世界の潮流、パッシブ運用比率が伸びているワケ ロバート・シラー氏が触れていないコト
クレディスイスや野村で大きな損失が見込まれています。
野村ホールディングスは約20億ドル(約2200億円)の損失可能性を2021年3月29日に発表しました。
「アルケゴス・キャピタル・マネジメントが取引銀行から200億ドル相当の株式の売却を強いられた」
「アルケゴスが先週マージンコールに応じられなかった」
Bloomberg:更新 2021年3月30日
「アメリカに拠点を置くヘッジファンドとの取り引きをめぐって、損失を計上する可能性があると発表しました」
「ヘッジファンドとの取り引きの過程で追加の証拠金の差し入れを求めたものの、ファンド側が応じられず、債務不履行が起きたためだととしています」
NHKニュース 2021年3月30日
これらが原因と考えられます。
アルケゴス運営者は元著名ヘッジファンド出身
アルケゴス(ロイターはアーケゴス表記)はビル・フアン氏(日経表記ではホワン氏)が運営するファミリーオフィスです。
「ホワン氏は著名投資家ジュリアン・ロバートソン氏創業のタイガー・マネジメント出身。アジア株専門のヘッジファンドを立ち上げたが、閉鎖後に自身の投資会社を設立した」
日経 2021年3月30日
ヘッジファンドは生き残る確率が極めて低いのが実情です。
推測ですが、フアン氏も立ち上げたアジア株専門ヘッジファンドも成果が奮わず、閉鎖に追いやられたものと考えられます。
フアン氏運用が不安視(フアンシ)されたのでしょう。
その後、自身の資産を運用するファミリーオフィスとして運用継続したものと考えられます。
なぜ投げ売りを強いられたのか
(フアン氏の)「資産は50億-100億ドルの間で、ポジションの総額は500億ドルを超える可能性があると、市場参加者らは推計している。」
Bloomberg
100億ドル以下の資産で、借入などのレバレッジを利用し、そのポジションを500億ドルまで膨らませていたと考えられます。
資産価格が下落した時に、レバレッジ利用者は借入の担保が不足が発生することがあります。
担保が不足し、マージンコール(担保不足の警告)に対して、追加担保の差し入れができなかったということでしょう。
担保不足 安い価格で強制売却
追加で担保が入れられないと、金融機関は担保としている資産を強制売却するわけです。
これをオフ・セットと言います。
アルケゴス保有のメディア関連の株式が、「ブロックトレード」という手法で、大量に売買がされ、株価が下落した様子です。
大量に買う投資家は、市場よりも安い価格で買う意向を示したのでしょう。
そもそも、価格が下がっていたので、担保不足となっていたところに、更に下落する要因となるのです。
著名金融機関出身、高学歴などを過信しすぎない
「1998年に巨額損失が発覚したロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)以来となる大型のファンド破綻劇になる可能性がある」
日経新聞
若い投資家はLTCM破綻を遠い昔話と考えるかもしれません。LTCMとは何だったのでしょうか?
「LTCMは、1980年代、ソロモン・ブラザーズで、財務省出身のアービトラージ・トレーディング部門を率いて同社のトレーディング部門に黄金時代をもたらしたメリウェザー氏が1993年に設立したヘッジファンド会社である。(中略)ノーベル経済学賞受賞者のマイロン・ショールズやロバート・マートンもアドバイザーを勤めており、ドリーム・チームとも、ベストアンドブライテストとも賞賛されてきたファンドである。」
野村資本市場研究所|ヘッジファンド問題の行方
ノーベル賞受賞者がアドバイスしても、破綻するファンドがあったということです。
レバレッジも危険性を理解する
金融庁がノミネートしている、「つみたてNISA」に選ばれている投資信託等には、「レバレッジ型」は1本もありません。
レバレッジはうまく利用すれば、大きなリターンを得られることもありますが、相場の急変時には、破綻するような大きな損失となる可能性をはらんでいます。
長期で資産形成を目指す投資家には、利回りの見かけの良さや、運営者やファンド・マネージャーのきらびやかな経験、高学歴といったことを過信しすぎないことが重要です。
ファンドを破綻に追いやるリスクのあるレバレッジの危険性には、特に注意をしてほしいと思っています。