資産運用教科書ならコレ! 重版出来! 4刷 iDeCo プロの運用教えてもらおう!
個人型確定拠出型年金(iDeCo:愛称イデコ)と聞くと何やら難しいイメージを感じると思います。しかし筆者は、個人型確定拠出年金は最強の運用法と考えています。2017年1月から、大幅に制度改正があった、iDeCo。確定拠出年金を始める際の金融機関、金融商品の選び方、掛金の上限額についてシリーズで説明します。ここでは、iDeCoとNISAを比較し、NISA+αの税制メリットがあるiDeCoのメリットを5つ解説します。
■1. 掛金が全額所得控除 所得税、住民税が節税できる
iDeCoの大きなメリットとして、掛金が「全額所得控除」になります。企業型DC・DB制度がないサラリーマンの場合には、月額2万3千円、年額27万6千円が掛金の上限となります。(企業型DBとは確定給付企業年金、厚生年金基金を指します)
そしてこの掛金の全額が所得控除となります。年間の所得が1000万円であれば、11万8680円が非課税となります。「別の財布」で自分年金の積立が可能となるわけです。(所得税33%、住民税10%として計算)。なお、NISAには所得控除はありません。
■2.運用益に税金がかからない
iDeCo、NISA共に運用した利益に対して、通常20%かかる税金がかかりません。例えば、税引前5%の運用は税引後では4%となるので、この場合は1%のパフォーマンス向上が「非課税制度」利用によるメリットで得られるわけです。NISAの上限金額600万円の、仮に10%・60万円の運用益があった場合、通常の20%課税口座よりもiDeCo、NISA共に12万円のメリットが得られるわけです。(復興特別税は考慮せず)
■3. 退職金に税金がかからない
iDeCo、は個人型の確定拠出年金で退職金制度のひとつです。自己責任で投資に回すならば、国が自分年金造りのための個人の掛金に対して、所得税や住民税を非課税にするという有利な制度です。
iDeCoを一時金として受取る場合は「退職所得控除」を受けることができます。勤続30年のサラリーマンの場合は退職金の所得控除は1500万円の枠があります。その他の退職金との合算による計算とはなりますが、退職金税制は極めて投資家に有利な税制で、この事例の控除1500万円超の部分についても「退職所得は1/2計上」ができます。更に他の所得と合算した税率ではない「分離課税」として計上が可能なのです。
■4. 元本保証商品もある
iDeCoの商品ラインナップには預金、保険といった元本保証の商品もあります。NISAは「投資非課税制度」であり、投資商品が運用の対象で元本保証商品はありません。投資を全く行わないという人にはNISAの存在意義が無いかもしれませんが、iDeCoは年金の一部であるために元本保証の商品もあります。税金の控除の利用目的でも利用者にとってのメリットが考えられます
■5. 運用期間を長くとれる 30歳ならば30年の積立可能
iDeCoの運用期間は「60歳までの積立て」となっており、その運用期間は年齢によって異なっています。45歳であれば今後15年、30歳であれば今後30年が積み立て可能な期間となります。NISAの期間は5年であるので、55歳未満の方にはiDeCoの方が長期に資産形成が可能です。制度を理解して最大限利用し資産形成につなげることが重要だと思います。iDeCoのデメリットとして、60歳までは原則として解約が不可能などのデメリットもあるので、実際に導入する際は専門家に相談することをお勧めします。
■今後のiDeCoの課題 低コスト商品が勧められない理由
2017年1月より専業主婦、公務員にも制度拡充となり、iDeCoを利用することができるようになった方が大幅に増加しました。上記以外にも様々なメリットを持つiDeCoですが、まだまだ知名度が高いとは言えない面があります。
それはなぜでしょうか。筆者は海外ETFの研究家として2007年から啓蒙活動を行ってきましたが、その時の状況と似ています。顧客が「コストの安いETF」を利用した投資に向かうことは、金融機関の従来の販売手数料3%、信託報酬1.5%の「投資信託販売ビジネス」が成り立たなくなる可能性を含んでいるためです。海外ETFなどETFの認知拡大は「儲からない」ビジネスの広がりを意味してしまうために、積極的に宣伝する「インセンティブが働かなかった」のです。しかしコストに敏感な世界中の富裕層や研究熱心な投資家は、ETF市場の規模を飛躍的に拡大させ、そのメリットを享受してきました。日本においては日本銀行のETF投資もあって、最近になって日本の投資家にもETFへの認知がようやく広がりつつあります。
iDeCoの税制メリット、低コストなどは将来の自分年金作り、資産形成のために有効です。しかし金融機関にとってのインセンティブが少ないために、金融機関から勧められることが少ないのではないかと思われます。iDeCoも今後認知度が広がり、ETF同様に利用者が飛躍的に増える日がいずれ来ると確信しています。
© 2017 おカネ学(株) (2017/01/04)