「お節介」VS「気配り」

伊東久

伊東久

テーマ:おもてなし経営のすすめ~働きがいを求めて~

 皆さんは「お節介」と「気配り」の違いはお分かりですか?
 気配りが行き過ぎてしまうと、「いやいやそこまでしなくても」と、お節介の分野になってしまうのでしょうか?いや、そんなことありません。私は、これらは全くの別物だと思っています。

お客様の目線を見ている店員


 よく利用する和食料理屋さんで、いつものように軽く晩酌をしていました。料理を手に取ろうと割り箸を割ろうとしたところ、力を入れても割れなかったのです。「おかしいな、この店の箸、こんなに硬かったかな?」と不思議そうに箸を眺めていたら、すぐに店員さんがやってきて、「すみません、最近この箸を新しく導入して、今までより少し硬めなのです。大丈夫ですか?」と気配りの一言がありました。私は「ああ、大丈夫です。ありがとう」と言って、少し力を入れて割ることができました。きっと、新しいタイプの割り箸の使い勝手に、ご不便をおかけしないかの心配をしていたからこその気配りなのかも知れません。この場面、もし店員さんが声をかけてくれなかったら、たとえ自分で力を入れて箸が割れたとしても、心の中にモヤモヤが残ったまま食事をすることになりませんか。
 そのまま食事を始めると、お酒のお代わりや、お皿の回収など、次々とテーブルにやってきて、「お飲み物はそろそろ如何ですか?」や「お下げしますね」と言葉をかけて気配りしてくれます。
 私の隣のテーブルにいた二人組のお客が、頼んだ料理のお皿を持ち上げて周りを見回していました。すると、その店員さんが即座にやってきて、「狭そうなので隣のテーブル付けますね」と言って、空いているテーブルを寄せていました。そのお客様はとても嬉しそうにしていました。この店員さん、次々にお客様の様子を見て、動き回っていました。活き活きした笑顔で、一生懸命にお客様のために気配りをしています。

 ここで気づきました。気配りとは、お客様の目線から感じるものなのだと。

モノだけを見ている店員


 ある都内の居酒屋で、ドリンクがグラスの半分以下になると、やたらと「お代わり如何ですか?」と勧めてくるところがあります。きっとお店のマニュアルなのでしょう、その徹底ぶりは見事です。この店であるとき、飲みも終わりに近づいてグラスを飲み干し、「会計お願いします」と店員さんを呼びました。手に財布を用意してその店員が伝票を待って戻ってくるのを待っていました。すると、別の店員がやってきて、「お代わり如何ですか?」とドリンクのお替りを勧められました。「いやいや今会計を頼んだところです」とややムッとした表情で言い返しました。この店員さん、店のルールだからグラスの残り具合しか見ていないのだろうなと思いました。

 お節介とはこういうことなのでしょう。

「お節介」と「気配り」の違い


 皆さん、おわかりでしょうか、気配りとは、相手の困っていることを助けることで、お客様に目線を合わせて様子を察知していないと気づかないことなのです。まさに気配りは、相手にとって多すぎることなく、困りごとをお手伝いすることで成り立ちます。
 変わってお節介は、お店の都合で一方的に相手に押し付けてしまうことなのです。目線を無視して相手に強要してしまっては、余計なお世話にもなるかも知れません。宴会の席に必ずいるいわゆる鍋奉行と言われる人が、「まだ駄目だ!」と言って食べ時を強引に指示するのとどうやら光景が似ています。

相手を想う気配りの原点


 相手を想う気配りは、本当に相手の立場に立ってこそ成り立つものだと思っています。では、どうしたらそういう気配りができる人になるのでしょうか。
 一つは、お客様の来店目的をしっかりと考えること。二つ目に、その目的に対してどうしたら迎える側の役割が果たせるかを考えることだと思います。そのための思考を付けていかなければなりません。お客様の動きには必ず理由があると思っています。入店から食事、退店まで、一連の中での動きにどれだけ敏感になれるかは、お客様の来店目的とそれに対して役割を果たそうとする責任の表れなのです。店のルールばかり押し付けることのないようしていきたいですね。

 私のコンサルティングでは、顧客の立場を最優先で考えられる思考を身につけるための組織活性化プログラム「人が集まる店づくり」を用意しています。これからのAI時代だからこそ、人の気配りが本当の顧客満足度を高め差別化の要素になると思います。

 詳しくはこちらの組織活性化プログラムⅣ.人が集まる店づくりへどうぞ→https://www.omotenashikeiei.co.jp/事業内容/組織活性化プログラム/

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伊東久
専門家

伊東久(経営コンサルタント)

株式会社おもてなし経営研究所

現場での接客と、組織マネジメントの経験を併せ持った視点から、顧客に愛され支持される「おもてなし経営」を目指した組織づくりを支援。従業員の力を引き出すコンサルティングと豊富な経験談を交えた研修が好評。

伊東久プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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