iDeCoのお得な受け取り方、2025年限定で60歳以上、5年以上あけて退職金受取り予定者向け

安東隆司

安東隆司

テーマ:iDeCo+NISA・つみたてNISA

iDeCoを一時金で受け取る場合の控除が縮小される方向です。
1)2025年に60歳以上の方
2)iDeCo(個人型確定拠出年金)の受取りを考えている方
3)65歳以後に退職金の受取りが可能な方
という、とても狭い範囲の対象者が当てはまる、知ってトクするおカネ学の記事です。
残念ながら、ほとんどの方には当てはまらない内容かと思います。
なお、税務の詳細は専門家にご確認ください。

iDeCoの受取りでトクする方法とは?

「60歳でiDeCoの一時金を受け取り、66歳*で退職金を受け取ると両方で退職所得控除が使える」(*注2 65歳と66歳は後述します)
2017年、2020年の筆者のiDeCo著書で紹介した内容です。
(2022年の著書にはこの内容は含まれていません)

何がどう変わるのか?iDeCoの控除縮小

iDeCoの一時金受取りの控除が縮小方向です。
iDeCoを先に受取り、5年以上あけて退職金を受け取ると、
「退職所得控除」が両方で使えるというものです。

出所:安東隆司 『iDeCo+NISA・つみたてNISA プロの運用教えてあげる! 』 P74 秀和システム 2020年
*注1 退職金を先に受取りの過去15年以内は、20年以内に2022年4月から改正済み

図Bの事例がトクする事例です。
60歳でiDeCoを一時金(一括)で受取ると控除が使えます。
そして66歳*で会社の退職金を受け取ると、66歳時の退職所得控除はフルに利用できる、というものです。
これが何がスゴイのでしょうか?

図Aの事例では会社の退職金を60歳で先に受け取る場合です。
その後66歳でiDeCoを受け取ると、退職所得控除がフルに使えず、過去20年(注1)に受け取った退職金を重複扱いとするのです。
過去受取りの退職金が影響し、退職所得控除額が減額調整されるというものです。
退職金の受け取り方で、トクする場合とそうでない場合が存在するのです。
iDeCoを60歳で先に受取り、*66歳で退職金を受け取ると得をする。
*注2 厳密には、65歳での受け取りでも両方使える場合もあろうと思います。
しかし、制度をきちんと理解せずに5年をきちんと確保しないと、トクできない場合は残念です。必ず5年間をあけることを理解してもらいたいと思い、保守的に66歳と表現しているものです。

とっても有利な退職所得の課税方法

政府は老後の国民生活のことを考え、退職時の課税については様々な有利な制度、ルールを定めています。
退職金関連の税制で何が有利かというと

1,勤続30年なら1500万円が控除(退職所得控除)
2,控除を超えた部分は50%オフ(1/2だけが所得税に)
3,他の税率テーブルとは合算せず、単独で税率計算(分離課税)

という事柄です。

退職所得控除はいくら使える

勤続年数に応じて、退職所得控除額が増加していきます。
20年超であれば、70万円/年で、それ以前の40万円から増加します。

上下の図 出所:安東隆司 『NISA・つみたてNISA・iDeCo プロの選び方教えてあげる!』 P44-45 2022年

控除後は50%オフ!

図は2500万円を退職金で受け取った事例です。
1)勤続30年で、1500万円の控除が使えます。
2)控除を引いた後の1000万円は50%オフで「500万円」計算
3)「500万円」の所得税率20%の適用ができる
 (他の所得と合算した税率でなく、単独で低い税率適用できる場合がある)
退職金制度は有利な制度なので、将来退職金で受け取れる原資を作ることが重要です。
手厚い退職金が見込めない人はiDeCoや小規模企業共済などを活用して原資を作りましょう!

