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「採用コンサルタント」では、誰にも刺さらなかった
――新井さん、今日は「肩書きの決め方」についてお聞きしたいと思います。名刺に「〇〇コンサルタント」と入れればいいのかな、と思っている方も多いようですが……。
新井:その悩みは多いですね。先日もBさん(仮名)という40代の方から話を聞いていました。元人事部長で、採用領域の経験を活かして独立した方なのですが、「採用コンサルタント」という肩書きで名刺を作ったものの、6カ月まったく反応が取れなかったと言うのですよ。
――それは辛いですね……。何が問題だったのでしょうか?
新井:肩書きというのは、「自分が何者か」を表す言葉ではなく「相手の問題を解決できる人」だとわかる言葉でなければ機能しません。「採用コンサルタント」と書いても、採用に悩む経営者には「で、私の問題を解決してくれるの?」がわからない。Bさんが「中小企業の採用定着率を上げる専門家」に変えた途端に問い合わせが入り始めた、というのがその後の話です。
――言葉1つで、そんなに変わるものなんですね。
新井:変わりますよ。現場で見ていると、これは特別な事例ではなくて、肩書きを変えただけで問い合わせが動いたという話は本当によく聞きます。逆に言えば、正しく設計しないまま名刺を配り続けると、6カ月を無駄にする可能性があるということです。
「第ゼロ印象」を制する人が、最初の仕事を取る
――「第ゼロ印象」という考え方があるとお聞きしました。どういうことでしょうか?
新井:著書『起業神100則』で紹介している考え方ですが、相手が初めてあなたの名刺や肩書きを見た瞬間に「この人は自分の〇〇を解決してくれそうだ」と感じさせることが、最初の仕事につながる条件だという話です。会話や自己紹介より前に、名刺を渡した瞬間が勝負。それを「第ゼロ印象」と呼んでいます。
――第一印象よりもっと早い段階、ということですね。
新井:そうです。名刺交換の場を想像してみてください。渡した瞬間に相手が「あ、これは自分への言葉だ」と感じる肩書きと、「で、何をする人ですか?」と聞かれてしまう肩書きでは、その後の会話がまったく違ってきますよ。
――肩書きは自分のための言葉ではなく、相手のための言葉なんですね。
新井:まさにそれです。資格名や前職の役職名をそのまま肩書きにしているケースが多いですが、それは「自分が何者か」を説明しているだけで、相手の問題とつながっていないことが多い。ここが逆になっている方が本当に多いのです。
肩書きを決める3つのステップ
――では、具体的にどうやって肩書きを作ればいいのでしょうか?
新井:3つのステップで考えてほしいのですが、まず1つ目はターゲットの「悩みの言葉」をそのまま集めること。SNS、フォーラム、検索キーワードなどで、ターゲットがどんな言葉でその悩みを表現しているかを調べます。「採用に困っている経営者」ではなく、「何人採っても辞めてしまう」「面接に来ない」という生の言葉を探すイメージです。
――自分の言葉ではなく、ターゲットが実際に使っている言葉から始めるわけですね。
新井:2つ目は、自分のスキルと相手の悩みが交差する点を一文で表現すること。「採用コンサルタント」ではなく「中小製造業の採用定着率を上げる専門家」のように、誰の・何の・どんな問題を解決するかが一文で伝わる言葉にします。そして3つ目が、10人のターゲット候補に見せて「これは自分への言葉だ」と感じるかテストすること。机の上だけで考えていても正解はわかりません。
――テストして育てるという発想が面白いですね。
新井:Bさんはこの方法で、採用・定着に悩む小規模製造業の経営者に絞ったところ、月収18万円の顧問契約が安定するようになりました。肩書きを変えただけで仕事が動き始めた、という実例ですよ。
最初の肩書きは20点でいい
――最初から完璧な肩書きを作ろうとして、なかなか動けない方もいそうです。
新井:その構えが、一番の障壁になっています。最初の肩書きは20点でいいのですよ。完璧な言葉を作ることより、「この方向性でいける」という仮説を立てて、反応を見ながら更新していく姿勢の方が、結果的に早く正解にたどり着けます。
――名刺に印刷したから変えられない、ではなくて、どんどん更新していっていいんですね。
新井:そういうことです。名刺に印刷したから変えられない、というわけでもないですし(笑) 最初の肩書きを変えることを恐れないでほしいですね。ターゲットが変わったら言葉も変えればいい。それはビジネスが成長している証拠ですから。
――「肩書きはテストして育てるもの」、今日はとても勉強になりました。ありがとうございました!
新井:こちらこそ、ありがとうございました。肩書きで悩んでいる方の最初の一歩になれば幸いです。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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