会社員のまま起業したいなら「脳OS」を再インストールせよ | 起業18フォーラム代表・新井一氏が明かす成功者と挫折者を分ける決定的な違い
AIは白紙を減らす道具として使う
――新井さん、起業準備のために市場や競合を調べたいのですが、ChatGPTのような生成AIはどこまで使っていいのでしょうか?
新井:まず前提として、AIは「代わりに起業してくれるもの」ではありません。強いのは、情報収集や資料作成のたたき台を短時間で出すところです。市場の動き、競合の打ち出し方、価格の考え方など、白紙で悩む時間を減らすにはかなり使えますよ。帝国データバンクの2026年3月調査でも、企業の生成AI活用率は34.5%まで伸びています。もう特別な人だけの道具ではないですね。
――最初から完璧な答えを求めるのではなく、下調べの入り口にする感じですか?
新井:そうです。AIで集めるのは「結論」ではなく「確認すべき材料」です。たとえば「このサービスに近い競合を挙げて」と聞くと、自分では思いつかなかった言葉が返ってきます。そこから社名や制度名を自分で検索し直す。ここまでをセットにすると、ひとりでタブを増やし続けるよりずっと早いですよ。
情報収集は短い質問から始めればいい
――プロンプトを上手に書けないと使えないのかな、と不安に感じる人もいそうです。
新井:凝った指示文はいりません。誰かに相談するつもりで、「〇〇業界の最近の動向を初心者にも分かるように教えてください」「このサービスに似た競合を整理してください」と短く聞けば十分です。最初の返答が粗ければ、「会社員が週末に試す前提で」「費用が少ない順に」と聞き返せばいい。
――検索と会話の中間のように使うわけですね。
新井:はい。総務省の令和7年版情報通信白書でも、個人の生成AI利用率は2023年度の9.1%から2024年度には26.7%まで増えています。身近な調べ物の手段になりつつあります。ただ、AIに慣れること自体を目的にしないでください。起業準備で大切なのは、浮いた時間を人に会う時間や小さく試す時間へ回すことです。
資料作成はたたき台まで任せる
――情報収集以外では、どんな使い方が現実的ですか?
新井:事業計画の項目立て、価格の試算、告知文やプロフィール文の下書きですね。たとえば、自分のアイデアを箇条書きで入れて「抜けている視点を3つ挙げて」と聞く。原価や希望利益を入れて「3パターンの価格帯を比較して」と頼む。ここまでなら、とても相性がいいです。
――出てきた文章をそのまま使ってもいいのでしょうか?
新井:そのままは危ないですね。AIの文章は整って見えるぶん、自分の言葉ではない薄さが出ます。告知文なら、最後は自分が実際にお客さんへ言える言葉に戻す。価格なら、払ってくれる相手の顔を思い浮かべて調整する。たたき台は任せるけれど、判断は自分が持つ。ここを分けるのが大事です。
数字と制度は必ず一次情報で裏取りする
――便利な一方で、注意点もありますよね。
新井:一番大きいのは正確性です。AIは、もっともらしい顔で間違った数字や制度を出すことがあります。帝国データバンクの調査でも、生成AIを使ううえでの懸念として「情報の正確性」を挙げた企業が多い。起業準備では、補助金、税金、許認可、契約の話をそのまま使うと危険です。
――では、どう使えば安全でしょうか?
新井:数字、法律、制度、固有名詞は必ず官公庁や公式サイトで確認する。これを習慣にしてください。もうひとつは、個人情報や取引先が分かる情報を入れないことです。氏名、勤務先、顧客名、社外秘の資料は伏せる。相談の形だけ借りて、固有名詞はぼかせばいいですよ。
AIで浮いた時間を人に会う時間へ回す
――起業準備が進む人は、AIをどう使っている印象ですか?
新井:調べる時間を短くして、現場に出ていますね。以前、競合調査に毎晩90分かけていた会社員の方がいました。AIで骨組みを出してから自分で裏取りする形に変えたら、20分ほどで下調べが終わるようになった。そこで終わりではなく、浮いた時間で知り合いにヒアリングするようになったのが良かったのです。
――AIを使うほど、人と話す時間が大事になるのですね。
新井:そうです。拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、起業準備を「知・人・金」で考えるとお伝えしています。AIが助けるのは主に「知」です。「人」と「金」は自分で動くしかありません。ChatGPTを使う目的は、準備を机の上で長引かせることではなく、早く小さな行動に移ることですよ。
――最後に、今日から試すなら何をすればいいでしょうか?
新井:今気になっている疑問を1つだけAIに聞いてみてください。そして、返ってきた答えから公式情報で確認する項目を3つ選ぶ。確認が終わったら、ひとりに話を聞く。これだけで十分です。AIに全部を任せるのではなく、あなたが動くための前処理として使う。それが一番安全で、起業準備にも合っています。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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