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金融庁が「企業型DC」の商品ラインナップに遂にメスを入れるようになるかもしれません。
(前略)…新たな施策として企業型確定拠出年金(企業型DC)の運営管理を担う「運営管理機関」のモニタリングに乗り出す。(中略)運営管理機関に対するモニタリングでも、加入者の最善の利益を損なう不誠実な業務運営があぶり出される可能性がある。
企業型DCをめぐっては、資産運用業の改革で論点となってきた課題が今なお散見される。商品選定でも加入者の利益を損なうような実態が一部で見られる。その1つが、投資信託の保有中にかかるコストの高さだ。(中略)
信託報酬は、一般に販売されている公募投信だと価格競争が進んだことで最低水準が0.05%台にまで下がっている。一方、昨年12月に企業年金連合会がまとめた報告書では、企業型DCの信託報酬の高さが目につく事例が示されている。
例えば、信託報酬が抑制傾向にあるパッシブ運用型の投信であっても、選定されているほとんどが0.7~0.8%台の割高な商品というケースがあった。ほかにも、手頃に分散投資を行えるバランス型投信がすべてアクティブ運用のために、信託報酬が高めに設定されていた事例もあった。
出所:東洋経済 2024/05/08 『金融庁が注視、「企業型DC」の商品は加入者本位か 仕組み債、外貨保険に続くモニタリングの焦点』
未だに放置されてきた「企業型DCの悲惨な商品ラインナップ」
筆者が、「企業型DCの商品ラインナップや研修が、従業員想いになっていない」と感じたのは、おそらく2007年頃に遡ります。
外資系のプライベートバンキングに勤務し、低コストの海外ETFを用いた運用を顧客に提供していました。
一方で、勤務先が用意した企業型DCには、「低コストのインデックス型投資信託」はほぼ、無い状態で、コストの高いアクティブ型の投資信託ばかりが並んでいたのです。
「おそまつ」なラインアップを、担当者に申し入れるが。
プライベート・バンカーとして、こんな「おそまつ」な商品には投資したいとは思いませんでした。
何で、こんな「おそまつ」な商品ラインナップを、
従業員の企業型DCに導入したのですか?
人事、総務担当者に嚙みつきました。
担当者は
私は運用のプロじゃないので、どんな商品が良いかなんてわかりません。
無料で研修をやってくれる会社にお任せしています。
世界の最先端の運用サービスを提供する会社ですら、 企業型DCの担当者は、運用の専門家ではないのです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)では自分で取引先の金融機関を選択して始めることができますが、
企業型DCでは、勤めている企業が選んだ金融機関からしか商品を選ぶことができません。
つまり、企業が高コストのラインナップしかない金融機関を選んでしまうと、
従業員は低コストの商品を選べないのです。
企業年金の運用、企業自身も責任を負う時代に
これからは企業年金の運用について、企業自身も責任を負うようになる見込みです。
金融庁は企業年金の運用について企業自身も責任を負うように初めて法律で義務付ける方針だ。(中略)年金加入者の利益を最優先するよう広く企業を含め運用の受託者としての責任を明確にし、民事上や行政上の責任を負わせる。
2022/12/05 日本経済新聞 「年金運用、企業にも責任 来年法改正へ 金融機関任せ脱す」
しかし、企業年金担当者は「運用の知識や経験が豊富」なプロ人材ではない可能性もあります。
金融機関(運営管理機関)変更でコスト低下し、選択肢が増えた事例
とある企業様より、従業員向けの金融経済教育セミナー実施の依頼をいただきました。
しかし、セミナー実施にあたり、その企業様の企業型DCラインナップを確認してみたところ、
ほとんどがアクティブ型で、高コスト商品のオンパレードでした。
例えば、外国株カテゴリーではアクティブ型のみの選択肢しかありませんでした。
先進国株式に投資するアクティブ型のコストが1.8590%でした。
社長様・経理ご担当者様は
「企業型DCの制度開始初期に企業型DCをスタートし、長年そのままだった」と仰っていました。
弊社でのセミナー後、企業様は企業型DCの運営管理機関を見直し、金融機関を変更、企業型DCラインナップが大きく変わりました。
一例としてどのぐらいコストが下がったか、お伝えしたいと思います。
企業型DCラインナップ変更の比較(一例)
下記図表は企業型DCラインナップ変更前と変更後で
投資カテゴリーの最安銘柄のコストをピックアップしたものです。
ラインナップ変更前では
「米国株式」や「外国株式」カテゴリーに投資する銘柄はラインナップにありませんでした。
(先進国対象のアクティブ1本のみ)
しかし、今回の変更でどちらも選択肢が増え、
更にコストも「0.0938%」「0.09889%」と低コストの銘柄が増えたことがわかります。
変更前ラインナップではパッシブ型(インデックス型)がほとんど選べず、
更にパッシブ型を選んだとしてもコストが0.55%(国内株式)と決して低いとは言えませんでした。
一方、今回のラインナップ変更で国内株最安銘柄のコストが0.55%→0.143%と
大幅に下がったことがわかります。
全体の本数も変更前は18本の銘柄からしか選べませんでしたが変更後は33本に増加しています。
こうした低コストの銘柄や、これまで投資できなかったカテゴリーの選択肢が増えることは
実際に投資する従業員にとって嬉しい変更でしょう。
まとめ ココが変わった企業型DCラインナップ変更
・ラインナップ商品のコストが低下
・これまで投資できなかったカテゴリーの銘柄が追加
・ラインナップ商品数18本→33本
企業型DC担当者・経理担当者に研修と商品見直しを検討してほしい
企業の企業型DC担当者や、経理担当者は
「運用の知識や経験が豊富」なプロ人材ではない可能性があります。
「企業年金の制度担当となるために、入社した」人などは、ほとんどいないでしょう。
しかし、今後は企業年金の運用責任が企業側にも責任を負う時代が近付いてきています。
研修が必要であり、取引している金融機関に研修は任せることが多いでしょう。
金融機関は無料で従業員向けセミナーを引き受けます。
タダより高いモノはない!
タダでセミナーを引き受ける犠牲になるのが、「従業員の商品ラインナップ」なのです。
無料セミナーを行う企業ならば、商品のラインナップも金融機関にお任せとなる場合が多く、
結果として高いコストの商品で従業員が運用せざるを得なくなってしまうのです。
企業は従業員に訴えられないための努力が必要
企業が今後意識しなければならないことは何でしょうか?
・企業型DCや年金運用で、「良い」と思える商品を選択する
・従業員向けの研修を充実し、従業員の満足度を向上させる
ということなると思います。
経営者の方々が問題意識をしっかり持ち、制度の見直しを行うことで、
結果的に従業員満足度の向上に繋がるのです。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券その他の投資商品についての勧誘や、売買の推奨を目的としたものではありません。
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