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並木将央

成熟社会へのビジネスシフトをサポートするコンサルタント

並木将央(なみきまさお) / 経営コンサルタント

株式会社ロードフロンティア

コラム

共創の時代に知っておきたい。競争しないブルーオーシャン戦略の活用方法

2021年4月14日

コラムカテゴリ:ビジネス

失われた20年と言われ続け、モノを作っても売れなくなった中、ブルーオーシャン戦略が再度注目を集めているようです。コロナ禍に入るちょっと前の複数の本屋さんでブルーオーシャン戦略が大々的に特集されているのを目にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ブルーオーシャン戦略は、2005年にINSEAD教授のW・チャン・キム とレネ・モボルニュ が著したビジネス書で述べられている経営戦略論です。15年以上経つのにも関わらず、色褪せずにビジネスマンの気持ちを掴むのはなぜでしょうか。

今回は、ブルーオーシャン戦略とはどういうものなのか要点をお伝えしたのちに、成熟社会の専門家として、成熟社会においてブルーオーシャンにたどり着くにはどうしたら良いかについてお伝えしていきます。


ブルーオーシャン戦略とは

ブルーオーシャンとは、競争のない市場・業界・分野のことを指します。これまでの産業の枠組みを超えて新しく創造されるものもありますが、大多数はレッドオーシャンの延長として、つまり既存の産業を拡張することによって生み出されます。

対として挙げられるレッドオーシャンは、価格競争や顧客の奪い合い、競争の激しい市場・業界・分野のことを指します。レッドオーシャン戦略では、競合ひしめく既存市場において「いかに市場の需要を利用して競合を打ち負かし、シェアを拡大させるか」を考えて、主に差別化と低コスト化のいずれかを選択していきます。

レッドオーシャンのような競争の激しい市場・業界・分野から抜け出す戦略をブルーオーシャン戦略では教えてくれています。

BlueOcean


ブルーオーシャン戦略の成功例

ブルーオーシャン戦略の事例で最も有名なものが、シルク・ドゥ・ソレイユの事例です。シルク・ドゥ・ソレイユはブルーオーシャン戦略をうまく活用し、斜陽産業と呼ばれていたサーカス業界で、普通の大手サーカス団が100年以上かけて達成した売上高をわずか20年足らずで達成しました。

普通のサーカスは、下記のような問題を抱え、市場がレッドオーシャンとなってしまっていました。

1)派手なパフォーマンスを追求することによるパフォーマーのギャラの高騰
2)子どもたちが時代の変遷とともにゲームなど他の遊びに夢中になったことによる市場の縮小
3)動物愛護団体からの反発

シルク・ドゥ・ソレイユはこれらの問題を解決する策を講じることでレッドオーシャンから抜け出します。

1)ターゲットを大人と法人客へと移行することによるチケット価格の向上
2)ストーリー性をもたせることで大人が楽しめるショーにする
3)動物の芸を取り入れない

競争者のいない新しい市場を創造して競争しないことで、高価格・高利益を実現することができるということを示したので、ブルーオーシャン戦略でよく語られている例です。覚えておくと良いでしょう。


ブルーオーシャン戦略を成功させるためには

ブルーオーシャン戦略を成功させるためには、土台となるバリューイノベーションの確立が大事と言われています。バリューイノベーションとは、コスト削減を行いながら、買い手にとっての商品・サービスに対する価値を高めていくことです。つまり、企業・買い手双方の価値が同時に高めることを言います。

バリューイノベーションを確立させるためには、自社製品においてなくすもの・減らすもの・増やすもの・付け加えるものは何なのかを考えていきます。

コストを下げるには、業界で常識とされている競争のための要素をそぎ落としましょう。例えば、サウスウェスト空港が機内食やラウンジを減らしたり、座席クラスの選択やハブ空港での接続性をなくしたりしたようなことです。

そして、買い手にとっての価値を高めるには、業界にとって未知の要素を取り入れる必要があります。例えば、コンビニで煎れたてコーヒーを販売したり、ATMを置いたりなど異業種と組んでみることが言えます。

業界にとって未知の要素を取り入れるために、非顧客を考えてみると良いです。今まで顧客ではなかった人というのは、「なぜ」これまでの商品を買わなかったのかを教えてくれる人です。顧客ではない消費者は次の3つのグループに分けることができます。