大企業等で高額な退職金見込みの方は先にiDeCo受取りも

大企業等で高額な退職金を受け取る可能性がある方は、iDeCoの今回一時金受取りを検討してみても良いでしょう。
いわゆる会社の退職金、iDeCoの一時受取金、小規模企業共済の受取り金は全て、退職所得等に該当します。
そもそも、退職金だけで「退職所得控除」の上限を超える場合では、iDeCoも同時受取り等では 1)の退職所得控除メリットはありません。
すると2)1/2計上と、3)分離課税を前提にした場合と、 後述する4)今後の掛金控除の合計メリットと、
今回の一括受取りの退職金控除との比較となります。


会社の退職金を多額に受け取れる人で、
60歳以後の給与が現役時代と比べ、減額されるケースなどは

現状のiDeCo一時金が退職所得控除で利用できる制度に、
駆け込んで利用した方が有利とも考えられます。

iDeCoは現役時代に優遇し、将来に備える制度

iDeCo等を活用すると、

現役時代の所得税が高い時期に、iDeCo等の控除を利用することで、
将来老後で所得税が低い時期に税金を繰り延べる ことができる

という制度です。
受け取る時にも控除がありますが、それを超える場合は税金がかかります。
ただし、運用期間中は運用益非課税というメリットがあります。

制度改悪ではなく、公平にする制度改革

今回の精度改正案を改悪という論評がみられるようです。
しかし
・長く働く、定年延長社会への変化に順応
・一部の限られた人しか使えない、退職所得控除がとってもお得だった制度を公平に修正する
という内容の改正案である、と筆者は思っています。
なお、今回の改正案では
iDeCoを受け取った年を含めて、10年以内に退職金受給すると、
控除のフル活用はできない、という内容です。

iDeCoを先に受給し、10年間あけて退職金を受け取れば、
2026年以後も退職金のフル活用(重複減額回避)は可能

となる見込みです。

資産形成を重視するならば、iDeCoを使い続ける選択肢も

今回の対象に合致し、60歳でiDeCoを先に一時金で受け取る方は、税金メリットを十分に得ることができるでしょう。
一方で、まだ働き続ける人の場合は、iDeCoの掛金を65歳まで使い続ける選択肢もあります。

iDeCoは現状65歳まで拠出可能。70歳延長も検討中

退職金税制でのメリットを優先し、60歳でiDeCoの受取りを実施すると、65歳までのiDeCoの掛金控除のメリットは放棄する形となります。

4) iDeCo掛金金額拠出可能額
企業年金DCとiDeCo 上限2.0万円 5年合計120万円 
企業年金なし     上限2.3万円 5年合計138万円 
個人事業主等     上限6.8万円 5年合計408万円

これだけの金額が運用期間中は非課税で運用ができます。
また、掛金が全額所得控除となり、所得に応じた税率で税金のメリットも受けることができます。

更に厚生労働省では70歳までiDeCoの掛金延長も検討しています。
人生100年時代に備えるためには、長く勤めて受給する側から、納付する側へシフトを促したいとの背景があるのでしょう。

iDeCoの大幅拡充案

令和7年(2025年)の税制改正大綱では以下が提案されています。
企業年金DCとiDeCo 上限5.5万円→6.2万円
企業年金なし    上限2.3万円→6.2万円
個人事業主等    上限6.8万円→7.5万円

政府が国民の老後に備えるための制度は、その時々の状況に応じて変化をしています。
制度を正しく理解して、自分にとって有利な方法を選ぶことが重要だと思います。

* 本記事は信頼できると判断された情報等を基に作成しておりますが、正確性、完全性を保証するものではありません。
* 正確な税務計算は税理士等専門家にお尋ねください。

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安東隆司
専門家

安東隆司(投資顧問)

おカネ学株式会社 Reliable Investment Advisors Japan Co.,Ltd(英文名称 略称 RIA JAPAN)

富裕層の資産の管理や運用、承継などを行う。売買手数料0などお客様と利益相反の少ないサービスを追求。また、海外ETFを中心とした資産形成の知識・経験が豊富。テーラーメードの投資助言を大切にしている。

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