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並木将央

成熟社会へのビジネスシフトをサポートするコンサルタント

並木将央(なみきまさお) / 経営コンサルタント

株式会社ロードフロンティア

コラム

成熟社会に合ったリーダーシップの執り方

2021年5月14日

コラムカテゴリ:ビジネス

成熟社会は、どのような人を管理職にすればよいのでしょうか。
管理職は、リーダー向きの人、マネージャー向きの人、どちらもむいてない人、両方できる人の4パターンに分かれます。そもそもマネージャーとは、リーダーとは何でしょうか?マネージャーとは、その部署が目標にたどり着くことを前提に、そのために部下を維持管理する人のことです。たとえば、「プロジェクトマネージャー」という場合は100%プロジェストがうまくいくことを前提に、起こり得る問題や課題に対処していく立場にいます。一方、「プロジェクトリーダー」は、会社のビジョン正しく理解し、社員をあるべきところへ引っ張っていく人です。成長時代ではマネージャーとリーダーの区別がついていませんでした。成熟社会では、マネジメントが必要なことを個人に落とし込んで、リーダーシップを発揮させていくことが重要です。



なぜマネジメントでは成り立たなくなったのか

成長社会においては、人々が求めていたことが画一的だったので、給与次第でやる気も上がり勝手に頑張ってくれたので、マネジメントしているだけで済みました。しかし、幸せの形が多様化した成熟社会では一人一人に聞かないと何を求めているのかわからなくなりました。今までは給料の額で社員の幸せの形をコントロールできていましたが、成熟社会では、「お金=良い暮らし=幸せ」の方程式が必ずしも適用されません。これまでの方向性を示すだけのマネジメントは通用しません。一人一人の価値観に寄り添わなければなりません。

ガン化した管理職を放置していないか?

定年というゴール間近で、保身に走って何もしない事なかれ主義となり、組織のガンとなっている管理職になっていませんか?ひどい場合は優秀な部下に無自覚なパワーハラスメントをして、部下の意見も聞かず、理論の伴わない軍隊的な指示を飛ばします。部下に無理をさせ、疲弊させます。社員の離職率が高い企業では、この傾向が強いと言えます。下記は、ガン化した管理職が行う行動習慣の7つです。
(1)考えない
(2)口だけで動かない
(3)動いたとしても無策に動く
(4)社長と部下に嘘をつく
(5)現実を見ない
(7)言い訳をして認めない
(8)会社のことを考えない
会社も人体と同じです。表現は良くないですが、長年会社に貢献してきた管理職であっても、冷えて硬直し、ガン化することがあります。そのままでは、周囲の若い組織にガンを撒き散らして機能不全にしてしまいます。経営者がガンになるとどうにもなりませんが、管理職に対しては早期発見、早期対処で改善が可能です。管理職の変革ができた会社だけが、成熟社会を生き残ることができるのです。

「2:6:2の法則」という有名な法則があります。全体の10割が同じ立場の組織の中で、しっかり働く人は2割、日和見が6割、働かない人が2割。働かない2割を切ると、残った8割の中でまた、「2:6:2」に分かれていき、日和見の一部が働かない人に変わり、働いていたひとの一部が日和見に変わります。しかし、「2:6:2の法則」のうち、下の働かない管理職を切っても、立場が違うので影響はありません。それどころか会社が活性化していきます。



日本企業は、「給料を上げるのなら管理職」というのが一般常識なくらい根強いています。そのため、管理職の種類が多くなっています。管理職の増殖は現場の混乱を招くだけです。キャリアアップは社員の自己実現とリンクしていなければならないのです。管理職にならなくても給料や仕事の機会が増える制度が必要ですし、管理職になっても結果が出せなければ、平社員より給料が少なくても本来は構わないのです。

成長社会の企業の3種の神器(終身雇用・年功序列・企業別組合)が崩れ去った成熟社会では、経験年数で単価が上がるようにするのは逆効果となります。エンジニア市場では経験年数で単価が上がるようにすると、新たなスキルを学ばない環境を作ってしまうことになるとわかっています。どの業界でも、スキルと結果に応じて上がるようにすると良いです。昇給=昇級は終わりにして、給与は会社にいて欲しい順に高くなければ、評価制度を見直す必要があります。

