「老後の生活資金の大半がリスクに」仕組み債で東京地裁がSMBC日興証券に賠償命令

安東隆司

安東隆司

テーマ:所長解説のおカネ学♫

「仕組み債」で約2480万円の損害賠償請求訴訟の判決が2023/05/29に出ました。
東京地裁はSMBC日興証券に約733万円の支払いを命じました。

訴えた女性は 

2014年11月と15年10月担当者に勧められ、2種類の仕組み債計4500万円分を購入。しかし、元本割れしたことから計約2255万円の損失を被った

と主張していました。
出所:読売新聞 2023/05/29 『SMBC日興証券が勧誘の仕組み債、2255万円損失…東京地裁が733万円賠償命令』

明らかに過大な取引を積極的に勧誘し「老後の生活資金の大半が元本毀損のリスクにさらされた」

出所:日本経済新聞 2023/05/29 『SMBC日興、「仕組み債」損失で賠償命令 東京地裁』

RIA JAPAN代表の安東隆司は仕組み債の安易な販売に警鐘を鳴らし続けてきました。

販売している担当者は、リスクを正しく理解しないまま販売しているのではないだろうか?
販売者が儲かって、投資家も高いリターンが見込める、夢の商品などあり得ない。
仕組み債を販売する立場は、組成や販売でいくらの収益が販売者側にもたらされるのか、明らかにすべき。
業界団体は、仕組み債販売に厳しいルールを打ち出し、投資家保護にもっと早く乗り出すべきだったのでは?

欧米では金融商品の販売会社に対して顧客と利益相反になりかねない情報や手数料の開示を義務づけている

2023/02/14 日本経済新聞「仕組み債、投資家保護へ制限 高リスク・説明不足でトラブル 日証協、資産額など数値基準」

問題は以前から認識も、自主的な規制には踏み出さなかった過去

日証協は「仕組み債に問題がありそうだ」と認識していても、自主的に規制には乗り出しませんでした。
金融トラブルを扱うFINMACの、仕組み債トラブル状況を知る立場でしたが、規制には踏み出しませんでした。
証券業界の収益を優先する姿勢があったと考えます。

RIA JAPAN 2020年8月に行った問題提起の内容は

2020年8月に、この仕組み債問題などの業界の問題点についてRIA JAPANおカネ学(株)は提言を行いました。

日本の資産運用に携わる者の情報開示は十分とは言えない―。一例では利回り9%超の外債投資で、為替水準が全く変化しなくても元本割れとなる事例がありました。なぜ、外貨商品の手数料を債券の商品説明時に同時に説明しないのでしょうか?また、仕組み債の組成費用や、債券の上乗せスプレッド…。日本では金融機関が顧客に開示していないコストが数多くあります。顧客本位の業務運営の実現のためにはまだまだ前進が必要です。
https://ria-japan.co.jp/2020/08/19/fct-wg-proposal/

以前のコラムを再掲

以下は「金融庁が仕組み債を重点検査! 販売者モラルは十分だったのか?」2022年8月25日で採り上げた内容です。

********************

販売実態を、金融庁と証券取引等監視委員会が重点的に検査する、との報道が日本経済新聞、2022/08/24の日経電子版で報じられました。

仕組み債のコストは8%~10%

仕組み債(EB債)の実態のコストは年率で8%-10%程度と考えられます。

2022/05/27に公表された、金融庁『資産運用業高度化プログレスレポート2022』に記載されている内容を紹介し、解説します。

…実現満期が0.6年程度と短いため、実質コストを年率換算すると8~10%程度に達すると考えられる

(解説)
EB債の実質コストは、『投資元本に対して平均して5~6%程度と推定される』のですが、運用期間終了までが0.6年(約7.2か月)で5~6%程度を支払うため、1年で2回以上、実質的なコストを支払います。年率に直せば約8~10%の実質コスト支払いとなるというのです。

仕組み債を購入した人々は、このような高いコストを実質的に支払っていることを知っているのでしょうか?
セールス担当者からこのような手数料の説明があったでしょうか?

