プロでもマイナス9兆円。GPIF 2024/7-9月、でも過度に心配する必要がない理由は?

安東隆司

安東隆司

テーマ:所長解説のおカネ学♫

「GPIFの運用結果がマイナス9兆円だった」
こう聞くと「資産運用なんて止めた方がイイ」と考える人もいるでしょう。
GPIFというのは、公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」のことです。
2024年7~9月期の運用成績は、9兆1277億円のマイナスでした。
2024/11/01に速報データが公表されました。

図1 出所:GPIF 『2024年度第2四半期運用状況(速報) 』

まず、9兆円のマイナス(▼)と聞くとビックリしてしまうと思います。
しかし、収益率としては▼3.57%です。
ちなみに1Q(第1四半期)の収益率は+3.65%でした。
資産運用をしている期間に、プラスになったり、
マイナスになったりすることはよくあることなのです。

相場全体が悪い時には、プロでもマイナスリターンとなるのは普通

GPIFの運用体制が悪かったのでしょうか?
筆者は全くそうは思いません。
この期間は運用の環境が良くない期間だったのです。

図2 出所:GPIF 『2024年度第2四半期運用状況(速報) 』

2024年2Q(7-9月)はベンチマーク収益率で、
外国債券▼5.47%
国内株式▼4.90%
外国株式▼5.07%
と、大きく4分類の資産クラスのうち3カテゴリーがマイナスでした。
相場が悪い時に、運用のプロだったらプラス運用ができるのでしょうか?
「たまに勝てる場合があっても、常に相場に勝ち続けることは難しい」
これが筆者の見解です。
すなわち、相場が悪い時には運用も悪くなるのが普通なのです。

2024年2Qの運用実績は、運用収益額は▼9兆1277億円、収益率▼3.57%という成績でした。

どのカテゴリーが収益に寄与したのか?

2Qだけならば収益に寄与したのは国内債券です。(図1参照)

2024/07-09月、収益率の寄与はどのカテゴリー?

国内債券 +1.42%
外国債券 ▼5.51%
国内株式 ▼4.92%
外国株式 ▼5.35%
全体   ▼3.57%
でした。しかし2024/04-09月の6カ月では風景が変わります。

2024/04-09月、6カ月の収益率の寄与はどのカテゴリー?

国内債券 ▼1.01%
外国債券 ▼0.32%
国内株式 ▼3.25%
外国株式 +4.08%
全体   ▼0.05%
過去のデータでも、実は収益に寄与するカテゴリーは外国株式である場合が多くあります。

しかし、2007-2008年頃の金融危機(いわゆるリーマン・ショック)の時などは、このカテゴリーのマイナスは極めて大きかったのも事実です。

GPIFは4つのカテゴリーにほぼ均等に分散しています。
株式だけでなく債券カテゴリーに約50%を分散投資しています。
(2024/11/02時点 GPIF最新データ2024年9月基本ポートフォリオより)

株式100%に投資するよりも、収益性が低くなることが、
4資産分散では多く見られます。
しかし、株式市場が不調の時には、インカム戦略(分配金や配当の入金)を併用した資産配分には安定感があるのです。

GPIFの累積収益額は153兆6431億円

今回の四半期決算では▼9兆円でした。
しかし、2001年度からのGPIFの累積のリターンは
153兆6431億円
なのです。
9兆円という数字はビックリしますが、比率は▼3.57%でした。
しかしGPIFは過去23年余り年率で4.26%という成績を残しているのです。
ただし、4.26%は現在の水準で、過去は累積3%台だった時期がありました。

時間を味方にした資産運用で、3-4%以上の実績を残しているのです。

「マイナス9兆円! 大変だ」と過度に心配せず、
長期で資産運用で成功している実績があることも知っておいてほしいのです。

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安東隆司
専門家

安東隆司(投資顧問)

おカネ学株式会社 Reliable Investment Advisors Japan Co.,Ltd(英文名称 略称 RIA JAPAN)

富裕層の資産の管理や運用、承継などを行う。売買手数料0などお客様と利益相反の少ないサービスを追求。また、海外ETFを中心とした資産形成の知識・経験が豊富。テーラーメードの投資助言を大切にしている。

安東隆司プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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