どんな人をリーダーにするべきか

自社を愛し、自分を知り、自社を誇り語れることができることが最低条件です。
管理職が部下のモチベーションを上げて動きやすくするためには、企業のビジョンを自分なりに理解し、部署のビジョンを設定して、部下にきちんと伝えることです。ビジョンを理解せずに、ただただメッセンジャーの様に伝えるだけでは、部下はついていきません。この企業にいて、どう幸せであるかを伝えることで管理職への共感が生まれます。すると部下は率先して行動を起こすようになります。そのためには、リーダーとなる人は、自社を愛し、自分を知り、自社を誇り語れることが必要不可欠なのです。



成熟社会に合ったリーダーシップとは?

リーダーシップとは、ビジョンに向かって、導くために行います。
では、リーダーが成熟社会において、執るべきリーダーシップとはどういうものなのでしょうか。
そもそも、リーダー+シップとは?
リーダーとは導く人のことを指します+シップとは関係性を意味します
すなわち、「導く人と導かれる人の関係性を成熟社会にシフトする」役割があります。

リーダーシップを成熟社会にシフトするには

成熟時代では、メンバーの価値観がバラバラとなっています。リーダーシップはメンバーに下記3つの要素が整うようにしていくことです。
1.仕事に見合った報酬(感情的報酬・金銭的報酬)
2.仕事をするのに幸せな環境(人間関係・労働条件)
3.共感・やりがいを感じられる仕事(自己実現・目的意識)
そのためにメンバーが求めていることや感情を理解し、仕事内容を変更したり経営陣にアプローチしたりしていきます。

成熟社会におけるマニュアルの在り方

社員管理のためには、直接的なマネジメントだけではなく、マニュアルも必要です。
日本でマニュアルというと一般的に業務マニュアルをイメージする人が多いと思います。
成熟社会では、何よりも感情の管理が大切です。そのため、特にマインドマニュアルが重要です。下記3つのマニュアルがきちんと整備されていることが、成熟社会の企業のかかせないポイントになります。
1.規範マニュアル(マインド)
「ビジョン」「理念」「行動指針」など、企業側の気持ちや願いなど「なぜそれを行うか」というマインド面を伝えるもの
2.教育訓練マニュアル(テキスト)
「教育」や「訓練」など、各個人の持っている暗黙知を形式化して社内標準化するためのもので「どのようにやっていくか」を示すもの
3.業務マニュアル(オペレーション)
「業務の流れ」「業務内容」「作業手順」など、業務を円滑に進めるためのもので「何をするのか」を示すもの
「とりあえず仕事だからやれ」ではなく、「なぜそれを行うのか」が重要なのです。優れた組織やリーダーは「WHY(なぜするのか)」→「HOW(どうやるのか)」→「WHAT(何をするのか)」の順で3つの要素を伝えているから、心に響き、行動に影響を与えることができるのです。

チームワークとチームプレイ

成熟社会でリーダーが意識するのは、野球型のチームプレイではなく、サッカー型のチームワークであるべきです。人口が減っていく成熟社会では役割が決まっているチームプレイ型のスタイルでは効率が悪いです。サッカーは、仮に反則でひとり退場になった場合も補充なく競技は続行されます。戦略や戦術によって、他のポジションの人が足りなくなった部分をカバーし、勝つことも可能です。このように成熟社会では、チームワークを意識しながら仕事を進める体制が適していると言えます。管理職は、自分の仕事の枠を広げない部下や、自分にしかわからないように仕事を囲っている部下に目を向け、それらの仕事を他の人にでもできるように、ITやマニュアルによるシステム化を目指すとよいです。そうすることによって、越権行為を許せる組織になり、より強固な組織となります。

まとめ

メンバーの価値観を知り、感情に共感し、自己実現を応援することが成熟社会のリーダーシップでは求められています。大事なのは、いかにメンバーの幸せを願えるか?に尽きます。そして、一人一人に寄り添うことが重要です。しかし、甘やかすのとは違います。メンバーが嫌だというからただ、その業務から外すのではなく、なぜ嫌だと感じているのか本質的な部分を理解し、部下の能力を最大限に発揮させてあげられることが重要です。

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並木将央

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並木将央(株式会社ロードフロンティア)

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