「詰問」VS「質問」〜管理職たちの悩み~
「接客とは何ですか?」
あるファンション用品店の女性店長からこう質問がありました。クライアント様と、お客様の満足度を上げ売上向上につなげるために、どう取り組んだらいいかの面談をしているときのことです。この店長によると、「長年いろいろと考えてはいるのですが、そう質問されたときに何と答えたらいいのか、いつも悩んでしまいます」ということでした。その質問に私は即座に答えました。
「接客とは相手を安心させることです」
こう答えるとその女性店長、目を丸くしてしばらく放心状態になりました。思ってもいない答えが返ってきたのでしょう。しかも即座に一言で返事があったのですから。後で聞いてみたのですが、「『喜ばせる』や『幸せに』という言葉が返ってくるものだと思ってました」とのことです。そのとき私はこう返事をしました。「相手の喜びや幸せはこちらがつくるものではありません。相手によって感性はそれぞれですから。それよりも、相手の不安を解消してあげることに力を入れましょう」と。
人は販売店、飲食店に限らずある場所に訪問するとき、必ず何かしらの緊張感を抱いています。もちろん知人宅への訪問の際もそうでしょうし、これが恩師ともなればかなりの緊張でしょう。それでは、あなたが知人宅へ訪れることを想定してみましょう。まず思い浮かぶのは、「相手の様子はどうかな?」ではないでしょうか。ご機嫌や挨拶の仕方、気持ちよく歓迎してくれるかどうか、いろいろと推測しながら玄関の前にたどり着いているかも知れません。もちろん用件にもよりますが、パーティなら「大歓迎してくれるかな?」という期待感から、「元気よく挨拶しよう!」と意気込んでドアを開けるかも知れません。しかし、「本当に元気よく挨拶でいいかな?」と、実はこれはこれでちょっとした不安なのです。
先日、靴修理店の前を通りかかりました。ふと靴の底が傷んでいて、もう靴底が減ってかかとの本体の部分まで傷んでいるので、きっと直らないだろうと勝手に思っていたことを思い出しました。「ちょっと聞いてみようかな?直せるのかな?無理ですと言われるかも知れない」そう思っているのもつかの間、靴修理店の前を通り過ぎてしまいました。少し歩いてからまた戻って、勇気を出して靴屋さんのカウンターに着きました。「あの~、」と弱々しい不安そうな言葉づかいでたずねてみました。すると店員さん「あっ、それでしたらご心配なく、全て綺麗に直せますよ!」と笑顔で返答してくれました。その後、修理の方法を詳しく説明してくれ、出来上がりの状態までをサンプルを見せながら丁寧に教えてくれました。「この靴はどれくらいの頻度で履いているのですか?」とさりげない質問があり答えると、「それでしたら、今直せばあと1年は大丈夫ですね」と、嬉しい一言をもらえました。「さすがプロ!」と心の中で思えたほど、的確で頼りがいのあるアドバイスでした。修理代はその後で教えてくれましたが、価格はあまり気にならないと思えるほどの価値観をもらえました。
接客とは、お客様が来店する前の心境、期待感をどれだけ感じることができるかにかかっていると思います。少なからず何かを期待して来店しているのですが、その期待通りかの不安が常に付きものなのです。その不安に反すると、がっかり感や残念な気持ちになってしまい、拒否をするか、帰りたくなる心境になっていきます。もし、そのまま訪問しても最初の残念感を払拭するには、相当の労力が必要でしょう。第一印象の大切さとは、こういうことかも知れませんね。
私のコンサルティングでは、「お客様はなぜここを選んだのでしょう?」「お客様は何を期待して来たのでしょう?」と考えることから始めます。その期待に応えることから全ての接客がスタートするからです。その上でのモノの準備、会話の準備、心の準備がお客様の不安を取り除くことにつながっていくのだと考えます。お客様が「ここにして良かった」と思える瞬間を大切にすることから初めることが基本的な考え方です。
そのために、CS覆面調査(ミステリーショッパー)やFGI調査(消費者インタビュー)を通じて、本来のお客様が求めていることを十分に認識した上での、接客指導や販売戦略のアドバイスをしています。
お客様がこの店を選んだ目的を「安くて速い!」というニーズだとします。そこに、ゆったりとした接客でいろいろなセールストークを使い、親切丁寧に対応した結果、説明の途中で帰られてしまわないよう気をつけたいですね。
「接客」に関するコンサルティング・研修について、お気軽にこちらからお問い合わせください。株式会社おもてなし経営研究所→https://www.omotenashikeiei.co.jp