・第1グループ:現時点は顧客だが、消極的な理由で購入しており、可能なら代替品で済ませてしまいたいグループ
・第2グループ:過去に不満やトラブルを経験して、製品や業界にネガティブな感情を持っているグループ
・第3グループ:既存製品も代替品も買わないグループ
 
ご自分のビジネスで、非顧客の3グループに所属している人を想像してみましょう。実際に名前を思い浮かべながら書くと、より効果的です。

バリューイノベーションの模索、非顧客の確認をやり終えたら、続いてブルーオーシャンを見つけるために6つの視点から確認します。

・代替産業に学ぶ
→例:新聞とニュースアプリ
・業界内の他の戦略グループから学ぶ
→例:ディスカウントストアと高級スーパー
・買い手を分類する
→例:購入者が親、利用者は子ども
・周辺商品を探す
→例:映画館とベビーシッター
・機能と感性の切り替えを検討する
→例:スウォッチ。機能としての時計に、感性としてファッション性を足した
・将来性を見る
→例:人口変化、市場変化

この6つの視点に沿って、ご自身のビジネスなら何をするか考えてみましょう。バリューイノベーション、非顧客の確認、6つの視点を真剣に考えれば、ブルーオーシャン戦略を作れることができるでしょう。


成熟社会とブルーオーシャン戦略

成長社会では半歩ずらし程度でレッドオーシャンからブルーオーシャンへ移行することができました。しかし、成熟社会ではブルーオーシャンに移行できたとしても、IT技術の進化により、変化がとても早くなってしまっているため、一瞬でレッドオーシャンに変わっていってしまいます。

時代の変化とともにブルーオーシャン戦略を理解しましょう。戦略とは「戦いを略する」との言葉通り、戦わないといけない場面を減らすことです。時代背景を無視した戦略では、戦いを減らすことはできません。

一昔前は、レッドオーシャンでも企業は生き延びていけました。人口が増えていく成長社会だったからです。成長社会ではモノが不足しているだけでなく、人々が製品・サービスに不平不満を抱いていたため、作れば売れる時代でした。そのため、雨後の筍のようにメーカーが続々と生まれました。しかし競合が多く価格競争となるようなひどいレッドオーシャンだったとしても、需要が供給を上回っていたので、十分な売上が立ちました。レッドオーシャンでも生き残れていたので、企業はブルーオーシャンを理想としました。

しかし、成熟社会では人口が減少していくので、持たざる者が生まれてこないため、需要が供給を下回るようになります。モノやサービスに溢れ、価格競争が激化した結果、安価で良質が当たり前となりました。こうなってくると、レッドオーシャンでは経営は成り立ちません。レッドオーシャンでは生き残れなくなってきたので、企業は本気でブルーオーシャンを探しています。ですが、ブルーオーシャンは幻に近い状態です。では、どうすれば良いのでしょうか?


成熟社会に合ったブルーオーシャン戦略とは

成熟社会においてブルーオーシャン戦略はイノベーションをどう起こしていくか?ということに近いです。いかに共創して新たな価値を生み出すかがポイントとなります。他業種とアライアンスを組み、既存技術と既存市場に新たな形でアプローチをかけるのが成熟社会には合っています。

いま行っているビジネスの他に、顧客のニーズに刺さりそうな商品開発を続けていきましょう。成熟社会では消費者自身が欲しい物が分かっていないので、トライアンドエラーを繰り返していくしかありません。柔らかいイノベーションを起こしていくことこそが、成熟社会のブルーオーシャン戦略です。異業種との共創こそが、競争を抜け出すチャンスを作ってくれることでしょう。


まとめ

本家のブルーオーシャン戦略で仮にブルーオーシャンを得られたとしても、成熟社会ではあっという間にレッドオーシャンに変わってしまうということを覚えておいてください。シルク・ドゥ・ソレイユのように、マンパワーで得たブルーオーシャンならば、なかなか追いつかれないので維持できますが、デジタル化で得たブルーオーシャンは急変しやすいのでご注意ください。

ブルーオーシャン戦略に限らず、様々な戦略を持ち掛けられることがあると思いますが、時代背景を理解し、「要するに?」と考えていけるようになりましょう。

この記事を書いたプロ

並木将央

成熟社会へのビジネスシフトをサポートするコンサルタント

並木将央(株式会社ロードフロンティア)

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