「相談したのに何も変わらなかった」のはなぜか【才藤 投稿】

内藤明亜

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テーマ:倒産の周辺

内藤明亜事務所の才藤です。

相談したのに、何も変わらなかった。一度そう感じて、それきり誰にも話していない経営者の方へ書きます。




1.「あのとき行っても、無駄でした」——ある経営者の言葉から


「一度、相談には行ったんです。でも、無駄でした」

Aさんは電話口でそう言いました。少し笑いながらでした。

行ったのは一年半前だといいます。それきり、どこにも足を運んでいません。

このコラムでは「あなた」を、一度は誰かに相談した経営者ご本人として書きます。

2.Aさんに何が起きていたのか


関西で、看板の製作と取り付けをする会社です。従業員は六人、業歴は二十年余り。

二人で始めた会社でした。もう一人は十年前に抜け、以来Aさんが一人で回しています。

もとは、大型の商業施設から回ってくる仕事が柱でした。

その元請けが五年前に取引先を絞り、Aさんの会社は外れます。

代わりに増えたのは、小さな店舗の看板の張り替えです。一件あたりの単価は、三分の一ほどになりました。

一年半前、Aさんは商工団体の相談会に行きました。決算書を一期分だけ持って。

返ってきたのは、経費の見直しと、補助金の案内と、値上げの検討でした。

どれも正しい話です。ただ、その三つはすでにやったあとでした。

Aさんは礼を言って帰り、その日から誰にも相談しなくなります。

いまは月末が来るたびに、支払いの順番を並べ替えてしのいでいます。

3.助言が悪かったのではありません


ここで一度だけ、前提をひっくり返させてください。

あの日もらった助言は、たぶん間違っていません。

間違っていたのは、渡されたものの種類のほうです。

あなたが受け取ったのは、地図です。現在地の印が付いていない地図です。

地図が正しくても、自分がどこに立っているかわからなければ、一歩も動けません。

規模が違えば、打つ手も変わります


出回っている助言は、たいてい、もう少し大きな会社を想定して作られています。

けれど実際に行き詰まっているのは、もっと小さな会社です。

帝国データバンクが2026年8月10日に発表した7月の集計があります。

倒産した会社のうち、資本金が個人と1000万円未満のものが726件。全体の70.0%でした。

数のうえでは、あなたの規模のほうが当たり前なのです。

それなのに、その規模を前提にした話は、あまり出回っていません。

二度目に行かない理由


一度うまくいかないと、人は「相談そのものが効かない」と結論を出します。

自分の状況を一から説明し直す気力も、そのころには残っていません。

説明するには、まず自分で数字を並べ直さなければならない。それが一番おっくうなのです。

ただ、あの日にわかったことも一つあります。

経費の見直しと補助金と値上げでは、もう足りない。そこまでは、はっきりしました。

一度目は無駄だったのではなく、そこまでで止まっているだけです。

相談が嫌になったのではなく、現在地を確かめる作業から遠ざかっただけ。そういうことではないでしょうか?

まだ相談する段階じゃない、と思っていませんか。

4.わたしたちがお伝えしていること


  • 何かを決めてからでないと相談できない、ということはありません
  • まず、いまの状況をそのまま伺います
  • 続ける道も、区切りをつける道も、選択肢として並べます
  • 大きな方針を決めてから、いつ、何を、どの順番でやるかの計画に落とします


一度の打合せで、会社のことがすべて分かるわけではありません。

たいていは二回、三回と打合せを重ねます。一回目には出てこなかった借入や約束ごとが、二回目に出てくることも珍しくありません。

Aさんの場合も、三回かかりました。

一回目は、ほとんど話を伺うだけで終わりました。毎月の支払いの順番を、何を基準に決めてきたのかも、ここで伺いました。

二回目に、選択肢を並べました。続ける道と、区切りをつける道です。それぞれの先で手元に何が残るかも、一緒に書き出しました。

三回目に、Aさんは大きな方針を決めました。そこから先は、月ごとの計画づくりです。

どの道を選ぶかは、ご本人が決めます。わたしたちは、決めるための材料と、決めたあとの段取りをそろえます。

一年半前の相談会で出てこなかったのは、区切りをつける道を含めた選択肢と、それを重ねて詰めていく時間でした。

5.どうか、一人で抱え込まないでください


相談して何も変わらなかった経験は、あなたが動かなかった証拠ではありません。

持って行くものが決まっていなかった。それだけのことです。

一度目がうまくいかなかった方ほど、二度目は早く進みます。ご自分の会社を、前よりよく見ているからです。

相談したからといって、倒産することにはなりません。

ご本人が動けないときは、ご家族からのご相談も受けています。

内藤明亜事務所/〒169-0072 東京都新宿区大久保1丁目1-13/03-5337-4057

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専門家

内藤明亜(経営コンサルタント)

内藤明亜事務所

30年間で1000人以上の経営者の経営危機の相談に対応した実績。自らの倒産経験を活かし、経営者の苦悩や困難に寄り添い、倒産後の人生まで見据えた対応が可能。倒産処理に精通した弁護士の知り合いも多い。

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