知らない人は損をする資産運用のコツ 「プロの運用教えてあげる！」書評
つみたてNISAの運用が2018年から開始となり、iDeCoと従来型NISAに加えてさらに選択肢が広がりました。投資枠の比較も重要ですが、投資で成功することが何よりも大事です。ここでは金融庁長官が語った金言を紹介しながら、つみたてNISA、従来型NISA、iDeCoの活用方法を整理します。
■金融庁長官が語った「投資のコツ」とは？
――市場全体に投資するコストの安い『インデックスファンド』を選ぶこと」――
これは、2017年4月7日に行われた日本証券アナリスト協会のセミナーで金融庁長官が発言したことです。バートン・マルキール氏とチャールズ・エリス氏の共著『投資の大原則―人生を豊かにするためのヒント―」の内容を引用し、個人が投資で成功するための秘訣として挙げた内容のひとつです。
そもそも「インデックスファンド」とは何でしょうか。日経平均株価を例に簡単に説明します。日経平均株価は、日本株式を代表する225銘柄の平均から算出した指標（インデックス）で、この指標と同じリターンを目指す投資信託が「インデックスファンド」です。iDeCoの説明資料やサイトでは別名で「パッシブ型」という表現を使う場合もあります。
これに対して、インデックスを上回るリターンを目指すものが「アクティブ型」です。
■インデックス型の方がアクティブ型よりもリターンが高い？
森金融庁長官は「マルキールとエリスは、インデックス投信は一般的に、アクティブ型投信よりもリターンは高いと指摘しています」とし、さらに「日本の株式アクティブ型投信281本の過去10年間の平均リターンは信託報酬控除後で年率 1.4％であり、全体の約三分の一が信託報酬控除後のリターンがマイナス」となっていたことを示しました。この期間10 年間の日経平均株価上昇の年率約3.0％に対し、アクティブ型は1.4％のリターンであるという訳です。
さらに長官は以下のように続けました。
「インデックス投信が一般的にアクティブ型投信に比べリターンが高いとのマルキールとエリスの主張は、日本株投信についても当てはまるように思えます」
補足として、かなり細かい観点でいえば、インデックス型投信にも信託報酬がかかるので、アクティブ型とインデックス型のリターンの差は「3.0％―1.4％＝1.6％」とはなりません。しかし、インデックス型が長期投資でアクティブ型よりもリターンが高いことは他の様々なデータでも取り上げられています。
ただ、インデックス型ならば何でも安心だろうと、安易に選択してしまうことは危険です。iDeCoの投信ラインナップの場合には同じ「日経225インデックス型」でも信託報酬が0.22％と0.86％もの違いがあるものも並んでいるケースがあるのです。インデックス型（パッシブ型）であっても信託報酬の水準は考慮すべきなのです。
■ボーナス運用、低コスト運用ならつみたてNISAよりも従来型
つみたてNISAとNISAは同一年度で併用することはできません。つみたてNISAでは、非課税投資枠は年額40万円です。ボーナス運用しようと考えた時に、40万円/年よりも多く投資したいケースもあるでしょう。従来型NISAならば非課税投資枠は120万円/年です。また、信託報酬が最も安いのは「ETFカテゴリー」です。さらに信託報酬のかからない個別株式も、ETFも従来型NISAであれば投資対象として選択することができます。
ボーナス等である程度の運用規模がある投資家にとっては、ETFカテゴリーが充実している金融機関で「従来型NISA」を活用することにメリットが大きいと筆者は考えています。
■同じ低コスト投信なら、つみたてNISAよりもまず、iDeCo
つみたてNISAとiDeCoでは、同一の低コストインデックス投信や似たような投信があります。運用益非課税はNISA、つみたてNISA、iDeCoで共通のメリットです。
同じ商品を選択するならば、iDeCoにしかないメリット「掛金全額控除」を最優先すべきだと思います。課税所得350万円（年収ではなく、所得控除や社会保険支払い等の後の所得）で年金制度のない会社勤務のサラリーマンが、iDeCoに年間27万6000円を掛けると、節税メリット額の概算は8万2800円にもなります。所得税、住民税が安くなるメリットは大きいのです（復興特別所得税は考慮せず）。
ただし注意点もあります。iDeCoは60歳まで原則、おろすことができない点です。将来に備える長期投資が前提となっているので、ライフプランを事前によく検討する必要があります。
■信託報酬等0.40％未満のランナップが充実しているか
「低コストのインデックス運用が王道」と筆者は言い続けています。つみたてNISAでもiDeCoでも、その他の運用でも、まず核となる部分はこの考え方で良いと考えています。iDeCoやNISAなどの非課税制度では、金融機関を変更しようと思うと、それなりに期間を要します。実際に取引する前に、金融機関にどんな商品ラインナップがあるのかを事前によく比較・検討することが重要です。
「掛金全額所得控除」という強力なメリットを持つ、iDeCoの取引金融機関、商品選択を最優先で検討して頂きたいのです。長期運用では、信託報酬等の投資コストが安い投信を、様々な投資カテゴリーで揃えている金融機関を選択すべきです。やや宣伝めいてしまいますが、私の著書「個人型確定拠出年金iDeCo プロの運用教えてあげる！」 では信託報酬等0.40％未満に着目し、「取引すべき金融機関」、「選択すべき投信」を順位付けしています。これを活用していただくと「低コスト運用」をシンプルに行うことが実現できるでしょう。
