経営者と「不眠症」、薬に頼らず眠れない毎日を断ち切るには?

小本紀子

小本紀子

テーマ:経営者の悩みと心のケア

経営者の中で不眠症に悩まれているかたは多いのではないでしょうか。

厚生労働省が毎年行っている「国民健康・栄養調査(平成28年度版)」によると、「ここ1ヶ月間、睡眠で十分な休養が取れているか」の問いに対し、全体では19.7%が取れていないと回答していますが、40代では26.6%、50代では26.2%と経営者が多い年齢層では、全体平均より高めの結果となっています。

そこで今回は、経営者が陥りやすい不眠症の原因、向き合い方、受け入れ方についてご説明します。

「不眠症」の原因

不眠症とは単純に夜、眠れない病気と思われるかもしれませんが、それは「入眠障害」といって不眠症の中のひとつのタイプに過ぎません。

ほかにも睡眠中に2回以上目が覚めてしまい、再入眠に時間がかかる「中途覚醒」。起きるべき時間よりも2時間以上も早く目が覚めてしまい、その後眠れなくなってしまう「早朝覚醒」。そして眠ってはいるものの、熟睡した感じを得られない「熟睡困難」の4つのタイプがあります。

次に不眠症になってしまう原因ですが、一口に不眠症といってもその原因はひとつではありません。不眠症にかかる原因は大きく「心理的原因」、「身体的原因」、「精神医学的原因」、「薬理学的原因」、「生理学的原因」の5つに分けられます。

「心理的原因」はビジネス、プライベートなどさまざまな場面で降りかかってくるストレス。「身体的原因」は外傷、湿疹などの痛みを伴う病気、けがや、頻尿、花粉症など。
「精神医学的原因」は、不安や抑うつなど精神的な病気。「薬理学的原因」は日常的に服用している薬や、アルコール、ニコチン。カフェインなど。
そして「生理学的原因」は生活リズムのずれによる昼夜逆転の生活や時差ボケなどが挙げられます。

このように不眠症はタイプもひとつではなく、その原因もさまざまです。しかしその原因を細かく見ていくと、ストレス、不安、多忙による生活リズムのずれなど、多くの経営者に当てはまりそうなものが見受けられます。

実際、日本を代表する企業、パナソニックの創業者である松下幸之助氏が不眠症に悩まされていたという話しは氏の数あるエピソードの中でも有名な話しのひとつです。逆にいえば世界的に有名な経営者であっても、不安やストレスを抱え、不眠症に悩むことも珍しくないということになります。

薬による悪循環

不眠症に多くの原因があるように、その克服方法もひとつではありません。

そしてその中でも、もっともポピュラーな方法は睡眠薬です。不眠に悩むかたであれば一度は服用したことがあるのではないでしょうか。しかし睡眠薬によって不眠症を完全に克服することは簡単ではありません。なぜなら睡眠薬は不眠症になった原因を解決する方法ではないからです。

睡眠薬の使用は、今、眠れない状態を物理的に解決することは可能です。
しかし睡眠薬も常に服用していると耐性ができてしまい、少しずつその効き目は薄れてきます。そうなればより効き目の強い睡眠薬が必要となり、強くなればなるだけ身体にかかる負担も大きくなります。

しかも不眠症の根本的な原因は解決しませんので、いつまでも薬を止めることができなくなってしまうのです。
これでは仮に眠れるようになったとしても、それ以上に副作用や依存性など大きなリスクを背負うことになります。そういった意味で睡眠薬の服用は、不眠症の克服としてはおすすめできる方法ではありません。

「不眠症」との向き合い方・受け入れ方

睡眠薬を使わずに不眠症を克服するには、医師と相談のうえ、しっかりと向き合いその原因となるものを明確にすることが重要です。

仮に生活リズムのずれや病気、けがが原因であるのであれば、休養を取る、病気を治すことで症状は大幅に軽減します。問題は心理的なことが原因である場合です。

ストレス、不安、抑うつといった心理的、精神医学的な原因による不眠症の場合、医師による適切な治療が必要になることもありますが、その前提として自分が不眠症であることを自覚し、それを受け入れることが重要です。

開き直りではありませんが、まずは自分が不眠症であることを受け入れることで、どう向き合っていくべきかが見えてきます。

どういった規模であれ、経営者ともなれば仕事に対するストレスを抱えることは何の不思議もありません。そして家族や社員の将来を背負っているわけですから、不安や恐怖を感じることは当たり前です。あの松下幸之助氏でさえも、不安を感じていたのですから、不安を感じること自体は、何もおかしなことではありません。

重要なことは、不眠症であることを受け入れたうえで、ではどうするべきかを考えることです。

不安を解消するために今以上に働くことで克服できるかもしれません。趣味を見つけ気晴らしをすることで克服できるかもしれません。その克服方法は人それぞれですが、これもすべて自分が不眠症であることを受け入れなくては何も始まりません。

不眠症は決して珍しい病気ではありません。冒頭でもご紹介したように、40~50代であればほぼ4人に1人は何らかの睡眠障害を抱えているのです。経営者は孤独で何でも一人で抱え込んでしまいがちですが、少しでも眠れないと感じたら早めに医師やカウンセラーなど信頼できる専門家に相談をし、一緒に解決方法を探していくことをおすすめします。

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小本紀子
専門家

小本紀子(公認心理師)

紀凛株式会社

経営上の課題、トラブル、悩み。カウンセリングによって経営者自身の心と向き合い考えグセ・行動グセを分析。心のモチベーションを回復させて創造力・問題解決力を引き出し、ビジネスの成長を支える。

小本紀子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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