世界ETF本数、11,247本に増加。資産規模は約2,043兆円に。2024年は過去最高の1,426本が新規上場。17年で資産規模約24.72倍に拡大
「ご内密にお願いします」
銀行などが優越的地位の乱用を行わないように、銀行と証券では顧客の情報を共有できないように「ファイアウォール」が設けられている、ハズでした。
しかし、三菱UFJグループではこれが軽視されており、行政処分される見込みと報道されています。
証券取引等監視委員会は、三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社に勧告する検討に入った模様です。
勧告されれば、金融庁は6月中にも業務改善命令などの行政処分を検討する。
出所:日本経済新聞 2024/06/07 AM1:10 「監視委、三菱UFJ銀など処分勧告へ 顧客情報を無断共有」
銀行がグループ証券との取引を条件に貸出金利の優遇をほのめかすなど法令に違反する行為が複数見つかったようだ。
出所:同上
グループの取引を活発にするため、「融資の金利下げるから、証券と取引してよ」といった内容をほのめかしたということだと推察されます。
これだけ見ると、顧客に不利とも言えない印象かもしれません。
しかしこれは、パワハラまがい、とも考えられるのです。
証券と取引しなかったら、融資金利の引き上げや、融資取引の減額や借り換えに応じない、といった「優越的地位の乱用」にもつながりかねない事案ではないでしょうか?
奇しくも、このニュースが出る直前の2024/06/05に、外資系での情報管理が厳格に行われていた事例を筆者はETFコンファレンスで語ったばかりでした。
日系メガバンクから、米系の証券に出向した時の出来事です。
転勤の挨拶状ハガキを出そうと、印刷屋さんから文面原稿をFAXで送った時の出来事です。
FAXを監視する役割の人がおり、挨拶状は元の勤務先の顧客情報の漏洩だと指摘されたのです。
2005年の出来事で、アメリカ系のPBでは19年前にハイレベルな顧客管理、コンプライアンス態勢が厳格だったのです。
寿司屋の仕入れ先情報の漏洩で裁判になっている日本。
しかし19年も前に、アメリカ系のプライベート・バンキングを行う金融機関では厳格な情報管理が成されていたのです。
ヨーロッパ系のPBでは顧客情報を厳格に守っていました。
お客様の名前が社内であってもほぼ、出ない。
電話取次ぎですらイニシャルで行っており、有名人や著名人の情報が漏れない体制でした
囲み部分の出所:安東隆司 2024/06/05 「理想のウェルスアドバイザーとは」S&P主催 ETFコンファレンス パネルディスカッション『個人投資家にとって理想のウェルスアドバイザーとは』
メガバンク卒業者として、今回の事案はとても残念です。
金融パーソンとして、当たり前、常識である、顧客情報の管理に問題があったのでしょう。
法令を軽視する従業員の存在は残念です。
しかし往々にして営業成績の良い営業員などに、管理部門がクギを指すのは大変なのです。
収益優先の風潮で、結果的に研修体制の軽視となっていなかったのか、今一度体制見直しがメガバンクには必要でしょう。
<参考資料>
安東隆司 2024/06/05 「理想のウェルスアドバイザーとは」
「理想のウェルスアドバイザーとは」
S&P主催 ETFコンファレンス パネルディスカッション『個人投資家にとって理想のウェルスアドバイザーとは』
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筆者が 『プライベートバンカーが職場で顧客名を「イニシャル」で呼ぶ理由』を2018年5月8日に投稿しています。
その中から一部をご紹介したいと思います。
■顧客情報が語られない、プライベート・バンクの「フルフラット的組織」とは?
筆者が過去在籍した日本の金融機関では定例的に営業の会議が行われ、営業員ごとに売上見込みの確度とともに顧客の資産状況等が会議の参加者に共有されていました。役職者の仕事は部下のマネジメント、計数管理が職務とされているから仕方ないでしょう。
一方、プライベート・バンキングを展開している組織の中には、フルフラット的な組織を展開しているケースもあります。マネジメント階層は組織図上では上司ということになりますが、実質はバンカーが働きやすい職場運営を追求します。そして顧客想いのバンカーは、自らの顧客の名前が公に語られることを嫌います。
見込み先の計数管理は営業が複数出席する「営業会議」形式ではなく、「マンツーマン」で行われます。自分の顧客情報が語られることを嫌悪するプライベート・バンカーにマネジメントが配慮をしているのです。
バンカーも職務として「マネジメント階層」を選択せず、顧客とのリレーションの継続のために「バンカー」としての職務にこだわるケースも多いのです。バンカーがマネジメント層と同様の重要な扱いを受ける理由がここにあります。
■著名人ほど個人情報の管理体制を重要視する
ある芸能人が賃貸マンションを探すにあたり、「このマンションには芸能人は住んでいますか」と聞くといいます。その不動産業者が誇らしげに「○○さんが住んでいます」という発言をした場合には、その業者とは取引をしないということです。
その理由は、自分がそのマンションに住んだ時にはその業者が「私が芸能人○○にこの物件を紹介して、今住んでいる」という営業トークに使われてしまうためです。芸能人や著名人の顧客情報を使って営業トークを用いる者には、あなたの情報も営業トークに使われると考えた方が無難でしょう。
「有名人」「著名人」の情報を明かすような行為を本当のプライベート・バンカーや、金融の執事は行わないと筆者は考えています。文章やSNSでそれとわかるような表現はしません。
■隣の担当者が誰を担当しているか明かさない守秘義務、イニシャルも使用
欧州系のプライベート・バンキングに勤務していた時に、隣のバンカーが担当している顧客の名前をフルネームで語ることはありませんでした。同僚と親しくなったとしても、夜の宴席でもお互いに顧客の名前を語ることはありませんでした。
ある時に日系企業から転職してきた「営業員」が顧客名を誇らしく語り、「○○が客で」との話題がのぼったことがありました。お客様を「客」と呼ぶ姿勢にも違和感を覚えましたが、情報管理の重要性に気付いていない営業員だとの印象を持ちました。
筆者が以前、欧州系のプライベート・バンクに勤務していた時には著名人、有名人の顧客からの電話を取次ぐ際には、名字では無くイニシャルで取り次ぎをするルールをアシスタントやパートナーと共有していました。真のプライベート・バンカー、金融執事であろうとする者は顧客情報にも細心の注意を払っています。