プライベートクレジットに投資する前に知っておくべきこと(1)サブプライム構造と同じか?

安東隆司

安東隆司

テーマ:あまり報道されないニュース

日本では【プライベート…】セールスが強力推進中

プライベート・クレジット、プライベート・エクイティ、
プライベート・不動産などなど、【プライベート…】に対して
日本ではセールスが強力に行われています。
しかし、これらのカテゴリーに投資をして本当に大丈夫なのでしょうか?

その前に重要な事柄で、多くの投資家に気付いてほしいポイントがあります。
あなたが資産運用のアドバイザーだと思って相談している人は、どんな人でしょうか?

日本で資産運用を相談している相手は、多くがセールス担当者です。
「商品を売り込む」ことが目的なのですから、
販売にマイナスになる情報は、積極的には開示しないでしょう。


そして、日本では多くの投資家が、
販売者の言葉を鵜呑みにして、高い手数料を支払い、
さほどリターンを得られないのではないでしょうか。


販売者に悪気は無いのかもしれません。
しかし、「オススメ」している商品が、自分の親に勧められるような
商品なのでしょうか?
筆者はそうは思いません。
仕事として、収益を上げるために、販売セールスを行うケースがほとんど
だと思うのです。
勤務先が販売をする会社であれば、永遠に販売商材を変えて販売をし続けるのでしょう。

新債券王が警鐘を鳴らしたプライベートクレジット

現在のプライベートクレジット市場は、2000年代半ばのCDO市場に似ている

大量に組成され市場がそれを歓迎して受け入れている

プライベートクレジットには過剰な投資が行われており、流動性は不十分だ

(流動性の高い債券市場と比べて価格変動が少ないとする点については、)市場価格を反映していないだけだ

(ローン債権のポートフォリオは)時価評価をしていないだけだということを誰もが知っている

(価格変動が少ないのが利点だという)主張には正当性がない

売却は大幅なディスカウント(値引き)価格で行われる恐れがある

Bloomberg:『「CDOと同じ」-ガンドラック氏、プライベートクレジットに警鐘』 2025/06/13 Lisa Abramowicz

筆者もガンドラック氏もプライベート市場商品を取り扱わないから、ホンネを語れる

筆者は以前から、顧客向けのメールマガジンでプライベート市場の問題点を指摘し続けてきました。
今般、「新債券王」と呼ばれたことのある、ジェフリー・ガンドラック氏の発言が筆者の意見と重なる点が多かったため、今回一般投資家の方々に紹介するものです。
ガンドラック氏はダブルライン・キャピタルの最高経営責任者(CEO)です。
筆者もガンドラック氏も、プライベート市場商品を取り扱わない立場だからこそ、ホンネを語ることができるのです。

サブプライムローン問題のCDOは何だったのか

2000年代には、サブプライム問題が金融危機(いわゆるリーマン・ショック)の引きがねとなりました。
ここでCDOとレバレッジについて語ると、これだけで本が一冊書ける内容ですので、要点だけを簡易に述べます。
「住宅ローンの借入するに信用が足りない、サブプライム層に住宅ローンを貸し出した。その貸し出した債権を証券化して、ローンのリスクを再評価したら、AAA格(シニア)という格付けが生まれた。
AAA格の商品などを一般投資家に販売した。
本質を理解しない投資家は、AAA格ということで安心して投資。
しかし相場の下落時には換金ができなくなり、経営危機に陥った金融機関が頻出。投資家はファンドが換金できない事態に陥った。」

サブプライム問題を深く掘り下げたい方は、以下の記事が参考になると思います。
『サブプライム問題の深化はレバレッジとCDO(債務担保証券)が主導』 ニッセイアセットマネジメント 金融市場NOW 2007年08月31日号

CDOに格付けをすると、もともとB格の融資先なのに、その中からAAA格が産まれる、というのがCDO、金融工学のチカラです。

ドロ水を汲んできて、「上澄みはキレイな水だから大丈夫。どうぞ飲んでください」
という例えがピンと、き易いかもしれません。

私自身は、もともとドロ水であったのであれば、進んで飲む気はしません(ここでは日本の最先端の浄水化技術については無視してください)

プライベートクレジットは、まさに銀行が融資しない先に対して、ファンドが融資を行い、それを投資家に販売しているものです(筆者理解ベース)。

ガンドラック氏は プライベートクレジットはサブプライム問題を引き起こしたCDO市場に似ていると発言しました。

名前を変更して大ヒットした事例も

プライベートクレジットはサブプライムローンを言い換えただけなのかもしれません(筆者私見)。
過去にも呼び方を変えて大ヒットした商品があります。

「ジャンク債」 投資不適格の債券を業界関係者はこう、呼びました。
しかし、ほとぼりの冷めた頃、「ハイ・イールド債」という名前が生まれてきました。
ハイ・イールドとは、「高い利回り」という意味です。
しかし投資対象は投資不適格のジャンク債そのものでした。
何となく、先進的なネーミングに釣られた投資家は実質ジャンク債であることを理解していたのでしょうか?
今回のプライベートクレジットも「サブプライムローンCDO」の言い換えと言えないでしょうか?

ガンドラック氏の言いたいことを筆者見解で解釈してみます。
プライベートクレジット商品が大量に作られて、投資家が有難がって買っている。
価格変動が少ない、というセールストークは、ローン債権の評価を時価評価していない。買った時の簿価のまま据え置かれている。変動しないのは当たり前で、価格変動が少ないのは利点でも何でもない。
そして、ブームになっているため、価格下落時には、換金しようと思っても、大きな損をしないと換金できないよ という内容だと思われます(筆者見解)。

販売者からは決して語られない、販売に不利な情報。
そんな販売者の言葉だけを信じると、投資家は気付いていないリスクに晒される場合があるのです。

販売者の情報を鵜呑みにせず、
透明性や流動性の高い資産クラスへの投資が王道

筆者の金融一筋キャリア36年の経験から、お伝えしたい王道はこれだと思っています。

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券その他の投資商品についての勧誘や、売買の推奨を目的としたものではありません。
本記事は信頼できると判断された情報等を基に作成しておりますが、正確性、完全性を保証するものではありません。

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安東隆司
専門家

安東隆司(投資顧問)

おカネ学株式会社 Reliable Investment Advisors Japan Co.,Ltd(英文名称 略称 RIA JAPAN)

富裕層の資産の管理や運用、承継などを行う。売買手数料0などお客様と利益相反の少ないサービスを追求。また、海外ETFを中心とした資産形成の知識・経験が豊富。テーラーメードの投資助言を大切にしている。

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