「持ち家」か「賃貸」か 2
以前のコラムでも書きましたが、私が相続に関する相談をお受けしているとお話しすると多くの方が「うちにはもめるほど資産は無いから」とお答えになります。
相続でもめるのは資産の多寡とは関係がないという話は前回のコラムでも書かせていただきました。
相続でもめると様々なデメリットがあります。
もめた場合のデメリット
相続人間で話し合いがつかず、遺産分割行儀がまとまらない場合、様々なデメリットが発生します。
・預貯金がおろせない
・分割方法が決まるまで財産の活用がしにくい、できない
・相続税減額につながる配偶者の税額軽減、小規模宅地の評価減などの控除が使えない。⇒税額が増える
・不動産の売却や建替え、修繕ができない。
実際には、上記手続きが全くできないわけではないのですが、相続人全員の同意と印が必要になりますのでかなり面倒です。
さらに裁判所の調停や裁判となると期間が長期化し、様々な費用が掛かるようになります。
まだ対策をしていない人の心の中は…
ほとんどの人が、相続発生で身内がもめることを望んではいないはずです。
中には
・自分が死んだ後のことは残った人たちで勝手にやってくれ
・まだまだ死ぬのは先の話。まだ検討しなくても大丈夫
・うちは両親も子供たちも仲が良いから大丈夫
・残った人たちで法定相続分通りに分けてほしい
・遺言書を書いてあるから大丈夫
と考えている人もいるでしょう。
でも、いざ相続が発生するとその手続きや話し合いの過程でもめてしまうことは少なくありません。
相続が発生すると…
相続が発生するとその方の資産は誰かに引き継ぐことになります。
今は核家族化が進み、家族がみんな同居しているということは少なくなりました。ご家族の誰かが同居していて、他の家族は既に家を出てしまっているという家もあるでしょう。
生前、親の介護や生活の手伝いをしていたり、先祖代々の墓を誰が維持するか、事業を誰が継ぐか、などということを考えなければいけないケースもあるかも知れません。
どう相続するかについて残された人たちの間で認識が完全に一致していなければ、何かしらのトラブルになる可能性があります。
もめる要因(ほんの一部です)
相続人それぞれの立場によっても考えが違うことがあります。
・もらえるものがあるなら欲しい。けれど負担になるものは引き継ぎたくない。
・兄弟姉妹は平等に分けるのが当たり前
・これまで親の面倒を見てきたのだからその分の評価をして欲しい
・兄弟の一人は親から贈与(住宅資金の提供や教育資金など)を受けているのでその分を考慮してほしい
・相続人本人同士は妥協しようと思っても、相続人の配偶者が納得しない
・実家の不動産は相続しても誰も住まないのでみんな欲しがらない。(けれど、子供のころ育った思い出深い場所なので、売却するのは抵抗がある)
・親がやっていた小さな会社の株式を相続したところで、売るに売れず、もらっても困る。
また、話し合いの場の設定や資産の中身についてももめることがあります。
・兄貴は長男なんだから、兄貴がみんなのスケジュール調整するのが当たり前…お互いに協力する姿勢がない
・親が要介護や認知症になった後、しばらくたってから亡くなり、いざ相続が発生したら残っている財産が思いのほか少ない…ほかの相続人の使い込みを疑う
などなど
揉めそうな要因は挙げればきりがありません。
もめないための相続税対策を考える
人間の心理として「負担は避けたい」「もらえるものは欲しい」というのは当然かもしれません。これを事前に最小限に抑えるには、亡くなられる前の対策が不可欠です。
また、相続税に関する知識が全くないと二次相続まで考えた時にトータルで支払う相続税額が大きくなってしまう可能性があることなども知らずに手続きを進めてしまうことにもなります。
相続にかかわる状況はそれぞれのケースで様々です。全く同じ相続はあり得ません。資産状況、家族の状況、様々な拝啓、そして本人の希望。それぞれをよく考えたうえで、実現可能で、相続人全員が納得できるような相続対策を検討する必要があります。