員に理解してもらうことが重要です。長期的なビジョンからロードマップを分解して、小さなビジョンをDXのビジョンと定めて、段階的に達成していくと良いでしょう。
DX人財をどう育てていくか
VUCAを背景とした DX人財育成では、3つのイノベーションを同時に考えていかなければなりません。
1.ビジネスイノベーション
自社価値と収益体質を見直し、ビジネスを変えずにビジネスモデルを変えます。要するに、今のビジネスを分解し、再構築し、何か違う新しいものを作り出せないかを考え、時には新しい組み合わせを創出したり、新規事業を創出したりします。同時に、社員をあるべきところに引っ張っていく分野別ビジネスリーダーの確保も欠かせません。
2.組織・人材イノベーション
企業は、上意下達など鈍化した組織と決別し、多様性を受容した組織形態に変えたり、新たに優秀な人材の定義や評価方法を変えたり、ビジネスアジリティが必要です。社員はビジネスアジリティを身に付けて、変化をチャンスとして受け止め、積極的・自発的に学習・行動することが要となります。
3.デジタルイノベーション
企業は、ビジネスプロセスを見直し、置換と変更が必要です。新しいテクノロジーを採用し、社員がやりたくない作業は自動化し、社員はよりクリエイティブな仕事にシフトすることで生産性の向上が期待できます。
ビジネス面、組織・人材面、デジタル面どれが弱いですか?ここでの弱さがそのまま、DX を実現するための取り組みにおける内的要因となります。
DX人材を育成するための組織の在り方
DXを取り入れることにより、働き方改革とビジネス変革は進んでいきますが、成長社会型の企業がやりがちなのは、人員削減です。DXは人件費削減のためにテクノロジーへの投資をするのではありません。社員がやりたくない作業をDX化し、その分、育成・教育に力を入れていきましょう。
社員がやっていて楽しい、ワクワクする仕事に人材をシフトすることが、本来の働き方改革であり、テクノロジー導入の目的です。DX人材を育てるためには組織も整っていなければなりません。組織がまず知っておきたいことを伝えたうえで、DX人材に必要なスキルやマインドは下記4つです。
1.働き方改革
組織戦略として働き方改革を行った企業は多いと思います。しかし、福利厚生を充実させたり残業時間を減らしたりしても働き方改革にはなりません。ノー残業デーの悪影響として家に仕事を持ち帰ったりカフェで仕事をしていたりするニュースを皆さんも御覧になったと思います。もっと本質的なところから変えていかなければ、働き方改革にはなりませんし、組織を変えていくことはできません。
2.ワーク・ライフ・バランス
働き方改革を試みた企業が狙っていたのは、ワーク・ライフ・バランスの向上でしょう。そもそもワーク・ライフ・バランスとは仕事と生活の調和のことです。休みを与えていれば良いというわけではありません。いい暮らしをすることが幸せで、そのために仕事をする、という価値観が定着していた成長社会では、ワークでお金を増やすことで、天秤が釣り合うように、その分ライフの豊かさも増えていきました。成熟社会でのワークとライフのバランスは、やりがいや充実感という水でコップが満たされ、そこから溢れた水がライフを潤します。その水を自己啓発・自己学習として、またワークに注いでいくのです。働き方改革とは、ワークのコップを水で満たすことを指すのです。会社は、社員を楽しませなければならないのです。
3.社員との関係性
顧客、企業、社員の関係性は、成熟社会に入り大きく変化しました。成長社会では社員より顧客が重要視されていましたが、成熟社会では、企業にとってより大事なのは、顧客ではなく社員になります。会社に信頼を置き、幸せを感じている社員は、顧客にも心地良い対応ができます。そうすると、顧客ロイヤリティは会社ではなく社員個人につながり、顧客の企業に対する信頼度も上がり、ファンが増えていきます。つまり、企業に共感を持ち、やりがいを持って働く社員は、企業の広告塔になり得るのです。社員に顧客ロイヤリティがつながることで、企業にとってより大事なのは、顧客ではなく社員になります。
4.アジャイルで進めていく
アジャイルとは直訳すると「素早い」「機敏な」「頭の回転が速い」という意味です。いま、何をすべきかと現場の一人ひとりが絶えず考え、刻々と変化する環境に適応しながら判断し、実行することが大切です。
まとめ
DX、つまり顧客を楽しませるためには、まずは社員が楽しくなければなりません。社員が楽しく仕事できるか、DX人材となれるかどうかは企業の在り方次第です。社員のビジョンを応援し自己実現の場となるようにすることが重要です。