業界人は不都合な真実を語らない。プライベートエクイティで9億ドル損失か?

安東隆司

安東隆司

テーマ:あまり報道されないニュース

プライベート・エクイティ(PE、未公開株)で9億ドルの損失発生。

ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)の
「PEファンドが9億ドルの損失計上の見込み」

と英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が2024/11/23、投資家宛て書簡を引用して報じました。
事実なのですが、そのようには日本では報道されていません。

「・・・ファンドが9億ドル損失か・・・」
という見出しで、プライベート・エクイティの損失とは見出しに明記が無いのです。

日本では【プライベート…】セールスが強力推進中

日本では、プライベート・エクイティやプライベート・クレジット、
プライベート・不動産などなど、【プライベート…】に対して
セールスが強力に行われています。

某新聞でも「【プライベート…】は、とても富裕層に人気がある」といった
内容の文章が見受けられます。
しかし、筆者はこの内容に対して違和感を感じています。

オルタナティブに多くを配分するポートフォリオは多いのか?

筆者は15年以上、プライベート・バンク業界に身を置きました。日経メガバンク、米系証券、欧州系信託銀行でそれぞれプライベート・バンカーを務めました。
オルタナティブ投資に対して、確かに富裕層の一部は投資を行っているでしょう。
しかし、それは割合としてはとても少ない場合が多く見られました。


今回の【プライベート…】が人気がある、という記述は、
セールスをしたい企業側のプレスリリースをそのまま引用しているのでは?
と感じてしまうのです。

あたかも、それが主流のようなセールス話法が予想される

2023年、日本のある大学関連ファンドがオルタナティブの割合を半分以上に引き上げました。
この記事事例を紹介し、【プライベート…】セールス担当が
「基金や企業も積極的にオルタナティブ投資に取り組むべき」
と提案を行うのでしょう。

サブプライムの歴史を振り返る

サブプライム関連の商品が、当時は強力にセールスされました。
しかし、格付けの低い債務者をいくら束ねた所で、そこからAAA格が産まれる というのは、
錬金術的な手法だったと言えるでしょう。
貸出を行った金融機関は、証券化商品として販売し、
自らは貸し倒れリスクから解放されたのです。
しかも高い販売手数料を上乗せして。


【プライベート…】の評価額は正しいのでしょうか?
AIJ投資詐欺では、ファンドの価格は業者の言った価格で、
信託銀行ですら、その価格の妥当性に気づけませんでした。
そして、年金財産の9割が失われた基金も発生したのです。

非上場をそれほど有難がる理由はあるのか?

【プライベート…】への投資は、上手く行けば高いリターンのケースもあるのでしょう。
しかし非上場分野への投資は、リスクと裏返しです。
非上場であるがため、上場企業よりも情報開示が不十分であると推察されます。
そして、サブプライム問題が発生した時には
ヘッジファンドや仕組み商品などは
換金できず9割損失なども相次いだのです。
当時、換金できたのは上場株式やETF(上場投資信託)など限られた資産でした。

飲み屋で語られるホンネ、お客様をカモ扱い

過去、プロの販売者にみられた残念な傾向が以下です。
「自分自身はこんな投資はしないけれど、これで儲かるから導入提案しよう。
どうせ、相手は対してリスクをわかっていないし。」


最近では、トルコリラの仕組み債などの大きな損失で、
投資家からの苦情が相次ぎ、販売者側の安易な姿勢や、
「やったもの勝ち」がクローズアップされています。
過去と現在で、それほど変わらずに販売者を鵜呑みにして後悔する人は現存しています。

大学や基金などでオルタナティブ運用を行っている人々は、自分自身としても
オルタナティブ投資に半分以上のような投資を行っているのでしょうか?
仮にそのようであったとしても、それは少数派なのではないでしょうか?

販売者の情報を鵜呑みにせず、
透明性や流動性の高い資産クラスへの投資が王道

であると、筆者は35年金融一筋の経験からお伝えたいのです。

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券その他の投資商品についての勧誘や、売買の推奨を目的としたものではありません。
本記事は信頼できると判断された情報等を基に作成しておりますが、正確性、完全性を保証するものではありません。

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安東隆司
専門家

安東隆司(投資顧問)

おカネ学株式会社 Reliable Investment Advisors Japan Co.,Ltd(英文名称 略称 RIA JAPAN)

富裕層の資産の管理や運用、承継などを行う。売買手数料0などお客様と利益相反の少ないサービスを追求。また、海外ETFを中心とした資産形成の知識・経験が豊富。テーラーメードの投資助言を大切にしている。

安東隆司プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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