大学ファンド収益率マイナス2.2%、GPIF+1.5%と明暗を分けた理由は?【1】
2022年11月に金融審議会 市場制度ワーキング・グループ 顧客本位タスクフォースの中間報告(案)が公表されています。
顧客本位を検討し情報発信をしていくことは、投資家にとって資産形成を有利にする、光の道だと思います。
顧客の立場に立ち、特定の金融事業者や金融商品に偏らない中立的なアドバイスを普及していくためには、中立性 について、考え方を整理することが重要である。 諸外国では、アドバイザーの中立性や独立性に関して、提供できる商品・サービスの範囲や、顧客からのみ報酬を得ているかどうか等に着目している 。 なお、顧客以外から報酬を得ることを禁止したイギリスにおいては、顧客一人あたりの費用対効果を高める必要が生じ、アドバイザーが富裕層へのサービス提供に注力し、顧客(資産形成層)が、自らが支払いたいと思える金額で必要なアドバイスを受けられないという問題も発生している。 こうした諸外国の状況、 日本におけるアドバイス 業務の 発展状況やニーズ等を踏まえ、 個人が良質なアドバイスを手軽に受けられるよう環境整備を行っていくことが重要である。
引用:金融庁「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ 顧客本位タスクフォースの中間報告(案)」2022/11月
顧客本位タスクフォース 中間 報告 (案
この内容を私見で整理してみます。
・中立性、独立性をどう、判断するか
→ 中立、独立系の方が顧客にとって有利なアドバイスを提供しやすい
・顧客からのみ報酬を得ているか
→ キックバックを受け取る立場では真に中立でなく、収益優先となる場合がある
・顧客のみからのアドバイスでは富裕層サービスに注力
→ アドバイザーが中立性を維持し、業務を継続していくために、ある程度の収益基盤が必要である
中立なアドバイスを実現するために、販売側からメリットを受け取らない形では、ビジネスモデルとしてなかなか成立しにくい現状を正しく反映した内容だとも思います。
補足:アドバイザーの定義が日本と欧米では違っている
過去の金融庁レポートには記載されていながら、今回のレポートに盛り込まれていない論点に、海外のアドバイザー事情があります。
補足的にこの話題について触れたいと思います。
米国では登録を受けた者以外はアドバイザーを名乗れないという事実があります。
米国では、RIA(Registerd Investment Adviser:登録を受けた投資助言者:日本では投資助言業者)登録を受けた者だけがアドバイザーです。
販売に携わっている者(RIA登録者を除く)は、ブローカー、ICなどで、”アドバイザー”とは区別が成されているのです。
世界中で、コストの高いアクティブ型やヘッジファンドを解約し、インデックス型を活用する傾向があります。
販売者のセールストークに乗り、コスト高の運用を強いられた投資家は、結果的にインデックス型に満たないリターンや、大きな損失を被る結果となったことが背景のひとつです。
投資家を後押ししたアドバイザーにRIAの役割がありました。
販売者から収益を受け取らない立場であるため、コストの高い運用を顧客に勧めず、低コスト運用を後押ししたのです。
顧客本位をハイレベルで実現するために、中立なアドバイザーの役割が重要であったのです。
日本でも「日本独自のアドバイザー」という言葉の定義を維持するのか、
欧米のように、アドバイザーと販売者を区別する定義を採用するのか
という点も論点のひとつになりうると思うのです。