「元本確保型」なのに「元本割れ」って、どういうこと? 投資初心者が知らなかった資産運用
(RIA JAPAN広報部記述)
このシリーズは、3年以上RIA JAPANのコラムを読んだ投資初心者に依頼して、「なるほど!と感じたポイント」や「投資を始める前に知っておきたい!」と感じた内容について執筆いただきます。
投資初心者さんの執筆記事は第130回目になります。
今回は仕組み債について執筆いただきました。
誤解が無いように一部表現を校正した箇所があります(*)は編集部校正。
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「債券」といえば、安定で安心と思いません?
実際には、複雑なデリバティブが組み込まれているものがあります。
これらは「債券」とはいえ、とても初心者向けではありません。
「仕組み債」という仕組みにポイントがあります。
仕組み債は債券だから安心?仕組み債と通常の「債券」は別物!
仕組み債とはなんでしょうか。
債券に株価や為替のオプション・スワップなどを組み入れたものです。
中には、高い利回りが期待できるとセールスしている場合もあります。
通常の債券とは全く別物です。
デリバティブ取引等の仕組みを組み込んでいるからですが、また分かりにくいですよね。
金融派生商品と呼ばれる先物取引やオプション取引、スワップ取引などの総称のことなんです。
問題はここで、デリバティブ取引の中には、極めてリスクの高いものが出てきます。
安定で安心なんて言葉とはかけ離れていくわけです。
金融庁のレポートでもありますが、債券と名が付いても、30%以上の損失*が生まれるケースも報告されています。
これでは、なにが安定で安心なのかということになるでしょう。
(*EB債事例で8割損失の事例も紹介されている。2022年5月27日 金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート」)
実態コストが年率8%-10%とのデータも
金融庁公表のデータを紐解くと、仕組み債(EB債)の運用にかかる実質コストは、投資元本に対して約8~10%になるとも考えられます。
推定のコストは5~6%なのですが、運用期間が7か月程度と短く(*0.6年=約7.2か月)、1年で2回以上実質的なコストの支払う場合があるからです。
これを年換算すると10%近くにもなると考えられます。
(*参考 2022年5月27日 金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート」)
これだけのコストの説明を販売者がしているでしょうか。
販売者側にとってセールスに有利な情報は伝えてくれますよね。
販売者自分に利益があるからです。
でも、不都合なことはできるだけ「ぼやかして」しまいがち。
販売者に不利益となるような流れは作りたくないのが当然だからです。
(注* 日本では運用にかかるコスト開示が進んでいません。このような高いコストがかかることを、販売者はあえて説明しないのです)
投資家にとってはリスクにつながるコストを支払わなければいけません。
当然、トラブルになるケースも出てくるのです。
FINMAC紛争件数の約41.33%が仕組み債によるもの
「債券は低リスク」とのイメージを持つ人は多くいるでしょう。
デリバティブ取引を含む仕組債はリスクが高いものもあり、仕組みが複雑なケースが出てきます。
さらに種類が多いことから、決して初心者向けとはいえない場合も多いのです。
金融商品取引に関するトラブルを解決する機関にFINMACがあります。
ここから公表されている2020年・2021年の紛争あっせん件数を半期ずつ集計しました。
全体の約41.33%が仕組債に関わるものだったことが判明しました(*RIA JAPAN調べ)。
仕組み債の販売で業務改善命令が出た事例も
2023年6月には金融庁から業務改善命令が出た事例もありました。
高いリスクをとってまでリターンを狙う意志が無い人や、投資経験のない人にまで仕組み債を販売していたことが問題視されています。
仕組み債は「高い格付がついている」とセールスされることもあるようです。
しかし、格付の範囲は債券のみに限定されていて、デリバティブズは格付の範囲ではありません。
そうなると、デリバティブズのリスクは格付には含まれていないことになるのです。
販売者は知らずに販売しているかもしれません。
(注* 販売者は運用のプロでなく、自分でリスクを十分に理解していない販売者も実態として多い)
場合によってはセールスのため利益優先で販売しているかもしれないのです。
さらに相場下落のリスクをどれだけ把握しているでしょうか。
仕組み債の運用でのリスクを理解していたでしょうか。
販売者の発言には、必ず背景が存在するのを忘れてはいけません。
鵜呑みにするとこのような怖いことも出てくるため、知識を持って内容を理解していく必要があるでしょう。
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(以下、編集後記)
今回、投資初心者さんには、仕組み債について執筆いただきました。
RIA JAPANではこのトピックについて特に2020年以降、多くのコンテンツにて発信してきました。
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・「投資家・顧客ファースト実現に向けて」を東京国際金融機構で提言
RIA JAPANは2020年8月に仕組み債のコスト開示を提言しました。
「投資家・顧客ファースト実現に向けて」という内容を東京国際金融機構(FinCity.Tokyo)のワーキンググループで提言した内容に含まれています。
約3年9カ月を経て、問題の大きさが浮き彫りになっています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000060456.html
※2023年3月末を以て新興企業会員の期間満了に伴い、東京国際金融機構(FinCity.Tokyo)を退会しました。
・日経CNBC 朝エクスプレス マーケット・レーダー
有料経済チャンネル 日経CNBCにて解説しました。アーカイブが無料にて90秒閲覧可能です。全編は日経チャンネルマーケッツ契約者のみ閲覧可能です。[/太字]
「セールスを信じたらどうなった?これから投資商品を選ぶ基礎知識」 (10:15付近より)
「個人投資家にとって”アドバイザー”の役割とは?」 (6:55付近より)
・マイベストプロコラム掲載
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・YouTubeチャンネル「所長解説のおカネ学」
繰り返しになりますが、本記事はRIA JAPANが、投資初心者に弊社発信のコラムで、「なるほど!と感じたポイント」や「投資を始める前に知っておきたい!」と感じた内容について記述してもらったものです(第130回目)。
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