後継者不足の「次の一手」として、M&Aが選ばれている理由
「会社を売るなんて、後悔しないのだろうか」
M&Aを検討している経営者の方から、こういった本音をよく聞きます。
長年育ててきた会社を手放すことへの不安、後ろめたさ、「自分は逃げるのではないか」という感覚。
そういった複雑な気持ちを抱えながら決断される方が多いのが現実です。
ただ、実際にM&Aを経験した経営者の方々と話すと、多くの方が「あの決断はよかった」と振り返られます。
その理由は、大きく4つに整理できます。
1. 従業員の雇用が守られた
M&Aを選んだ経営者の方が最初に口にするのが、「社員が続けて働けた」という安堵です。
後継者がいないまま廃業を選んだ場合、社員は職を失い、取引先との関係も途絶えます。
一方、M&Aによって会社が引き継がれた場合、雇用は原則として継続されます。
中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン」(2020年策定、2022年改訂)においても、
売り手経営者にとっての重要な関心事として「従業員の処遇」が明記されており、買い手側もこれを尊重することが求められています。
「社員に申し訳ない」という気持ちを持っていた経営者にとって、雇用継続という結果は、M&Aを選んだことへの大きな肯定感につながります。
2. 個人保証から解放された
中小企業の経営者の多くは、会社の借入に対して「個人保証」を差し入れています。
これは、会社が返済できなくなった場合に、経営者個人が肩代わりする義務を負うものです。
この個人保証は、事業の引継ぎにあたって大きな障壁になることがあります。
しかしM&Aを通じて会社を引き継いだ場合、買い手側が既存の借入を引き受けるかたちになることが多く、経営者個人の保証が解除されるケースがあります。
「経営者保証に関するガイドライン」(全国銀行協会・日本商工会議所、2013年策定)でも、事業承継時における個人保証の適切な扱いが示されており、M&Aはこの問題を解決する有力な手段の一つです。
長年背負い続けた保証から解放されることで、「肩の荷が下りた」と話す経営者の方は少なくありません。
3. 会社が、自分の手を離れて成長した
経営者の多くは、会社を売った後、買い手企業の経営資源(資金・人材・販路)によって、自分の時代よりも会社が成長していくのを見ることになります。
「自分がいなくなったほうが、会社は大きくなれた」——そう語る元経営者の方に会うことがあります。
これは自己否定ではなく、「よいバトンを渡せた」という達成感の表れです。
事業規模の拡大、新拠点の開設、人材の採用強化。
一人のオーナーが抱えていた限界を、M&Aが取り除いた結果です。
会社の持続と成長を願っていたからこそ、その姿を見られることが「よかった」という言葉につながります。
4. 次の人生を、自分のために使えるようになった
経営者は長い間、会社のために時間とエネルギーを注いできました。
M&Aによって経営の責任から離れたとき、初めて「自分の時間」を手に入れる方が多くいます。
旅行、趣味、家族との時間。あるいは新たな事業への挑戦。
「あのとき決断していなければ、ずっと引き延ばしていた」と話す経営者の言葉には、解放感と充実感が滲みます。
会社を売ることは「終わり」ではありません。
経営者としての第二の人生の「始まり」として捉えている方が、確実に存在します。
まとめ
M&Aを選んだ経営者が「よかった」と言う理由は、感情的なものではなく、具体的な結果に裏づけられています。
従業員の雇用が守られた、保証から解放された、会社が成長した、自分の人生を取り戻した——それぞれが、決断の重さに見合った「答え」です。
「自分がその立場になったら、どうだろう」と少しでも考えた方は、まずは現状を知るところから始めてみてください。
決断は、情報を持ってからで遅くありません。


