捨てる弁当は、なぜ持ち帰ってはいけないのか
不正アクセスのニュースに、なぜこんなに不安になるのか(前編)
10月に入ってから、不正アクセスや情報漏えいのニュースを見ない日がありません。ソフトウェアの会社、中古車情報サイト、電子書籍、ふるさと納税。数百万件、数千万件という数字が、毎日のように流れてきます。
10月24日には、GMOインターネットグループが不正アクセスを受け、施行されたばかりの「能動的サイバー防御」の適用を国に要請しました。その数日前には、首相が自らXで、ウェブサイトを動かすプログラムの重大な欠陥への備えを呼びかけています。
守る側の会社でさえ破られ、首相までが呼びかける。世界中で、時代の危機感のようなものが一気に噴き出している。そんな空気を感じている方も多いのではないでしょうか。
「大変らしい」だけが流れてくる
ただ、こうしたニュースに触れたとき、多くの人が抱くのは、「大変らしいことは分かるが、自分は何をすればいいのか分からない」という感覚だと思います。
首相が呼びかけたプログラムの件も、実際に修正するのはウェブサイトを運営する会社で、私たち利用者が自分で何とかできる問題ではありません。けれど、そのことが伝わらないまま「大変だ」という空気だけが流れてくるので、不安ばかりが膨らんでいきます。
不安の正体が見えないから、怖い。ならば、まず必要なのは「分類」ではないかと私は考えています。何が起きていて、誰が、何を心配すべきなのか。それを分けてみるだけで、霧はずいぶん晴れてきます。
情報も、モノと同じように流れている
私は長く物流の現場にいましたが、モノの流れを整えるとき、最初にやるのはいつも「分ける」ことでした。日にちごと、物件ごとに分け、何を、どこに置き、どこへ運ぶのかを決める。製品の形状に合わせたパレット選びも、倉庫のロケーションの運用も、すべては分類から始まります。すべてを同じように扱おうとすると、倉庫はたちまち混乱してしまうのです。分けるのは、止めるためではありません。滞りなく流すための、実務なのです。
情報も同じです。私たちの名前や住所、パスワードやカードの番号は、会社から会社へ、システムからシステムへと、目に見えないところを流れています。そしてニュースは、その流れのどこかで漏れが起きたことを、ひとまとめに「情報漏えい」と呼んで伝えてきます。
けれど、流れているものも、漏れたものも、本当は一つではありません。
法人の心配と、個人の心配は違う
まず分けたいのは、「誰が狙われているのか」です。
法人が心配すべきなのは、ランサムウェアをはじめとする攻撃です。システムに入り込まれ、データを人質に取られ、事業を止められる。金銭を要求されることもあります。
一方、個人が本当に心配すべきなのは、クレジットカードやネットのアカウントの乗っ取りです。知らないうちにカードを使われる。通販サイトやネット証券に勝手にログインされる。
同じ「情報漏えい」という言葉でくくられていても、心配の中身も、打つ手も、まったく違うのです。
同じ「漏えい」でも、中身が違う
次に分けたいのは、「何が漏れたのか」です。
今月の事件でも、ある会社ではパスワードまで流出した可能性があり、別の会社ではパスワードは含まれていないとされました。どちらも同じ「個人情報の流出」というニュースですが、私たちが取るべき行動は同じではありません。
私たちは、住所やメールアドレスを、社会のあちこちに渡しながら暮らしています。どこで、どの情報が漏れたのか。すべてを把握することは、もはや簡単ではありません。
だからといって、気にしなくていいわけではありません。住所やメールアドレスは、それだけでお金を引き出せる情報ではなくても、パスワードという「鍵」と結び付いたとき、一気に危険な情報に変わります。
情報の怖さは、その情報だけで決まるのではありません。ほかの情報とつながったとき、何ができてしまうのか。流れの中で何と何が出会うのかを見ることが、分類の本当の意味だと思います。
個人の備えは「防ぐ・気づく・戻す」
では、個人は何をすればいいのか。私は「防ぐ・気づく・戻す」の三つで考えるのが、一番分かりやすいと思っています。
一つめは、防ぐこと。一般的には、パスワードを使い回さない、大切なサービスは二段階認証やパスキーにしておく、といったことが勧められています。ただ、すべてのサービスでそれを完璧に守り続けるのは、現実にはなかなか難しいものです。だからこそ、次の二つが大切になります。
二つめは、気づくこと。カードの利用通知を受け取る設定にしておく。明細にも、月に一度は目を通しておく。不正に早く気づくための仕組みを、自分の側に用意しておくのです。
三つめは、戻すこと。身に覚えのない請求を見つけたら、まずはすぐにカード会社へ連絡し、カードを止めてもらう。多くのカード会社には不正利用の補償がありますが、条件は会社ごとに違うので、お手持ちのカードの規約を一度確かめておくと安心です。
正直に言えば、個人にできることは限られています。私たちは、自分の情報の多くを、自分では手の届かない場所に預けて暮らしているからです。
つながっている世界で、すべてを閉じることはもうできません。だからこそ、一番の安心は「絶対に盗まれないこと」ではなく、「盗まれても、早く気づき、止めて、元に戻せること」なのだと思います。
後編では、会社として何ができるかを
では、私たちの情報を預かる側の会社は、何をすればいいのか。システムの技術はプロに任せるとしても、経営者にしか決められないことがあります。何の情報を集め、何と結び付け、誰に渡し、どこまで持ち続けるのか。
後編では、情報を「守る」のではなく「編集する」という視点から、これからの会社の備えを考えてみたいと思います。
■ 参考資料
自分の個人情報等が漏えいした際の「対処」と「日頃の対策」(IPA)
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2026/mgdayori20261026.html
自分の個人情報等が漏えいした際の「対処」と「日頃の対策」(IPA)
---


