投信の手数料打ち切りも 米国投資家に学ぶべきコト
2022年11月に金融審議会 市場制度ワーキング・グループ 顧客本位タスクフォースの中間報告(案)が公表されています。
顧客本位を検討し情報発信をしていくことは、投資家にとって資産形成を有利にする、光の道だと思います。
この中間報告書案を読み解く、今回は第2回目です。
まず、アドバイスの対象が特定の金融事業者や 金融商品に偏らない中立的なアドバイザーの見える化を進めるべきである。その際、 中立性 の判断に当たっては 、アドバイザーが金融商品の販売を行う金融事業を兼業しているかどうか、顧客からのみ報酬を得ているかどうか 、といった点を考慮することが考えられる 。こうした中立的なアドバイザーの裾野を広げ、育成していくため、 国としても、Ⅲにおいて述べる金融経済教育の実施にあたり、その積極的な参加を促していくことが望ましい。 また、 中立的な助言サービスを受ける個人に対する国の支援の可能性を検討するほか、 特にこうした中立的なアドバイザーが行う アドバイスが投資初心者層へ広く提供されるよう、 助言対象を絞った投資助言業( 例えば、 つみたて NISA や iDeCo の 対象商品に限定) について 、監督のあり方や体制も検討しながら、 登録要件の緩和を検討していくべきである。
引用:金融庁「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ 顧客本位タスクフォースの中間報告(案)」2022/11月
顧客本位タスクフォース 中間 報告 (案
この内容を私見で整理してみます。
・中立の判断、販売を兼業しているか、 顧客からのみ報酬を得ているかどうか
→ 兼業しキックバックを受け取る立場では、真に中立でなく、収益優先となる場合がある
・国としても(アドバイザーの裾野を広げ、育成する)促す必要がある
・中立的な助言サービスを受ける個人に対する国の支援の可能性を検討する
→ 米国RIAが31,669者(*1)、日本のRIAが1,001者であることを鑑みると、アドバイザーや、情報提供者の拡大は必要である
注 金融庁からのレポートでは、法人・個人の事業者を考慮し、事業者を「者」と表記する例が一般的。今回のレポートはわかりやすさを優先したのか「社」と記載。
→ 助言サービスを受ける個人に対して、国が支援することを検討することは、方法を間違わなければ良い。 ただし、誤った情報発信や、販売者の片棒を担ぐ事業者をどう、排除し、中立となり得るのか、実践には検討点が数多く存在する。
・対象を絞った投資助言業( 例えば、 つみたて NISA や iDeCo の 対象商品に限定)の要件緩和を検討していくべき
→ 中立で、販売業者から収益を得ていない「情報提供者」の拡充は必要。例えば、つみたてNISAのインデックス型に限って要件を緩和することは、長期・つみたて・分散の投資を後押しする。
→ つみたてNISAの対象であっても、アクティブ型については長期運用の面で費用対効果に疑問がある。
→ iDeCoや企業型DCでは、運営管理機関(取り扱い金融機関)によって、低コストのラインナップに大きな違いが発生している。また、販売者・運用者関連の利益誘導に、今回検討される「情報提供者」が悪用される可能性もある。
助言業者と、新制度は階級などの区別が必要
投資助言業者には、高い行動規範と顧客本位、情報開示が課されています。
資産形成層に情報提供する人員の増加は必要でしょう。
しかしながら、従来の投資助言業の登録と、同一視されるような緩和は、誤解を招き、投資家保護の観点から問題が発生する懸念があります。
1300億円を消失させた、同じ轍を踏むな
かつてAIJ事件では、自社関連のファンドを導入するように「助言し」、将来の年金の原資が1300億円消失した事件がありました。
良いファンドだと宣伝された関連の海外ファンドは、実態はマイナス運用で資金は9割が消失した事件があったのです。
助言でも、助言対象に疑義がある事例を排除する必要があります。
運用会社に忖度した助言や、証券業界への利益誘導のための助言では、助言の質の低下を招く危険があります。
このような危険を排除するため、従来の助言業と今回検討する「情報提供者」は区別が必要だと思うのです。
例えば、
つみたてNISAのインデックス型のみの助言を可能とする、「初級投資情報提供者」、
DC関連の取り扱いを可能とする「中級投資情報提供者」
といった、階層別の登録とする必要があると考えられます。
ルール策定者に、公平な意思決定を期待したい
会議をすると、チカラを持った人、団体が利益誘導のために強引にルール策定する場合が時に見られます。
業界団体が、自分たちに都合のよい事象だけを採り上げ、結果的にチカラの強い=声の大きい 団体の意見が反映されるケースは残念です。
必ずしも、公平な意思決定となっていない場合もあるからです。
証券業界としては、フィーベース型ビジネスを実現するために、投資助言領域に入りたい、という背景があると考えられます。
助言業だけを対象にした業界団体は日本にない
投資助言業者が加入所属する団体に「日本投資顧問業協会」があります。
しかしながら、この協会の主力のメンバーは大手のアセットマネジメント会社です。証券業の関連会社、「運用業者」にフォーカスしたイベントの支援が活動に見られます。
「資産運用業・・・」などのイベント後援はありますが、助言業にとっては、やや蚊帳の外の印象も感じることがあります。
助言業の専業事業者数は500者を切るのが実態でしょう。
前掲の1,001者は、証券業などの兼業業者を含んでいる数字です。
投資助言業のみが加入する、業界団体は日本に現状存在しません。
結果的に、助言業者の意見を反映する機能が不足しているのです。
今回、助言業領域の規制緩和を検討しているにあたり、助言業者の意見が採り上げられていないことが残念です。
(FXや不動産を助言対象検討でなく、証券関連を助言業の対象としている業者で)
大手系列でない、独立系助言業者が検討メンバーにいないのではないでしょうか?(筆者見解)。
ルールを策定する重責を担っている方々には、投資家保護や知識向上のため、新しい制度の検討を慎重に、大胆に行ってほしいと思います。