サービスを絞ると仕事が来ない? 減らし方にもコツがある

新井一

新井一

テーマ:マーケティング

できることを並べても選ばれない

――新井さん、今日はサービスの絞り込みです。できることをたくさん載せているのに、問い合わせが減ることはあるのでしょうか?

新井:あります。むしろ起業準備中の方ほど、親切心で項目を増やしてしまいます。「これもできます、あれもできます」と書くほど安心してもらえると思うのですが、見る側からすると判断が増えるだけです。対応項目を増やすほど、何屋か分からない人に近づくことがあります。

――できることを出しているのに、逆効果になるのですね。

新井:はい。頼む側は専門家ではありません。10個並んだ項目から自分に合うものを選んでくださいと言われると、それだけで疲れます。最初の画面で「あ、この人はこの件の人だ」と分かるほうが、相談は入りやすいですよ。

減らすのは仕事ではなく入口の言葉

――でも、絞ると仕事が来なくなるのではと不安になります。

新井:その不安は自然です。ただ、絞るというのは受けられる仕事を全部断ることではありません。表に出す入口を一つに決めることです。裏では対応できることが複数あってもいい。けれど、ホームページやSNSの最初の一言は一つに寄せたほうがいいですね。

――入口を一つにする、ですか。

新井:たとえば「資料作成、相談、事務代行、SNS運用、機材貸し出し」と並べると、読む人は何を頼めばいいか分かりません。けれど「地域イベントの小型機材を貸す人」と見えたら、一瞬で記憶に残ります。絞り込みは、自分の能力を小さくする作業ではなく、相手が覚えて帰る言葉を作る作業です。

三秒だけ見せて何屋か聞く

――自分では、絞れているかどうか分かりにくそうです。

新井:自分では分かりません。作った本人は、なぜその項目がつながっているかを全部知っているからです。だから他人の口を使います。あなたの仕事を知らない人に画面を三秒だけ見せて、「これ、何をしている人?」と聞いてください。

――読ませないのですね。

新井:読ませません。スクロールもさせない。三秒で閉じます。答えが一語で返ってきたら伝わっています。「ええと、いろいろやっている人?」と言われたら、まだ並べすぎです。家族や同僚は事情を補って読んでしまうので、できれば仕事の中身を知らない人がいいですね。

――かなり厳しい確認ですね。

新井:でも現実の見られ方に近いですよ。人は案内ページを熟読してから問い合わせるわけではありません。最初に分かった気がするかどうかで、読み進めるかを決めます。

頼まれた回数が多いものを前に出す

――何を前に出すかは、どう決めればいいでしょう?

新井:実際に頼まれた回数が多いものを先に見ます。自分がやりたい順ではなく、相手が言葉にしやすかった順です。知人が誰かに紹介してくれたとき、あなたのことを何と説明したかを聞くのもいいですね。

――紹介された言葉がヒントになるのですね。

新井:そうです。起業18でも、相談の仕事と機材の貸し出しを並べていた方がいました。問い合わせは少なかったのですが、たまたま機材を借りた人が別の人を連れてきた。紹介文を聞くと「機材を貸してくれる人がいる」だけでした。相談の話は出てこない。そこで案内を機材貸し出しに寄せたら、予約が重なって断る日が出てきました。

――断りが出るのは、絞りすぎではないのですか?

新井:それは伝わった合図です。問題が「何をしているか分からない」から「受けきれない」に変わった。次は台数を増やすのか、協力者を探すのかを決めればいい。課題が一段進んだわけです。

一語に寄せても裏メニューは消えない

――表から外したサービスは、もう受けないほうがいいですか?

新井:そこは分けていいです。表に出す一語を決めることと、頼まれたときに受けるかどうかは別です。表には一番伝わりやすい入口を置く。知っている人から別件で頼まれたら、条件を見て受ける。これで十分ですよ。

――表の一語を決めるだけなら、少し始めやすそうです。

新井:その通りです。日本一を目指す必要はありません。住んでいる市の中で「この件ならあの人」と思い浮かぶ範囲まで狭めれば、最初の入口としては足ります。会社員のまま始めるなら、なおさら全方位へ広げないほうが動きやすいです。

今日減らすなら一番説明が長い項目

――最後に、今日すぐできる整理を教えてください。

新井:案内に並べた項目を見て、一番説明が長くなるものを外してみてください。説明しないと伝わらない項目は、入口には向きません。次に、実際に頼まれた回数が一番多いものを一つ選ぶ。その言葉で三秒テストをします。

――できることを増やす前に、覚えてもらう一語を作る。

新井:はい。絞り込みは、売れる可能性を減らす作業ではありません。読む人の迷いを減らす作業です。表に出す一語が決まると、紹介もSNSの投稿も、問い合わせへの返事も短くなります。そこまで来れば、起業の入口はかなり軽くなりますよ。

――何屋か一発で伝わるか。今日の見直しに使えそうです。ありがとうございました。

新井:こちらこそ、ありがとうございました。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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新井一
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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

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