プライベートクレジットに投資する前に知っておくべきこと(2)その会社の格付を信用して大丈夫?
本記事は2025年6月18日に掲載された記事の再掲です。
プライベートクレジットの格付は信用できるのか?
『投資適格』のラベルが付いているという理由だけで、本当にそうだとは限らない」
ペンシルベニア州立大学のサミュエル・ボンサル教授(会計学)は格付け会社の研究者です。
「投資適格」とされていても、もともと低い信用力しかない借主へのローンであれば、その格付を信用すべきでないという事だと考えられます(筆者見解)。
プライベートクレジットの最大の格付け会社は、約20名で3000件の格付付与
金融業界の専門家の間で、疑念を抱く格付会社が存在しています。
プライベートクレジット向けに、3000件もの格付付与を行ったイーガン・ジョーンズ・レーティングスの社員は、わずか20人程度だったのです。
「プライベートクレジット分野で最大の格付け会社」と同社は自社を語っています。
公開市場の債券とは異なり、イーガン・ジョーンズなどが付与するプライベートクレジット格付けは、一般に広く公開されていない。格付け会社によって、評価が大きく異なることもある。
全米保険監督官協会(NAIC)が昨年発表し、その後すぐに撤回された報告書によれば、イーガン・ジョーンズのような小規模格付け会社によるプライベート投資格付けは、同協会の内部評価部門と比べて平均で3段階高かった。撤回から1年近く経過したが、この報告書は今も、業界に波紋を広げている。
(イーガン・ジョーンズ社は)プライベートクレジット投資を「比較的健全」とし、最上位の「AAA」でないにせよ、十分良好な「BBB」に該当すると繰り返し評価してきた。
『プライベートクレジット投資支えた格付けに疑念、3000件を20人で付与』 Bloomberg 2025/06/03
Silas Brown、Alexandre Rajbhandari、Laura Benitez
プライベートクレジットは非公開・非上場を意味します。
公開市場の債券とは異なります。
格付は投資家が投資判断をするひとつの材料となり得ます。
しかしその格付が、投資家にとって信用できないものであった場合はどうでしょうか?
格付を信用したことで、過度なリスクを取ったことにもなるのです。
格付会社は、投資家の安全のために格付けしているとは限らない
前述のイーガン・ジョーンズ社は格付けが速いと評判で、料金も割安だったようです。
また、保険会社は資本規制を回避して利益を上げるために、高い格付けを歓迎しています。
「B」格企業にプライベートクレジットを実行する場合に、950万ドルを積み増す必要がある。「BBB」格なら150万ドル で済む。(Bloomberg News調べ)
相対的に高い格付を付けると、喜ぶ保険会社が存在するのです。
そして、そのような買手向けに、わずか20名で3000件もの格付けを行った会社が存在しているのです。
格付け会社は、最終の投資家のために格付けを行っていないケースがあるのです。
格付け会社は、高い格付を喜んで、仕事を発注してくれる会社の方向を見ているケースがあるのです。
実際よりも高い格付は、最終的には投資家がそのリスクを負うことになります。
同社(注 イーガン・ジョーンズ社)はニューヨークの不動産投資家モシェ・シルバー氏の事業の一つ、クラウン・ホールディングスの債務に「BBB」格付けを付与した。しかし6週間後、クラウンはデフォルト(債務不履行)に陥り、シルバー氏と2人の関係者はその後、数年にわたる住宅ローン詐欺スキームで有罪を認めた。
大手はイーガン・ジョーンズ社を格付会社から除外
ブラックロックやカーライル・グループなど大手投資会社はここ数年、一部の資金調達で「条件を満たす格付け会社」のリストからイーガン・ジョーンズを明確に除外した。規制監督当局への提出書類で判明した。
事情に詳しい複数の関係者によれば、アポロ・グローバル・マネジメントも、保険事業が保有するプライベートクレジット資産の格付けにイーガン・ジョーンズを採用していない。
『プライベートクレジット投資支えた格付けに疑念、3000件を20人で付与』 Bloomberg 2025/06/03
Silas Brown、Alexandre Rajbhandari、Laura Benitez
販売者からは決して語られない、販売に不利な情報。
そんな販売者の言葉だけを信じると、投資家は気付いていないリスクに晒される場合があるのです。
販売者の情報を鵜呑みにせず、
透明性や流動性の高い資産クラスへの投資が王道
筆者の金融一筋キャリア36年の経験から、お伝えしたい王道はこれだと思っています。
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次回、その3は下記リンクより閲覧が可能です。
プライベートクレジットに投資する前に知っておくべきこと(3)損切り実施の動きも
https://mbp-japan.com/tokyo/ria-japan/column/5195827/
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