業界人は不都合な真実を語らない。プライベートエクイティで9億ドル損失か?
野村証券の若手社員が高齢者の顧客に睡眠薬を飲ませ昏睡状態にし、現金1787万円を盗んで、更に放火した事件が起こりました。
強盗・殺人未遂、住宅放火という重大な過ちを、日本最大手の証券会社の社員が起こしたことは、日本の金融業界の職業倫理の変化を感じさせる出来事でした。
なぜ、このような事件が起こったのか、筆者なりの考察を述べたいと思います。
まず報道されている内容を引用紹介します。
いくら盗んだ?強盗殺人未遂、住宅放火はどんな事件だったのか?
大手証券会社・野村証券の元社員が広島市の顧客の女性に睡眠作用のある薬物を飲ませたうえ、現金を奪って住宅に火をつけたとして強盗殺人未遂と放火の罪で先月、起訴された・・・
2024/12/13 NHK 広島 NEWS WEB 『野村証券元社員の強盗殺人未遂事件 被害女性「裏切られ衝撃」』
起訴されたのは、神奈川県葉山町の無職、梶原優星被告(29)です。
2024/11/20 NHK NEWS WEB 『野村証券 元社員を起訴 顧客への強盗殺人未遂と住宅放火の罪』
起訴状によると、7月28日午後5時35分~7時45分ごろ、夫婦宅で妻に睡眠作用のある薬物を服用させて昏睡状態にした上、2階寝室の押し入れにあった現金約1787万円を盗み、放火して殺害しようとしたとしている。夫婦は逃げて無事だった。広島県警は約2600万円を奪った疑いで逮捕していた。
2024/11/20 産経新聞 『憤る被害者「眠れない夜が続く」 野村証券元社員の強盗殺人未遂事件』
為替投機の穴埋め目的か?
動機のひとつとして為替投機の穴埋めのために、顧客から現金を盗み、その証拠隠滅のためにお客様の自宅に放火をした、と推察されます。
為替の投機取引はどんな内容だったのでしょうか?
元社員の場合、為替相場の変動を予想し投資する「バイナリーオプション」取引で生じた自身の損失を穴埋めするために現金を奪ったとされる。
2024/12/21 日経新聞 『野村元社員の強殺未遂、若手「お願い営業」脱却の矢先に』
バイナリーオプションとは?
バイナリーオプション取引とは、あらかじめ決められた時点の騰落を予測し、ある値よりも高いか低いか、二者択一で選ぶ取引です。
取引の簡明さと比べ、仕組み自体は複雑で、投資元本を失う恐れがあり、期待する投資成果を得るためには、知識や経験が必要なリスクの高い取引です。
金融庁 『バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!』
為替の動向を予想する、リスクの高い取引で失敗し損失を埋めるためにお客様のお金を盗んだというわけです。
証券会社の社員は証券投資を行わない
「投資のプロにお任せください」 このようなセールス・トークをCMなどで見かけます。
実は、
証券会社の社員は株式などの証券投資を行っていない、
と聞くと驚きませんか?
証券会社の社員は、顧客に先回りをして自分で証券投資をしていないことを明らかにする必要があります。
予め自分で買っておいて、その後に顧客の多額の注文で価格が上昇すれば、先回りして社員がトクしていまいます。
李下に冠を正さず 証券取引をしない社員がほとんど
このような「フロント・ランニング」取引を証券会社の社員は行ってはならないのです。
お客様の取引内容に先んじた取引でないことや、インサイダー取引でないことを明らかにすることは、とても大変なのです。
すると、証券会社の社員は、自分では株式取引を行わない選択することが多いのです。
株式取引自体を行わなければ、疑われることが無いため、会社は社員には株式取引を勧めない立場であるとも換言できます。
お客様の資産運用の成功を自分の実力と勘違い?
お客様の証券投資はここ数年好調で、「儲かった」状況が発生してもおかしくありません。
米S&P500指数は年初来で26.6%(2024/12/26朝時点)も上昇しているのです。
一方、自分自身は証券投資を行っておらず、マーケットの上昇の恩恵を受けていない。
為替取引は証券会社で禁止されていない?
上場株式では、インサイダーの問題やフロントランニングの問題があり、社員が自分自身で手掛けにくい。
一方、為替取引は会社で禁止されていなければ、
「証券投資できないならば為替取引で儲けてやろう」
と考える社員がいてもおかしくありません。
そして、顧客の資産運用が良好な理由を、「自分の運用センスのおかげ」と勘違いする証券パーソンもいるのではないでしょうか?
プロである自分の判断で、取引すれば儲かるに決まっている
このようなおごった気持ちと、浅はかなリスク判断が今回の事件の動機とも考えられそうです。
29歳の若手の社員は、ベテランとは異なり金融危機に対する経験も不十分だった可能性があります。
リスク管理能力を見誤った結果、自身の投機で損失が出たとも考えられます。
自分の運用センスを過信した、おごった気持ち、取引のリスクを軽視したおごった判断基準が、自らの運用失敗をもたらし、お客様のお金を奪って証拠隠滅で放火するような、考えられない残虐な事件を起こしたと言えないでしょうか?
大手の金融機関だから信頼できる--。
こう、考えてはいけない時代に差し掛かってきたのかも知れません。
金融パーソンの職業意識の低下が残念でなりません。
組織の在り方として、不祥事が起こらないような会社の理念作成と社員への伝承
自らを律する、不祥事防止のための検査体制が必要なのではないでしょうか?
本記事は信頼できると判断された情報等を基に作成しておりますが、正確性、完全性を保証するものではありません。