富裕層の資産運用1 富裕層もNISA NISAの日
資産10兆円規模の「大学ファンド」の2022年度運用実績が発表となりました。
2023年7月10日のこのシリーズ【1】で採り上げた内容を再掲します。
収益率はマイナス2.2%(*時間加重収益率 以下▼2.2%と表現)。
GPIFが同時期リターンで+1.5%となっています。
大学ファンドの収益率・収益額公表データは?
助成資金運用の収益率は-2.2%、収益額は-604億円となりました。その内訳は下表のとおりです。外国債券等の購入にあたり為替変動リスクを回避するため、一部の為替取引においてヘッジ取引を実施しました。ヘッジしたことによる損益は、グローバル債券に反映させています。
出所:国立研究開発法人科学技術振興機構 『2022年度業務概況書国立研究開発法人科学技術振興機構-大学ファンドの運用状況等』 P25 4運用実績 [2]収益率・収益額 ①2022(令和4)年度の収益率・収益額
グローバル債券 ▼2.2% グローバル株式 +1.7% オルタナティブ ▼4.5%で全体では▼2.2%となっています。
*一部報道で大学ファンドのリターン元本比▼0.6%との表現があるが、これは総合収益額ベース。【総合収益額は、実現収益額(簿価ベース)に評価損益額の増減等(時価ベース)を加味した収益額(運用手数料等控除前)】
大学ファンドが公表している資料で時間加重収益率では上記図表のとおり▼2.2%となっている。
【時間加重収益率は、キャッシュフロー(運用元本等の流出入)の影響を排除し、時価に基づき算出した収益率(運用手数料等控除前)】
なお、GPIFの収益率1.50%は時間加重収益率【資産全体及び各資産別の収益率は時間加重収益率(運用手数料等控除前)】
GPIFのリターンは+1.5%
GPIFの2022年度の運用リターン結果は、収益率+1.50%、収益額2兆9536億円でした。
データ GPIF 2023/07/07公表
GPIFの2022年度でカテゴリー別のリターンは、
国内株式 + 5.54% 外国株式 +1.84% 外国債券 ▼0.12% 国内債券 ▼1.74%
GPIFの運用では株式の上昇で債券のマイナスをカバーした2022年度でした。
本シリーズ第1回では、大学ファンドとGPIFの
「債券リターンの違い」を採り上げました。
大学ファンド▼3.6% GPIF 外国債券▼0.12%、国内債券▼1.74%
為替ヘッジのコストが大きく、ヘッジ有り▼8.8%、ヘッジ無しであったら+1.2%であったことを解説しました。
明暗を分けた他の理由はアセット・アロケーション
大学ファンドが▼2.2%、一方GPIFは+1.5%とリターンの差が出た他の理由は
アセット・アロケーション=資産配分
の違いです。
大学ファンドは1-3月に株価が大きく上昇した恩恵を、フルに受けられなかったのです。
株式に資産配分した部分は17.2%しかありませんでした。
上昇した資産クラスである、株式の割合が少なかったのです。
出所:国立研究開発法人科学技術振興機構 「2022年度 業務概況表」大学ファンドの運用状況等
一方のGPIFは3月末で約50%を株式に配分しています。
株式資産の配分割合を50%に保つため、価格が上昇した株式を売却し、利益を得た結果として、約50%になっているものです。
1-3月に米国株や日本株の株価上昇があり、その恩恵をGPIFは得た形です。
出所:年金積立金管理運用独立行政法人 「2022年度業務概況表」より
時間分散しない方が良い時もある
大学ファンドは 株式:債券を65:35という「レファレンス・ポートフォリオ」があることを報告書で示しています。
現在の株式:債券 17:55という割合とは全く整合していません。
立ち上げ時期には債券を多く配分し、株式は時間分散しながら購入していくというプランだろうと推察されます。
価格が上昇する局面では
数回に分けて購入する、時間分散投資よりも
1回で購入した方が運用期間が長く取れてリターンが高い
場合が今回のケースには当てはまったと考えられます。
退職金の運用などでも「時間分散」が安心、といった論調も見られます。
しかし、実際に運用できる資金があるのであれば、早めに「フルインベスト」状態で、
何も産み出さないキャッシュポジションを下げる方が、リターンが高い場合があることも知識として知ってほしいと思います。
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