金・プラチナ投資について考える

西山広高

西山広高

テーマ:FP

貴金属(金・プラチナ)による資産形成・運用について考えてみたいと思います。

最近、株高気味で金・プラチナの価格は低迷しています。金・プラチナは比較的安定した投資商品として人気があります。資産形成を考える際にポートフォリオ(資産の組み合わせ)に組み込むことを検討する価値は十分に有るでしょう。
金・プラチナが貴金属投資の中心になると思いますが、投資であることには違いありません。価格が下落するリスクも当然あります。投資にあたっては十分にその特徴を理解したうえで行う必要があります。

それぞれの特徴を知り、投資を検討するうえでの参考にしていただければと思います
(特定の商品の購入を促すものではありません。あくまでも投資判断は「自己判断」で行っていただきますようお願いします。)


金とプラチナの価格


さて、金とプラチナというと身近な貴金属ですね。婚約指輪や結婚指輪などの指輪やネックレスなどの宝飾品をお持ちの方も少なくないと思います。
よくクレジットカードなどは「一般カード」の上に「ゴールドカード」。さらにその上に「プラチナカード」「ブラックカード」などとグレードが設定されています。
限度額が高くなったり、補償範囲が大きくなったり、サービスの幅が増えたりするわけですが、その分年会費も上がるというのが一般的です。
話がそれましたが、このような設定では、ゴールドよりもプラチナが上に格付けされています。
過去の金とプラチナの価格の歴史を紐解くとほとんどの期間「プラチナ」の価格のほうが金より高くなっています。
ところが、ここ最近の価格は金とプラチナが逆転し「金」のほうが高くなっています。

なぜでしょう

まず、モノの値段が形成される理由(ファンダメンタル)を知る


まず、すべての取引の基本として、モノの値段は需要と供給のバランスで決まります。欲しい人と買いたい人の値段が折り合ったところで価格が決定します。
欲しい人がたくさんいて、売りたい人あるいは売るものが少なかった場合にはモノの価格は上がります。逆に売りたい人、売るものがたくさんあっても買いたい人、欲しい人が少なければモノの値段は下がります。
まずこれがすべての取引の基本です。
そして、モノの値段を形成する要因を「ファンダメンタル(ズ)」といいます。
商品の価格はこれからの予測を反映します。例えば、あるものが「手に入りにくくなる」と予測される場合値段が上がり、「これから市場に大量に供給される」と予測される場合には下がります。
また、これから需要が高まる(=欲しい人が増える)場合には値段が上がり、欲しい人が減る場合には下がります。

貴金属の「需要と供給」の要素

まず、需要の面から考えます。
貴金属は宝飾用だけが用途ではありません。工業用や歯科用などにも使われます。金やプラチナに投資する際には、どのような用途に使われ、それらの用途が今後どのように推移するのか、といったことも重要な要素です。

一方、供給面ではどうでしょう。
最大のキーワードは「稀少性」です。
金は古代エジプトや中国の出土品にも使われているように6000年の歴史があり、これまでに約17.6万トンが採掘されたといわれています。
まだ採掘されていない金の量は10万トン程度。そのうち採掘可能なのは5.2万トン程度。あと20年弱で取れなくなる計算です。(2013年GFMS調べ 東京商品取引所HP掲載データより)
プラチナは金に比べると歴史が浅いため、採掘量は4500トンで金の採掘量の3%以下です。また年間の採掘量も175トン程度で金の1/10以下。一方、このペースで採掘し続けた場合の可採年数は400年近いといわれています。

金とプラチナ、どちらも宝飾品に使われますが、金の宝飾品への利用率は48%程度、プラチナは35%程度です。
また大きな違いは、金の工業用利用は7.5%程度ですが、プラチナは60%が工業用です。ですので、プラチナの価格は世界経済の景気にも影響を受けます。プラチナを必要とする製品の生産量が高まれば需要も増えることになります。プラチナの工業需要の約半分は自動車の排ガス触媒用です。いま、自動車業界がEVへ急速に傾こうとしている中、プラチナの今後の需要はどうなるのか気になるところです。
また、プラチナは産出国の状況に影響を受けます。生産国が南アフリカとロシアの2国で世界全体の9割近くに達し偏っています。一方、金の最大産出国は中国(約450トン)ですが、100トン以上算出している国が9か国あり、プラチナに比べると偏りは少なくなっています。
(外務省HP掲載 出典:U.S.Geological Survey - Mineral commodity summaries 2017 Gold - World Mine Production and Reserves (2015) (アメリカ地質調査所「ミネラルコモディティサマリーズ 2017 金 - 世界の産出量と埋蔵量 2015年」)より)
もう一つの供給源として最近大きくなっているのはリサイクルです。廃棄されるものに含まれる貴金属を取り出し、再利用することで市場に供給される分が増えてきています。年を追うごとに再利用の取り出し技術が高まることで供給源として大きくなるでしょう。

貴金属への投資において、もう一つ重要なのはほかの投資対象と比べた場合の安定性です。金やプラチナはインフレに対して強いと言われます。インフレーション状況下では通貨の価値が相対的に低下します。しかし、貴金属で保有していれば価値が低下しにくいと考えられます。
株式投資では投資した会社が倒産すると評価がゼロになってしまいますが、貴金属は全く価値がなくなるということもありません。


投資対象としての金・プラチナ

最近は株高気味で金・プラチナの価格が低迷しています。
金融市場で株価が高く推移しているとき、上昇傾向の時には金・プラチナに投資されていた資金が金融市場に流入し、結果として金・プラチナの価格は下がると考えられます。
逆の見方をすれば、株価に頭打ち感が出た時や株価の下落局面では金・プラチナの価格は上がります。
また、有事の際。すなわち社会情勢が不安定になると金・プラチナの価格は上がります。
その転換点を見極めるのは簡単ではありません。短期売買で利益を得ることを目的として考えた場合、金やプラチナに投資をするのはお勧めできません。長期で資産形成をしようと考える場合には「分散投資」の考え方が重要ですし、そのポートフォリオの中に金やプラチナを組み込むのは有効だと思います。

プラチナと金のどちらかに投資するとすればどちらを選ぶか

さて、ここからは私の私見です。
金とプラチナの価格が逆転しているのは金のほうが投資対象として魅力的と考えられるからだと考えます。プラチナの需要の60%を占める工業需要がどうなるか、産出国の地勢的リスクなどを考えるとプラチナのほうが金よりもリスクは高そうに感じます。
そもそも、貴金属での資産形成は安定性が魅力。実需だけではなく、投資対象として位置づけて金とプラチナを比較した場合、金の価格の方が安定的でリスクが小さいと考えられます。
歴史的に見た場合、プラチナの価格の方が高いことが多いのですが、現在の薬店している状況は一時的なものではないのではないかと私は思います。
投資対象として金とプラチナのどちらかを選ぶなら私は「金」を選びます。
これまでに資産として蓄えられ、認められてきた歴史。今後供給量が減ると見込まれること。そして、何より黄金色の輝きはプラチナに比べ美しいと個人的に感じるからです。
大きく儲けることを目的とした投資には向かないでしょう。安定性という意味では魅力があります。10年、20年先を踏まえて資産形成をするならば金のほうが投資対象として魅力的だと思います。

繰り返しになりますが、この記事は、特定の商品への投資を促すものではありません。あくまでも投資判断は「自己判断」でお願いします。

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西山広高
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西山広高(ファイナンシャルプランナー)

西山ライフデザイン株式会社

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