「もう疲れた」…いま自営業・経営者に必要な「メンタルケア」とは

小本紀子

小本紀子

テーマ:経営者の悩みと心のケア

自営業や経営を営むかたは基本的にその仕事が好きなかたが多く、仕事をすることで疲れてしまうことは少ないかもしれません。

しかしトップに立つ責任の重さ、売上や競合他社との争いによるプレッシャー、本来の業務以外の雑務など、仕事以外の部分で精神的に疲れてしまうことは十分にあり得ます。

そこで今回は知らず知らずのうちに疲れがたまってしまう自営業、経営者に必要な「メンタルケア」についてご紹介します。

気付かぬうちになっている可能性が高い「経営疲れ」とは?

経営者の中には、親の代から続く自営業や会社を継いだため、好きでもやりたい仕事でもないが仕方なくやっているというかたもいらっしゃるかもしれません。しかし基本的には経営者になるかたはその仕事を好きで始めた場合が多く、仮にそうでないにしても仕事自体は好きというかたがほとんどではないでしょうか。

自分の好きなこと、もしくは仕事自体が好きで働いているだけであれば、肉体的に疲れることはあっても、精神的に疲れることはないでしょう。しかしどんなに好きなことであっても、経営者ともなれば仕事以外の部分で多くのストレスやプレッシャーを抱えることは珍しくありません。

「経営疲れ」とは、なかなか売上が上がらず資金繰りに苦しんだり、自分の判断が社員の生活を左右してしまうかもしれないというストレスやプレッシャーと日々向き合っていかなければならないところから生まれてくることがほとんどです。

もちろん、経営がうまくいっているときはまだそれほどストレスやプレッシャーもないかもしれません。しかし、ひとたび経営悪化や社員の離反などによって心労がたまれば、蓄積された経営疲れが一気に表に現れるといったケースは少なくないのです。

経営者の心の状態は従業員にも広がる

経営者も人間ですから疲れることは当然あるでしょう。
肉体的にはもちろん、前項でご紹介したような理由で精神的に疲れてしまうこともあるかもしれません。しかし経営者の疲れは単に自分だけの疲れで終わることはなく、場合によっては従業員にも伝わっていき、全社的に悪い雰囲気をつくりだしてしまうことがあります。

従業員にとってみれば、経営者が疲れているところを見れば、資金繰りが上手くいかない、売上が下がっているなどマイナスなことが原因であると感じ取ります。

そうなれば仮にそうしたことが原因ではなかったとしても、マイナスな雰囲気が全社的に広がり、最終的には従業員のモチベーション低下にもつながってしまいます。

従業員のモチベーションが低下すれば、当然、売上が減少する可能性が高まります。
そして売上が減少すれば、経営者の精神的な疲れはさらに増えるという悪循環が起こり、状況はさらに悪化することになります。

そこで重要になってくるのが、経営者のメンタルケアなのです。

「メンタルケア」の重要性

経営者が精神的に落ち込み、経営疲れを起こしてしまう要因はさまざまであり、その結果、従業員や会社全体に対し悪い影響を与えてしまうことは非常に大きな問題です。
しかしもっとも大きな問題は、経営者の経営疲れをケアできる人間が社内に誰もいないことです。

経営者や上司が部下や同僚の疲れ、不安に対してケアをすることは可能です。また国を挙げてヘルスケア・マネジメントに取り組むようになったこともあり、社会的にもそうした体制が整いつつあります。
しかしそうした体制も従業員に対するものであり、経営者のヘルスケア・マネジメントはまだまだ進んでいないというのが現状です。

また経営者自身も肉体的な疲労であれば、休息を取ったり、病院に行ったりすることで一定の効果を得ることができます。しかし精神的な疲れはなかなか気付かないことも多く、単に休息を取ったからといって肉体的な疲れと比べ、解消したかどうかがわかりづらいといった側面もあります。そのため常に疲れを抱えたまま仕事をしなければならないといったことになりがちです。

こうした精神的な疲れを防ぎ、経営者が心の健康を取り戻すためには、経営者のためのメンタルケアが非常に重要な意味を持っているのです。

「メンタルケア」の受け方

経営者がメンタルケアを受けるには、当然ながら自分が精神的に疲れていることを自覚する必要があります。

一般的に精神的な疲れは身体面、心理面、行動面などあらゆる面でその症状が発生します。
具体的には肩こり、腰痛、だるさ、頭痛、不眠。不安、イライラ、集中力の低下。過食、散財などがその症状です。これらの症状が出たら、精神的な疲れのサインの可能性がありますので、まずはセルフケアを行ってみてください。

セルフケアは、例えば規則正しい生活をして朝に太陽の光を浴びる、適度な食事と運動、休息。気分転換になる趣味を持つ、できないときは無理をしない、焦らない、責めない、自分以外の意見を聞き入れるなどそれぞれに最適な方法を見つけ、試してみることをおすすめします。

それでも症状が改善しない場合は、専門家に相談することを検討しましょう。
重要なことは一人で抱え込まないことです。経営者の心の健康は、従業員の士気にも影響し、ひいては会社の業績にも関与しますので、少しでもおかしいなと感じたら早めの対応をするよう心掛けてください。

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小本紀子
専門家

小本紀子(公認心理師)

紀凛株式会社

経営上の課題、トラブル、悩み。カウンセリングによって経営者自身の心と向き合い考えグセ・行動グセを分析。心のモチベーションを回復させて創造力・問題解決力を引き出し、ビジネスの成長を支える。

小本紀子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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