のびのびと踊る〜尾上菊右佐〜
何流がいいですか?
先日見学とお試しの稽古をした方からご質問がありました。
「何流がいいですか?」
その方は役者さんでしたので、古典を教えている流派がいいと思います。
もちろん尾上流と、あといくつかの古典の流派を答えました。
答えた後に他の流派のことも推薦してしまったと、気がついた次第です。
本気で悩んでください
私は尾上流にいるので、私が尾上流を良いとお伝えしても、ただの手前味噌になってしまうでしょうから、他の流派の師匠にも同じ質問をしてみてくださいと付け加えておきました。
入門する際には何もわからず、家から近いからとかご縁がありとか、知り合いがなど偶然と思えるようなことが多いですが、本気で悩んでから入門してほしいと思います。
流派
日本舞踊には色々な流派があります。
歴史ある流派や自分が家元と主張する新しい流派が混在しています。
その中から信頼できる流派や師匠を選ぶのは、なかなか難しい問題だと感じます。
一度入門して名取になると、嫌だからやめたという訳にはいきません。
流派を替えるということは、一からのやり直しになるからです。
流派の歴史を知りましょう
日本舞踊を始めたい!と思った時には、まずは入門する流派の歴史を知りましょう。
流派は様々です。
尾上流は、歌舞伎の尾上菊五郎氏が宗家です。
自分が入門したいと思う流派が、どこから生まれた流派かを調べてみてください。
何を習いたいか?
日本舞踊を習って、何を学びたいですか?
古典を教えているか?それとも新舞踊か?これは重要です。
しっかりと日本舞踊を学びたいならば、古典を教えている師匠をおすすめします。
2〜3分の歌謡曲に合せて踊ってみたいならば、新舞踊の方が合っているかもしれません。
師匠
次に師匠に会ってみることも重要です。
尾上流では師範の数があまり多くないですが、流派によっては沢山の師範を認めています。
実際に会い、踊りの教え方や踊る姿を見てみることをおすすめします。
その他に、人柄や着物のセンス、着物の着付けなどもしっかりとしているかどうかも大切です。
一生涯のおつきあい
日本舞踊は、どこかのタイミングで終わりになることはなく、縁が一生涯続きます。
どの師匠も山の頂点を目指して、いくつになっても稽古をしているからです。
母が着付教室をしていましたが、自分で着られるようになったら卒業と言っていました。
日本舞踊に卒業はありません。もちろん弟子が通ってくれたらということが大前提ですが、
ずっとのおつきあいです。
発表会
ピアノやバレエの発表会に出かける機会も多いですが、先生が最後に発表するとは限らないということに驚かされます。
日本舞踊では、年配になっても必ず最後に師匠は踊りを披露します。
それだけ何年も体に合わせて踊り続けられる踊りということにもなりますが、
やはり厳しい世界と感じます。
家元とのつながり
おそらく今はネットで探すことが多いと思いますが、もうひとつ家元とのつながりがあるかどうかも確認してほしいと思います。師匠もひとりの人間ですので、いつ何があり稽古ができなくなるかもしれません。そのような時に、日本舞踊はすぐに違う流派に変更して続行というわけにはいきません。
本当に困った時に家元とのつながりのある師匠を選ぶことも、大切なことと感じます。
家元のHPに通いたいと思う師匠の名前や紹介があるかどうかも大切です。
見学とお試し
いざ習ってみたいと思える稽古所が決まったら、連絡して見学とお試しをお願いしてみてください。
見学では、ひとりではなく最低でも二人くらいの稽古を見せてもらうとよいと思います。
お試しも絶対お願いすることをおすすめします。
師匠
それぞれに合う師匠がみつかることを願っています。
師匠と弟子は響き合うものですから、一方的に教えてあげる方と習う方という関係だけではありません。
お互いに高め合っていくものと感じます。
稽古の終わりに、弟子が「ありがとうございます」と礼を言いますが、教えることで私も成長していることを感じますので私は「ありがとうございます」と返します。
日本舞踊の魅力
最後に日本舞踊の魅力について、お伝えしたいです。
耳で三味線や唄を聞きながら、鼻で空気いっぱいに吸い込んで長い息を吐き出して、丹田を引き締めるようにすり足で歩き、背中をすっと伸ばして、歌詞の意味や景色を感じながら踊ります。
有酸素運動ですので体の芯からじっとりと汗をかきます。
頭もすっきりと、体も心もリフレッシュします。
おまけに着物が自分で着られるようにもなりますし、着こなすことができるようになります。
始めてみましょう
是非、やってみたい!と思ったら、稽古所を探してみてください。
きっと一年後、十年後に思い切って戸をたたいて良かったと思える日が来ると思います。