販売者はセールスに役立つ情報を顧客に伝えます。一方、不都合な事実については、わかっていてもワザワザ伝えないでしょう。

販売者は仕組み債のリスクの大きさをキチンと理解していたか?

…サンプルの中には、僅か3か月で元本の8割を毀損した例もあり、リターンの分布を見ると、頻度は少ないものの損失率の裾野が広い。リスク(分布の標準偏差)は相応に高く、…

(解説)
仕組債には色々な種類がありますが、EB債(他社株転換可能債)の事例で、3か月という短期間で元本の8割がマイナスになったというものです。

販売に携わっていた者が、仕組み債のリスクがどれほど大きいのか、相場下落時にどれほどのリスクが発生するのかを、研修などで十分に学んでいたのでしょうか?
・十分に学んでいれば、仕組み債を売りたくないと思う販売員が多くでるでしょう。
・金融機関がワザワザ販売にストップがかかる内容をキチンと研修していたのでしょうか?
検査の結果が待たれます。

日経CNBC 2022/06/24の放送でも仕組み債の問題を


安東隆司が出演した日経CNBCの2022/06/24の放送でも、仕組み債の問題点について解説しています。
(6:55あたりから)
[囲み装飾]・FINMAC苦情件数のうち46%が仕組債に関する紛争
・仕組み債はリスクの割にリターンが低い
・金融庁 仕組み債に投資する意義はほとんどない
・実質コスト8%-10%が、開示されていないことは問題
・仕組み債は高収益商品
・「高格付け」はデリバティブズのリスクを含んでいない
・販売者は高収益を勧めたがる傾向があるのかもしれない

仕組み債問題に以前から警鐘を鳴らす、2020年のCNBC出演

安東隆司は仕組み債に警鐘を鳴らし続けてきました。
2020/4/23に日経CNBCに出演した時の内容抜粋が以下です。
10:15あたり

・老後資産の仕組み債投資で1160万円以上を損した事例がある
・2万件 2600億円以上の契約がある(某大手金融機関で)
・仕組み債で投資家に1000億円以上の被害が出る
・デリバティブズには安易に投資しない

RIA JAPANではかねてより仕組債のリスクについてコラム、動画などで警鐘を鳴らし続けてきました。

マイベストプロ東京で仕組み債の採り上げ記事集

2021年3月26日
8億円!の損害賠償請求額 仕組み債で後悔する前に 仕組み債とは?
https://mbp-japan.com/tokyo/ria-japan/column/5081452/

2021年12月9日
金融庁 金融審議会が是正を求めた仕組債。1年で12億円超の損害賠償が!
https://mbp-japan.com/tokyo/ria-japan/column/5100073/

2022年3月24日
紛争あっせんの41.33%が仕組債!! FINMAC 2年間データ
https://mbp-japan.com/tokyo/ria-japan/column/5107452/

2022年5月31日
金融庁資料、仕組債「EB債を購入する意義はほとんどない」
https://mbp-japan.com/tokyo/ria-japan/column/5112371/

2022年8月25日
金融庁が仕組み債を重点検査! 販売者モラルは十分だったのか?
https://mbp-japan.com/tokyo/ria-japan/column/5117947/

2023年2月14日
仕組み債、投資して大損!もはや手遅れ。金融知識を備えてトラブル回避を。信頼できる相談相手は?
https://mbp-japan.com/tokyo/ria-japan/column/5129135/


仕組債のリスクについて解説した動画がYouTubeにて公開されています。
そちらも併せて参照ください(2021/4/12公開)。


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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券その他の投資商品についての勧誘や、売買の推奨を目的としたものではありません。
本記事は信頼できると判断された情報等を基に作成しておりますが、正確性、完全性を保証するものではありません。

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安東隆司
専門家

安東隆司(投資顧問)

おカネ学株式会社 Reliable Investment Advisors Japan Co.,Ltd(英文名称 略称 RIA JAPAN)

富裕層の資産の管理や運用、承継などを行う。売買手数料0などお客様と利益相反の少ないサービスを追求。また、海外ETFを中心とした資産形成の知識・経験が豊富。テーラーメードの投資助言を大切にしている。

安東隆司プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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