プライベートクレジットに投資する前に知っておくべきこと(4)米国では逆風か?
アメリカの金融マーケットで「ゴキブリ」論争が巻き起こっています。
米自動車ローン会社のトライカラー・ホールディングスと、自動車部品メーカーのファースト・ブランズ・グループが連続して経営破綻しました。
そうした事態が起きると、私のアンテナが反応する。言うべきでないだろうが、ゴキブリを1匹見たら、恐らく他にもいる。この件は誰もが警戒すべきだ
景気下降が起きれば、特定の分野で通常より大きな信用損失が発生するのではないかと疑われる。BDC(事業開発会社)と上場プライベートクレジットファンドの状況を自分で調べてみるといい
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOのこれらの発言で、米国市場で論争が起こっています。
プライベートクレジット市場に投資するBDCから投資家は資金を引き揚げており、BDCが株主への配当を減らす状況が背景にある。業界最大規模の非上場ファンド、ブラックストーン ・プライベートクレジット・ファンド(運用資産750億ドル)も先月、配当減額を明らかにした。
BDCの株価パフォーマンスは、より幅広い株式相場を反映するS&P500種株価指数との格差が今年に入り際立っている。
Bloomberg 2025/10/15 『JPモルガンのCEO、信用市場の異変に警鐘-「ゴキブリは他にもいる」』
プライベート・バンカーの顧客志向も人それぞれ
筆者は欧州系プライベートバンクに勤務していた時に、サブプライムローンで資産を億円単位で失った投資家を見てきました。
そして、そのような商品を提案したプライベートバンカーも顧客を失い、次々と離職しシンガポールなど海外へ職場を移した事例を目撃しました。
「プライベート・バンカー」の提案ならば信頼できる とは限らないのです。
自らの収益やボーナスに目がくらみ、顧客に高いリスクの商品を提案するプライベート・バンカーは今でも存在するでしょう。
どれだけお客様思いなのかは、人それぞれ。
プライベート・バンカーなら大丈夫ということでは無いのです。
サブプライムローン関連を提案された顧客が、大きな損失を被ったリーマンショック時期(海外ではリーマンとは言わず金融危機として紹介されています)。
既視感のある風景が、また発生しているのです。
サブプライム自動車ローンの破綻が発生
2007年以後の金融危機発生で銀行に対しては規制が強化されました。
銀行が引き受けなくなった、高いリスクの受け皿にプライベート・クレジット(プライベート・デット)があります。
高いリスクの商品ですが「富裕層が投資している」などのイメージ戦略で特に日本で販売されています。
信用度の低いサブプライム層に自動車ローンを貸付け、その受け皿として「プライベート・クレジット商品」として投資家に売りつける。
商品化している人々はこの商品の大きなリスクに気づいています。
しかし、商品化して投資家に販売して儲かれば、
組成者、販売者は儲かるのです。
損失を被るのは、これらの商品に投資をした投資家です。
サブプライムローンの時の構造と、何ら変わっていないのです。
2007年ころからの金融危機に何が起こったかを知らない投資家が、高い表面上のリターンに飛びつき、後で痛い思いをするかもしれないのです。
販売者がその商品を勧める理由は、自分たちが儲けたいからではないですか?
なぜ、低コストのETFを使わないのでしょうか?
米アドバイザーは、RIA登録をしている人のみ
アメリカでは資産運用の相談相手はアドバイザーです。
アメリカでは、RIA(登録投資助言者)以外はアドバイザーと名乗れないルールになっています。
商品販売をする人は「ブローカー」と呼ばれ、アドバイザーと明確に区別されているのです。
日本ではこのような区分けになっていないため、RIA登録のないIFAが
中立なアドバイザーを自称しています。
しかし、IFAの収益源は証券会社からのキックバックです。
IFAは証券会社の販売員、アメリカではブローカーという職業です。
日本のIFAはアメリカ基準ではアドバイザーとは名乗れない*のです。
* 注 ごくわずかではあるが、日本でIFAとRIAを実質兼業している事例はある RIA登録をしているIFAは米国基準でもアドバイザーである
セールスマンは自分に都合の悪いことは、わざわざ言わない
日本では「プライベート何とか」商品の販売にチカラを入れています。
プライベート・エクイティ、プライベート・クレジット、プライベート・デットなどなどです。
非上場ですから、情報開示に限界があります。
何に投資しているか、わからないモノになぜ、投資をするのでしょうか?
セールスマンが信頼できそうだから?
しかし、そのセールスマンが、プライベート商品の大きなリスクに気づいているのでしょうか?
「収益目標が暗黙で設定されているから、儲かる商品を売る」
販売者がその商品をセールスするのは、投資家のためなのでしょうか?
損失を被った後に、「どうしてくれるんだ」と怒っても、
担当者はとっくに転勤して担当者を外れているかもしれません。
「後は野となれ、山となれ」
こんなケースに遭遇しないように、投資家は気を付けた方がよいと心配してしまうのです。
※ 特定の会社に対する攻撃や悪意のアンチコラムなどではありません。
実際に発生している事柄を報道を引用しつつお伝えしました。
※ 特定の銘柄の分析や推奨などではありません。
本コラムは信頼できると判断された情報をもとに作成しておりますが、正確性、完全性を保証するものではありません。



