プライベートクレジットに投資する前に知っておくべきこと(3)損切り実施の動きも
「アレス・ストラテジック・インカム・ファンド」(運用資産107億ドル)は、顧客から11.6%の解約請求があったことを受け、払い戻しを発行済み口数の5%に抑えた。24日付の株主向け書簡で明らかにした。151億ドル規模の事業開発会社(BDC)である「アポロ・デット・ソリューションズ」も前日、11.2%分の償還請求があったことを受け、同様に発行済み口数の5%を上限として償還を制限した。
こうした償還請求の急増を受け、一定の流動性を求める投資家にとってダイレクトレンディングが適切な投資対象かどうかについても、改めて疑問が生じている。
出所:Bloomberg 2026/03/25 『アレス、プライベートクレジットの償還制限-資金流出でアポロに続く』
プライベートクレジット業界大手のアレス・マネジメントも*解約を5%に制限しました。
(注* 本稿では記事中で一部、償還請求を解約と表記します)
アポロ・グローバル・マネジメントもこの前日に解約を5%に制限しました。
今さらながらプライベートクレジットって何?
銀行が貸し手とならない、ノンバンク融資がプライベートクレジットです。
いわゆるリーマンショック、世界金融危機で銀行の経営健全性に重きを置いた結果、融資残高は優良先中心になりました。一方で世界の中央銀行の金融緩和や、投資家マネーは、未上場の企業やスタートアップ企業に向かいます。そこを繋げたのが「プライベートクレジット」です。
「有望分野」に飛びついたクリフウォーター
偶然にも出会った30代の営業担当者から、富裕層向けの次の有望分野があると売り込みを受けた。それが「プライベートクレジット」だった。
手数料は約3%と、大手のビジネス・デベロップメント・カンパニー(BDC、中小企業向け投融資会社)より大幅に低く抑えた。
「誰も資金の払い戻しを求めない間はすべてうまくいくが、資金の回収が始まると問題が生じる」と、ムリエル・シーバートのマーク・マレク最高投資責任者(CIO)は述べた。
出所:Bloomberg 2026/03/24『プライベートクレジットの巨人、クリフウォーター率いる親子に試練』
「クリフウォーター・コーポレート・レンディング・ファンド」はインターバル・ファンドと呼ばれ、複数のプライベートクレジットファンドに分散投資する「ファンドオブファンズ(複数の投資信託を組み入れた投資信託)」のような仕組みで拡大してきた企業です。
330億ドル規模まで成長をしてきました。
3%の手数料が安いほうと言われていることがわかります。プライベートクレジットファンドがいかに高い運用コストであるかが、この文章からもわかります。
かつて、高い運用コストであったにもかかわらず人気があった、ヘッジファンドと同じような構図が見て取れます。
クリフウォーターがこの分野に進出した動機を改めて見直してみましょう。
”営業担当者から、富裕層向けの次の有望分野があると売り込みを受けた”とあります。
企業が存続するためには収益が必要です。
一方で、有望分野は換言すれば、「儲かる分野」ということでもあります。
プライベートクレジット業界は、高いリターンをうたい、それがあたかも未来永劫に続くような”雰囲気”、リテラシーの高い富裕層が投資しているような”雰囲気”を醸し出した販売戦略を取り続けていたと推察できます(筆者私見)。
クリフウォーターはわずか10年ほどで業界の有力企業になったのですが、逆に言えば、その程度の経験、歴史でトップになる業界の底の浅さを感じます。
プライベートクレジット業界が逆回転を始めた今、クリフウォーターは存続の危機を迎えていることでしょう。
クリフウォーターが解約対応を続けることが果たしてできるのか?
それはいずれ明らかになろうと思います。
リーマン時にも問題になった「流動性」=換金性
問題は、解約できない資産への投資です。
プライベートクレジットや、ヘッジファンドは流動性に欠ける商品がほとんどなのです。
格下げのリスクを考えれば、格下げ後に換金できない資産に投資することをためらうべきでしょう。
しかし、販売員のセールストークを信じた投資家は、このような局面で「これは、まずかったかも?」と気付くのです。
いわゆるリーマンショックと呼ばれる金融危機が2007年以後に発生しました。2008年にも「解約したくても解約できない」という事象が発生していたのです。
プロ投資家がETFの優位性に気づく。流動性の高さ!
2008年の金融危機で、株式も債券も下落していく局面を迎えました。そして、ヘッジファンドや様々なファンドで解約ができない事態が発生しました。
そのような局面でも、換金性を持っていた商品がETFです。(注 全てのETFを指すものではありません)
ETFは市場に上場しており、相対で買手を探さなければいけなかった非上場商品と異なり、換金ができたケースが発生したのです。
これを機に、プロ投資家はETFという商品の流動性の優位性に気づくことになったのです。
販売者の言うことを鵜呑みにしてはいけないのです。そしてそれは、「世界最大の~」と言われる会社であっても、妄信することは危険なのです。
販売者は、わざわざセールスしにくくなる、「不都合な真実」を述べないのです。
また、メディアも広告主に忖度して悪いニュースを積極的に伝えることを期待しにくいのです。
リスクをわかった上で、高いリターンを期待して投資したのなら、仕方がないでしょう。
しかし情報弱者が販売員のセールスに乗って投資をし、結果的に失敗してしまうのは、気の毒だと思うのです。
なお、あなたがアドバイザーだと思って取引している人のほとんどは販売者です。
そして運用の経験もなく、セールスしている商品のリスクを深く理解しているとは言えない場合が多いと思います。
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「あまり報道されないニュース」として記事の執筆をし続けてきましたが、大きな損失が出るタイミングで「ヤバいニュース」として報道されるようになってきます。
筆者のプライベートクレジットへの警鐘は2025年6月から特集をしています。
過去「プライベートクレジットに投資する前に知っておくべきことシリーズ」の特集は下記リンクから参照可能です。
(1)サブプライム構造と同じか?
(2)その会社の格付を信用して大丈夫?
(3)損切り実施の動きも
(4)米国では逆風か?
(5)人気は本当なのか?
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