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メルカリ上場が話題となり、IPO(新規公開株)について注目が高まっています。「勝率が8割以上」とも言われるIPO投資はどのくらい儲かるか、そもそもIPOとは何か等を今回は解説します。また、富裕層はIPOにどう関わっているのかを元プライベート・バンカーの視点で紹介します。
■IPO投資とは?
メルカリが2018年6月19日、東証マザーズ市場に上場しました。累計1億ダウンロード(含む米国)を超え、フリーマーケットアプリの大手といえるでしょう。そのメルカリの今まで未公開であった株式が、株式市場で売買されるようになりました。
IPO(Initial =皮切りの Public =公開する Offering=売出し)とは、例えばメルカリ株を保有したい投資家が上場の前に証券会社に申し込みをし、抽選で当選すれば株主になることができるというものです。IPOに当選すれば、取得時の証券売買の手数料がかからず「公開価格」で株を買うことができます。
投資家にとっての魅力は、その高い勝率です。IPO抽選当選者の「公開価格」を、上場時の初めての値段、「初値」が上回る勝率は8割~9割とも言われています。メルカリの場合、公開価格は3000円、初値は5000円でした。単元株100株での投資額30万円が、初値の時価では50万円になったということになります。このように注目が高いIPOは初値で売れば、短期間で利益が出せる場合があります。
■IPO当選にはハードルが高い
今回のメルカリでは、大手ネット証券の抽選倍率は200倍を超える水準だったと言われています。ある意味、IPO当選は「宝くじ」に当たるような出来事ともいえるでしょう。
主幹事の大和証券では新規の口座開設が数万件に達したといいます。IPOに際してはそのIPOを取り扱う証券会社ごとに、株数の割り当て数が決まります。売り出し株数の割り当てが、最も多いと考えられた主幹事証券に口座開設し、IPO申し込み抽選に参加したいと考えた投資家が多かったということでしょう。
著者も1993年のJR東日本のIPOに当選、公開価格38万円、初値60万円で売却した経験があり、他にも複数のIPOに当選したことがあります。味を占めてIPOに当選する確率を上げるために、かなり多くの証券会社に口座開設をし、片っ端からIPO参加に熱中した時期もありました。
IPOに参加するためには、公開価格の資金をその証券会社に置いておく必要もあります。仮に30万円のIPO抽選に参加するために、10社の証券会社に資金を置けば300万円の資金が必要になります。しかしその資金が必ず運用益を産みだすわけではありません。全て外れれば、運用益はゼロになります。つまり待機資金となるのです。
■IPO銘柄をセカンダリーで買えば儲かるのか
抽選で当たらなかった投資家の中には、「これだけ人気化しているのだから、今後もずっと株価が上昇するのではないか」と考えて初日に株式を買った方もいるでしょう。しかし、そう単純ではないのが現状です。
IPOの初値が公開価格を上回りやすいため「IPO投資は勝率8割以上」と言われていますが、上場後に株式市場で株を買う「セカンダリー:Secondary=流通市場の(2次市場の)」で投資した場合に当てはまるものではありません。IPOでは「初値天井」となってしまうケースもあるのです。(セカンダリーに対して、IPOは「プライマリー: Primary=最初の」と考えることもできるでしょう)
メルカリの場合でいえば、初日(6/19)の初値は5000円、高値は6000円でしたが、6/20の終値は4910円、6/21終値は4810円、6/22終値は4550円となっています。初値が天井ではないものの、初日の終値を3日続けて下回りました。
■富裕層とIPO
富裕層はIPOにどのように取り組んでいるのでしょうか。普段から証券会社とそれなりの取引がある場合、IPO株の抽選確率が上がっている可能性があるかもしれません。しかしながら、IPOで投資できる金額は限られています。
富裕層にとって30万円程度の金額は全体の資産額からするとわずかなものだといえます。IPOで数千万単位も抽選に当たるとは考えられないでしょう。そこに時間を費やすことよりも、多くの富を得る方法を考え、待機資金よりも確実と考える運用法を実践する場合が多いとこれまでの経験から感じます。
未公開株式に対して投資を行う、プライベート・エクイティ投資というスタイルがあります。投資対象株式がめでたく上場し、IPOとなることで大化けする場合もありますが、逆に経営破綻となる件数の方がはるかに上回っています。富裕層が全てプライベート・エクイティ投資をしているわけではありません。かなりのハイリスクを許容できる投資家向けと言えるでしょう。
富裕層カテゴリーの中には、「上場株式オーナー」というカテゴリーがあります。自ら経営する会社が上場した場合に、億万長者の仲間入りをするということです。近時の上場で、上場株式オーナーの所有資産が1858億円となった事例もあります。 また、海外企業の事例で、勤務先の保有株が上場したために役員やパートナーがそろって億万長者入りをする事例などもあるのです。
しかし自社株は必ずしもいつでも売却できる資産ではありません。10億円単位で保有株を売却した場合にはマーケットへのインパクトが大きすぎるためです。「上場株式オーナー」となっても資産管理や事業承継にアドバイザー役を置くことには理由があるのです。
※注:今回採り上げた個別の株式に対して売買推奨や、今後の株価の見通しを述べたものではありません。また特定の証券会社との取引を勧めるものではありません。
安東隆司 著書に『個人型確定拠出年金iDeCo プロの運用教えてあげる!!』等がある。