投信の手数料打ち切りも 米国投資家に学ぶべきコト
つみたて運用が資産形成に有効な手段であることを、説き続けた中野晴啓氏が退任します。
つみたて投資について語ってきた「つみたて王子」(自称)。
年間で100回(200回?)を超えるセミナーを勢力的に開催し、自ら投資家と近い距離で語ってきた、「つみたて投資の伝道師」です。
筆者も中野氏を講師に呼んだセミナーに参加し、その後居酒屋で一杯飲んで、低コスト運用の有用性を熱く語った経験があります。
セゾン投信創業者の中野晴啓会長CEO(最高経営責任者)は1日、6月末で退任することになったと明らかにした。28日に開催予定の株主総会で正式決定するという。
2023/06/01 Bloomberg 『セゾン投信、創業者の中野会長CEOが6月末に退任へ』
本人はインタビューに対し、このように回答したと報道されています。
「退任の経緯は話せない」「不本意な退任だ」
退任の理由は経営方針
親会社である、クレディセゾンの意向と中野氏の従来の方針で対立したと思われます。
なぜ、社長や会長経験者である、中野氏の意見が通らないのでしょうか?
セゾン投信は2006年に「クレディセゾン100%出資」で会社を立ち上げた経緯があります。
株主は約6割がクレディセゾン、約4割が日本郵便だと思われます。
いわば中野氏は「雇われ社長」で、株主の意向には逆らえないという立場なのです。
セゾン投信ファンは中野ファンと通じる面が
22年6月時点でのセゾン投信の運用資産総額は約5000億円、口座保有者は15万人
出所:会社四季報Online 2023/06/01 『セゾン投信、創業者の中野会長CEOが6月末に退任へ』
従来の「コストの高い、金融機関が勧める投資信託」とは一線を画す商品を展開し、自ら積極的に勉強会講師として、投資家(顧客でない人がほとんど)と向きあい、地道な開拓に尽力してきた中野会長。
資産運用に興味のない人が、「投資をやってみようかな」と思うきっかけを作る勉強会を開催し続けたことは実績であり、事実でしょう。
つみたてNISAの制度開始に大きな影響を与えた一人であると思います。
日本の経営層は現場を軽視する
話がそれますが、日本の経営層は現場担当者よりも偉いと勘違いしている事例があります。
筆者は米系や欧州系の企業でプライベート・バンカーとして長年勤務してきました。
プライベート・バンキングの世界では、現場の営業担当者を経営層が部下扱いすることはまず、ありません。
バンカーが退職すると、お客様がその金融機関との取引を辞め、バンカーに付いて運用先を変えることがほとんどだからです。
中野氏はプライベート・バンカーではないものの、ファンをたくさん持った、いわば営業のエースだと想像します。
中野氏が退任すると、ファンが中野氏に付いていく可能性が十分にあるのです。
中野氏は、どう動くのか?
中野氏の「事実上の解任」となると、中野ファンからの反発が予想されると思います。
ここまで報道されていると、もはや元のサヤには収まらないかもしれません。
中野氏が新天地で「中野ファンド」を立ち上げることも今後考えられるのではないでしょうか。
※ 筆者はセゾン投信関係者でないので、詳細は不明で自説を展開しています。
※ 筆者は低コストのETFなどが優れた商品であるとの立場で、ETF、REIT以外の一般の投資信託は、経営する投資助言業で投資助言の対象外です。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券その他の投資商品についての勧誘や、売買の推奨を目的としたものではありません。
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