米金融界「ゴキブリ」論争?(2)、融資対象不動産が別事業体に

安東隆司

安東隆司

テーマ:あまり報道されないニュース

「ゴキブリ」と呼ばれたBDC業界に属する、ブルー・アウル・キャピタルCEOが、JPモルガンのダイモンCEOに反論しました。

「ゴキブリ」の何たるかを知りたい方はシリーズ1話目をご覧ください。
『米金融界「ゴキブリ」論争? (1) プライベート・バンカーだから信頼できるとは限らない』

(プライベートクレジット業界では)デフォルト(債務不履行)の増加も、企業が苦境に陥っている兆候も見られない

これはプライベートクレジットの問題ではなく、流動性のあるクレジット市場の問題だ

(トライカラー、ファースト・ブランズ)両社の破綻による損失を主に負うのは、広く販売されたシンジケートローンと資産担保証券(ABS)の投資家、および銀行だ。JPモルガンはトライカラー関連で1億7000万ドルの貸倒償却を第3四半期に計上した。

Bloomberg 2025/10/15 『ブルーアウルCEO、ダイモン氏のゴキブリ発言に反応-銀行ローンに矛先』

反論:プライベート・クレジット業界の話ではなく、苦境でもない

プライベート・クレジット業界のブルー・アウル・キャピタルのCEOは、これらの問題はプライベート・クレジット業界ではなく、それ以外の市場で発生した問題だ、プライベート・クレジット業界企業が苦境に陥ってはいない
といったことを言いたいのだと思われます(筆者私見)。

別の観点では、JPモルガンのような大きな企業であっても、トライカラーの不良債権に巻き込まれて損失を計上しているのです。
トライカラーはサブプライム自動車ローンの業者です。
JPモルガンが組成した商品でも、仮にトライカラー向けの債権が含まれた商品だったら、損失が出ることでしょう。
リスクのある商品に投資をすることは、ロスが出る覚悟も必要なのです。

拡大するプライベート業界との勢力争い?

業界が成長や成功し続けない方が良いという現実的で狭い利害を抱える人々が存在する

ブラックストーンの時価総額は、今や世界の多くの金融機関を上回っている

Bloomberg 2025/10/16 『ゴキブリ発言で論争勃発、銀行とプライベートクレジットの関係変化も』

ブルー・アウルのCEOの発言は、勢力が拡大するプライベート・クレジット業界に対して、危惧を抱いたJPモルガン側の言いがかりだと言いたいのだと思われます(筆者私見)。
銀行は規制で縛られており、高いリスクを取りにくい状態です。
一方、規制の少ないプライベート・クレジット業界がそのマーケットで、大きな収益を挙げていることを羨ましく思っているのでは、と言いたいのでしょう(筆者私見)。

ダイモン氏はリスクの高いプライベート業界の商品が拡散する、ことのリスクを論じたのとも考えられます(筆者私見)。

地銀が融資詐欺に巻き込まれた、とする問題が出てきました。

ザイオンズが提起した訴訟によると、同社の完全子会社カリフォルニア・バンク・アンド・トラスト(CB&T)が借り手に約6000万ドル(約90億円)の信用供与を行い、その後の調査で多くの手形や担保不動産が別の事業体に移転されていたことが判明したという。

ザイオンズはCB&Tが引き受けた融資で5000万ドルの貸倒償却を計上したと発表後、株価が13%下落し、過去約6カ月で最大の下げとなった。ウェスタン・アライアンスも同じ借り手に融資していたと明らかにした後、株価は11%安となった。

Bloomberg 2025/10/17 『米銀行業界への懸念広がる-融資詐欺の疑惑、相次いで明らかに』

地銀は”商業用不動産ローンの不良債権を購入する資金”として融資したが、その対象物件が別の事業体に移転されていた、という事件になっているのです。地銀としては、不動産を対象にした融資であったのに、その担保が無くなっている状態に陥り、「詐欺だ」と訴えているものだと思われます(筆者私見)。

筆者の想像でしか無いのですが、不動産の不良債権を購入し、それを証券化して小口で「プライベート不動産」として勝手に売却する、というシナリオは考えられないでしょうか?
最初から仕入れた不動産を証券化やファンド化して、投資家に販売するスキームだったとは考えられないでしょうか?
組成する事業者はリスクゼロで販売手数料で潤う仕組みです。

実際に調査、裏付けがあるわけではないのですが、昨今の「プライベート何とか」ブームに乗った事業者が、地銀を騙して融資金を流用する、一連のスキームを最初から計画していたのではないかと、筆者の想像を掻き立てます。

流動性(換金性)にすぐれ、透明性の高い資産に投資することが重要なのだということを、改めて投資家の皆様に認識してほしいと思います。

※ 特定の会社に対する攻撃や悪意のアンチコラムなどではありません。
  実際に発生している事柄を報道を引用しつつお伝えしました。
※ 特定の銘柄の分析や推奨などではありません。

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安東隆司
専門家

安東隆司(投資顧問)

おカネ学株式会社 Reliable Investment Advisors Japan Co.,Ltd(英文名称 略称 RIA JAPAN)

富裕層の資産の管理や運用、承継などを行う。売買手数料0などお客様と利益相反の少ないサービスを追求。また、海外ETFを中心とした資産形成の知識・経験が豊富。テーラーメードの投資助言を大切にしている。

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